俳句例:201句目～
空蝉ほど全き殻を脱ぎたしや/花谷和子
身に覚えなき夢に似て蝉の殻/鎌倉佐弓
青春の過ぎにしこころ蝉の殻/福島清恵
風わづかに石の上なる蝉の殻/尾崎紅葉
女の手に空蝉くだけゆきにけり/西東三鬼
少年老い空蝉と目を合はせけり/山口正心
手に置けば空蝉風にとびにけり/高浜虚子
空蝉に艶といふものありにけり/鈴木貞雄
明けのゆめ空蝉ばかり踏みさうな/澁谷道
机上に風起ちて空蝉吹き転がす/高澤良一
母の忌の空蝉を母と思ひ初めし/中村苑子
神の手の触れ空蝉のふと動く/小泉八重子
空蝉とHOPE机上に昼闌けぬ/高澤良一
空蝉にかき附かれたる寂しさよ/永田耕衣
空蝉のあり処たしかめ凭る机/稲垣きくの
空蝉のかけらも入るらむ長寿薬/高澤良一
空蝉のこはれゆく日に立会ひし/吉田汀史
空蝉のごと縋りゐしもの虚し/稲垣きくの
空蝉のそびらに空の入りけり/大原千鶴子
空蝉のちからの脚に地の月日/宇多喜代子
俳句例:221句目～
空蝉のなかにも水のひろがりて/阿部青鞋
空蝉のなほ苦しみを負ふかたち/鷹羽狩行
空蝉のふんばつて居て壊れけり/前田普羅
空蝉や不幸に重さのありとせば/齋藤愼爾
空蝉の背にひとすぢの糸のくづ/三嶋隆英
空蝉の爪立て思ひぬけてをり/中川須美子
空蝉やある時なにもかもがみえ/木内怜子
空蝉の爪の先までがらんどう/永江哀紅糸
空蝉の露に日の矢のきらめきて/眞鍋呉夫
空蝉を手にせりはるかなる想ひ/塚原夜潮
空蝉を拾ふのみなる気弱の子/駒沢たか子
空蝉の背にひびく風遙かより/坂本山秀朗
空蝉を燃し地の涯を照しけり/津久井理一
空蝉を硝子の仲間に加へけり/岩淵喜代子
空蝉を置きてピアノに土こぼる/鷹羽狩行
空蝉を蒐めたる手や若からず/山田みづえ
空蝉を見る妻の瞳のうるむなり/杉山岳陽
空蝉の完全なるをしばらく飼ふ/桑原三郎
空蝉を頒つ太郎の掌次郎の掌/佐野まもる
空蝉の身の透くばかり恋着す/稲垣きくの
俳句例:241句目～
草のぼりつめ空蝉となりゐたり/藤崎久を
螢/蝶/空蝉この世に遅れ着く/齋藤愼爾
空蝉へ神父の口より祝祷洩る/田川飛旅子
風遊ぶまろぶほかなき空蝉に/渡邊千枝子
かけ出しのころの一句や蝉の殻/鈴木丈司
入院や木椅子にすがる蝉の殻/石田あき子
子規の碑にまだ柔らかき蝉の殻/天野滋子
欲のある人にみせばや蝉の殻/野澤羽紅女
空蝉の人には告げぬ方途かな/沼尻巳津子
端居して角力はせてみる蝉の殻/三好達治
襖しめて空蝉を吹きくらすかな/飯島晴子
蝉の殻掌にとれば光はげしき眼/原コウ子
拾ひたる空蝉指にすがりつく/橋本多佳子
空蝉の両眼濡れて在りしかな/河原枇杷男
うなりなき凧空蝉の破れかな/安藤十歩老
蝉よりも生き長らへて蝉の殻/大木あまり
ずぶ濡れの空蝉一つ見つけけり/高澤良一
てのひらに空蝉のせて山のこゑ/田中里佳
めざましが鳴る空蝉を机に置けば/不死男
乙女らよ空蝉の背の割れざまよ/永島靖子
俳句例:261句目～
蝉殻を溜めて姉弟のちぎりとす/原コウ子
空蝉の空部屋貸してくれないか/滝口明男
空蝉の一太刀浴びし背中かな/野見山朱鳥
空蝉の一もつもなき胸のうち/浅井千代子
今脱ぎし空蝉透きて夜明けなり/和田和子
空蝉の一つが見えてあまた見ゆ/岩田由美
天の川われを逐ひくるは空蝉か/齋藤愼爾
天気かな空蝉で翔ぶ翔びごころ/折笠美秋
空蝉のもはらに青き萩このむ/篠田悌二郎
うつせみのすでに雫のみどりかな/中田剛
うつせみの爪するどしと記しおく/中田剛
拾ひ来しうつせみ卓におきしのみ/安住敦
腑分け図のごとく詳しく空蝉描く/高澤良一
空蝉のひとつひそかに山の日日/稲垣きくの
葉さやぎや空蝉すがる葉も見えて/八木絵馬
空蝉の縋りしかたちして置かる/稲垣きくの
空蝉のなかあはあはと風が吹く/鍵和田釉子
空蝉にして飛ぶこころあるごとし/八染藍子
空蝉にこころふたつよ相寄らず/稲垣きくの
空蝉が見てをり天のさみしさを/徳永山冬子
俳句例:281句目～
父の木とよぶ空蝉があまたの木/折原あきの
空蝉のすずなりの木を恐れけり/糸山由紀子
空蝉のすこしよぢれてをりにけり/京極杞陽
空蝉や日昏れてとほき父母のくに/平田繭子
空蝉の脚のつめたきこのさみしさ/成田千空
空蝉ハ果シテ風ノ呪文トナレリ/富澤赤黄男
父の忌の空蝉なれば掌につつむ/長谷川秋子
爪たててゐる空蝉を剥がしけり/永田耕一郎
空蝉のすぐに火となる秋炉かな/大木あまり
無為にしてひがな空蝉もてあそぶ/川端茅舎
空蝉ハ果シテ風ノ呪文トナレリ/富澤赤黄男
空蝉のしつかと地球つかんでいる/大木石子
一と震へして空蝉となりゆけり/稲畑廣太郎
空蝉やまだやはらかき眼の凹み/渡辺乃梨子
ふるさとにわが空蝉は突伏して/正木ゆう子
ふと触れし指に空蝉すがりけり/上西左兌子
うつせみのあまたつめたき木立かな/中田剛
空蝉に水のやうなる風が吹く/阿部みどり女
空蝉やあの世へ行きてなほ生きむ/藤本保太
治安悪しよ我ががらくたに蝉の殻/石田順久
