「行く春」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「行く春」について
【表記】行く春
【読み方】ゆくはる
【ローマ字読み】yukuharu
子季語・関連季語・傍題・類語など
・春の名残(はるのなごり:harunonagori)
・春のかたみ(はるのかたみ:harunokatami)
・春の行方(はるのゆくえ:harunoyukue)
・春の別れ(はるのわかれ:harunowakare)
・春の限り(はるのかぎり:harunokagiri)
・春の果て(はるのはて:harunohate)
・春の湊(はるのみなと:harunominato)
・春の泊(はるのとまり:harunotomari)
・春ぞ隔たる(はるぞへだたる:haruzohedataru)
・春行く(はるゆく:haruyuku)
・春尽く(はるつく:harutsuku)
・春尽(しゅんじん:shunjin)
・徂春(そしゅん:soshun)
・春を送る(はるをおくる:haruokuru)
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季節による分類
・「ゆ」で始まる春の季語
・「春の時候」を表す季語
・「晩春」に分類される季語
月ごとの分類
行く春を含む俳句例
野烏の腹に蹴て行春の水/敬雨
ゆく春や逡巡として遅桜/蕪村
行春や鳥啼き魚の目は泪/芭蕉
行春や撰者を恨む哥の主/蕪村
行春や又此頃の年わすれ/西羊
行く春や懐深く能の笛/越智協子
行春を鏡にうらむ一人かな/成美
行春や白き花見ゆ垣のひま/蕪村
行春や版木にのこる手毬唄/犀星
鼠なく雨夜を春の別れかな/成美
行春や芦間の水の油色/富田木歩
行春や畳んで古き恋衣/高浜虚子
ゆく春の月や近江の湖の上/麦南
雨そほつ春の名残や茶一椀/几菫
行く春や鳥啼き魚の目は涙/芭蕉
袂草艾と嚇す逝く春や/内田百間
行春や松苗作る妹が宿/松瀬青々
行春や我を見たをす古着買/一茶
行春や妻が額の即效紙/寺田寅彦
行春の裾をからげよ藤の花/布立
俳句例:21句目~
行春の町やかさ売すだれ売/一茶
行春の机辺事なく静心/島田青峰
行春の日向埃に商へり/臼田亞浪
行春の庭に熊手と草帚/星野立子
鍋尻を這ひて春行く炎かな/辻桃子
行く春や逡巡として遅ざくら/蕪村
行く春や知らば断べき琴の糸/凡兆
天河といふ能の地に春逝かす/春樹
天窓に春逝く螺鈿盆の貝/古舘曹人
行春や視力躓く燈下の書/石塚友二
行春や雀の食へる馬の糞/村上鬼城
行春や鐘建立の事すみて/島田青峰
行春や鏡のうらの梅と亀/野村喜舟
恐龍の骨を崩して春逝かす/佐藤守
松の月それさへ春の名残かな/馬南
行春や釉薬を練る太き櫂/西本一都
春の別れ酒に断るゝ腸か/尾崎紅葉
山吹の黄の一枝に春送る/小澤碧童
行春や狸もすなる夜の宴/高井几董
行春や生簀に憑ける鷺鴎/福田蓼汀
俳句例:41句目~
行春や親になりたる盲犬/村上鬼城
行く春や娘首の髪の艶/水原秋桜子
行春や浪華に遊ぶ東の妓/高濱年尾
ゆく春や蓬が中の人の骨/榎本星布
行く春の人形振の足はこび/渡辺昭
行春や朱にそむ青の机掛/飯田蛇笏
ゆく春のとどまる処遅ざくら/召波
行春や旅へ出て居る友の数/炭太祇
ゆく春の仏を迎ふ褥かな/西島麦南
行春や花鳥の襖留守の家/籾山柑子
風音や春逝くときは忍び足/桂信子
ゆく春の大釈寺山枕上ミ/石原舟月
行春や庭に筧を渡せるも/尾崎迷堂
行春や山路の空に塔の簷/橋本鶏二
行春や海を見て居る鴉の子/諸九尼
行春や大波立つる山の池/前田普羅
行春や母が遺愛の筑紫琴/尾崎放哉
ゆく春の沖中川や鱠盛り/加藤郁乎
行春や古き李に花過ぎて/尾崎迷堂
春行くや額にけぶる青黛/筑紫磐井
俳句例:61句目~
行春や傾き立てる園の門/森田愛子
行春や人に閻魔にうすほこり/槐太
行春や一畝残す種取り菜/皆川白陀
行春やむらさきさむる筑羽山/蕪村
行春やほう~として蓬原/子規句集
行春の鳥の啄む水泡かな/石井露月
行く春や男手に抜く躾糸/小早川恒
据風呂に行春の月緑なり/会津八一
行春や竹の伏水となりにけり/鳥西
行春の芥の中に舵休む/五十嵐播水
行く春や撰者を恨む歌のぬし/蕪村
行春を近江の人と惜しみける/芭蕉
行春や風渡り居る苔の石/中島月笠
行春の旅にゐたれば法然忌/森澄雄
行春の慈悲茅屋や酔ひ戻る/斎藤玄
芥流るゝ春尽日の博多川/清原枴童
行春の大名竹や花咲いて/萩原麦草
行春の出費迅速子は育つ/清水基吉
行春の不安再び勤めむと/皆川白陀
行く春や法衣の裾のうす汚れ/篠原
俳句例:81句目~
行春の一つの旅を忘れ得ず/星野椿
行春のわが家の色の卵焼/小川軽舟
行春に飽くや干鱈のむしり物/李由
疾風行春塵溜り来る睫毛/石塚友二
行く春や美しき姉太りゆく/阿川道代
行春や百段の闇のぼりけり/上島顕司
行く春やわが骨片の二三百/和田悟朗
郵便車停り春逝く瀬音絶ゆ/宮武寒々
行春や珠をふくみて月纖し/橋本鶏二
金魚売出でて春行く都かな/室生犀星
露西亜にも春行く頃や竈持つ/富樫均
家裏が見ゆ春尽の丘に上る/松村蒼石
ゆく春や藪を貫く詣で道/大場白水郎
行春や東西にある大原陵/五十嵐播水
行く春や旅人憩ふ栃のかげ/前田普羅
カナリヤの脚の薄紅春逝くか/桂信子
ゆく春や野沢の宿の花林檎/田中冬二
ゆく春のひるの灯赤き佛哉/会津八一
市中の穂麦も赤み行春ぞ/芥川龍之介
行く春の千体仏の燭ゆれて/細見綾子