俳句例:201句目~
浴衣着て女人高野の塔と狎れぬ/後藤夜半
浴衣着て永井荷風である筈なし/松山足羽
浴衣着て浴衣に似合ふ顔つくる/佐藤友子
浴衣着て海の青さに乳房しまる/墳崎行雄
浴衣着にかへて見てゐる鱚の海/飯田龍太
浴衣著し子よ蓄音機何かけん/大谷碧雲居
浴衣著て女人高野の塔と狎れぬ/後藤夜半
浴衣著て年の隔りなくなりし/剣持不知火
浴衣著テ田舎ノ夜店見ニ行キヌ/正岡子規
海昏れて浴衣の風となりにけり/中島勝彦
湯上りの浴衣を着つゝ夫に答ふ/星野立子
熟睡せる祭浴衣の子を背なに/太田ゆり子
獄を出て浴衣着て腕さすりたる/正岡子規
砂風呂の湯女の浴衣の袖みじか/刈谷千代
祭浴衣の袂に入るるもののなく/原田種茅
老いて病む人に着せたり新浴衣/相馬遷子
若き日の夢たたみたる古浴衣/細井喜美江
蓼酢つくる妹が浴衣着そめたり/渡邊水巴
藍浴衣ぱりつと乾く会者定離/木谷はるか
藍浴衣ひとにとどめの命あり/神尾久美子
俳句例:221句目~
去年縫ひて今年着おろす鉾ゆかた/及川貞
白浴衣老女を蝶のごとくしぬ/中尾寿美子
張りとほす女の意地や藍ゆかた/杉田久女
蛾の入りし袖におどろく宿浴衣/前田普羅
藍ゆかた明治の背筋伸ばしけり/堀/康代
あだめきて夕闇のつく浴衣かな/石原舟月
ある宵は藍浴衣着て夫に添ふ/柴田白葉女
親しさはすぐに羽ばたく盆浴衣/鎌倉佐弓
親よりの藍落ちつきし江戸浴衣/井田半三
いつ死ぬか解らぬいのち古浴衣/尾村馬人
おのづから師弟別ある浴衣かな/吉井莫生
おろおろと男の浴衣たたみをり/岡田史乃
はで過ると人に云はるゝ浴衣哉/寺田寅彦
よその子が気になる祭浴衣かな/高澤良一
わが浴衣われの如くに乾きをり/高浜虚子
われに近づくわれ浴衣して怒肩なる/篠原
亡き姑の浴衣着て夫に畏れらる/渡部マサ
今日ことに髪に艶あれ浴衣着る/朝倉和江
南風やつんつるてんの貸浴衣/鈴木真砂女
鍼按の眼のみひらけぬ浴衣かな/飯田蛇笏
俳句例:241句目~
鏡川まつりというて浴衣着て/今井千鶴子
闇をくる浴衣の女手をつなぎ/波多野爽波
はらからの浴衣万燈さびしかり/石原舟月
四五枚の浴衣を干して旅籠らし/清崎敏郎
土産屋をひやかし霧冷え宿浴衣/高澤良一
雨の日は色濃き浴衣子に着せる/福島小蕾
堪へざりし悔い深沈と藍浴衣/稲垣きくの
面白き世と思ひ住む浴衣かな/高橋淡路女
寛ぎの夜々の浴衣をかゆるかな/野村喜舟
少し派手いやこのくらゐ初浴衣/草間時彦
饐えし飯の糊の匂へる浴衣かな/青木月斗
川開き見にゆく浴衣縫ひにけり/吉屋信子
鮎を焼くをんな秋草の浴衣着て/渡邊水巴
干浴衣くづをれつつや取りこまれ/上野泰
待針といふは佳き名の浴衣かな/鈴木栄子
慾なしといふにもあらず初浴衣/飯田蛇笏
藍浴衣着るとき肌にうつりけり/日野草城
浴衣崩れつ主客ともなし岐阜提灯/中島月笠
浴衣著て医をはなれたるわが時間/小坂蛍泉
わが浴衣書斎出入りに見えて縫ふ/亀井糸游
俳句例:261句目~
わが浴衣子が着れば子の若さなる/吉野義子
世話人の浴衣の肩をそびやかし/深見けん二
マネキンの背丈の伸びる浴衣かな/小川侑子
浴衣裁つこゝろ愉しき薄暑かな/高橋淡路女
臥しがちの夫の浴衣は糊うすく/大和田享子
嬢っこ等の踊り浴衣を見てたんせ/高澤良一
草鞋解いて浴衣着て飯のうまさ哉/正岡子規
もろもろの浴衣に江戸を祭りけり/佐藤春夫
浴衣きせ夫を他人のごとく見る/副島いみ子
まだ生きるつもり白地の浴衣縫ふ/鈴木勝女
浴衣着てふところ浅き身幅かな/黒田櫻の園
藍浴衣つひぞまとはぬ加齢かな/小枝秀穂女
惜しみなく妻となりたる浴衣かな/長谷川櫂
ひととせはかりそめならず藍浴衣/西村和子
独り身の派手な浴衣もまだ似合ひ/平田節子
浴衣の子家鴨に会ひにゆきにけり/石田郷子
浴衣の子足に馴じめぬ下駄はいて/渕沢信子
なきがらの冷えよりも冷え白浴衣/小原啄葉
女将けふ店へ出ぬ日の浴衣着て/鈴木真砂女
蝉の朝のあたらしき浴衣著せかふる/瀧春一
俳句例:281句目~
ごはごはの浴衣や手足よろこびぬ/渡辺純枝
病める児にまつり浴衣の届きたる/竹谷緑花
術後の日の為の浴衣を着慣らしぬ/高澤良一
白地浴衣海には白帆照りもして/柴田白葉女
夜の微雨に快よく濡れ浴衣かな/楠目橙黄子
くすくす笑いして過ぐ祭浴衣の娘/高澤良一
眉目よしといふにあらねど紺浴衣/高濱虚子
親に似て肩幅ひろき浴衣かな/久保田万太郎
夕かなかな借りし浴衣を重ねけり/林原耒井
足袋はいて宿の浴衣のなじまざる/高濱年尾
浴衣着て水得し花のごとくなり/中田葉月女
浴衣の子がのぞく幾日も道掘られ/桜井博道
神輿待ちつつ揃ひ浴衣に気怯れす/原田種茅
浴衣あたらしく夜の川漕ぎくだる/大野林火
浴衣より剥きだしかひな髪直す/上田五千石
祭浴衣老獪にして汗かかず/行方克巳「祭」
浴衣着て烏賊裂きの娘の給仕かな/西本一都
浴衣きて前髪は眼を切りにけり/赤松ケイ子
いつしかに父と呼ばるる浴衣かな/長谷川櫂
稲妻にうちしをれたる浴衣かな/金尾梅の門