「雨月」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「雨月」について
【表記】雨月
【読み方】うげつ
【ローマ字読み】ugetsu
子季語・関連季語・傍題・類語など
・雨名月(あめめいげつ:amemeigetsu)
・雨夜の月(あまよのつき:amayonotsuki)
・雨の月(あめのつき:amenotsuki)
・月の雨(つきのあめ:tsukinoame)
–
季節による分類
・「う」で始まる秋の季語
・「秋の天文」を表す季語
・「仲秋」に分類される季語
月ごとの分類
雨月を含む俳句例
秋の雨月に対して猶悲し/松岡青蘿
雨月なる渚に埋めてゐる鴎/皆吉司
銭湯へ使走らす雨月かな/宮武寒々
髪若し夜学は雨月物語/宇佐美魚目
夢殿を包みて雨月八角に/和田悟朗
大堰の水音高き雨月かな/福井圭児
手花火を栞に雨月物語/相生垣瓜人
寝し雨戸照し雨月の簷雫/西山泊雲
枝豆を喰へば雨月の情あり/高浜虚子
雨月なる三面鏡へ帰りつく/池田澄子
雨月かな河原に枕近すぎし/鳴戸奈菜
かため置く雨月の傘の雨雫/長沼紫紅
玄関に雨月の靴の匂ひして/高澤良一
しばしばや人に雨月の瓜畠/飯田蛇笏
葉が少し置かれ雨月の外流し/岡本眸
薩摩琵琶雨月湿りの撥捌き/高澤良一
はせ川の河童屏風の雨月かな/竜岡晋
早々と書斎に籠る雨月かな/片桐孝明
濤音に芋のころがる雨月かな/齋藤玄
菜種梅雨ことふる雨月物語/西本一都
俳句例:21句目~
濡れ仏濡れて雨月の善光寺/西本一都
篝焚く男立ちゐる雨月かな/高木晴子
二三人雨月の傘や尻からげ/西山泊雲
五六本雨月の傘の用意あり/日野草城
松島の雨月の空の広がりし/岸本尚毅
神無月や雨月の傘に散る紅葉/西山泊雲
立てかけて雨月の傘の皆黒し/大野林火
経論の離亭灯あかき雨月かな/宮武寒々
美しき雨ふりいでし雨月かな/倉田紘文
胸もとに雨月あかりを漂はせ/平畑静塔
舟をり~雨月に舳ふりかへて/飯田蛇笏
落栗や沼の雨月の夜に似たり/小川芋銭
著く落葉透けて雨月の傘の裏/西山泊雲
足もとに杉の闇くる雨月かな/竜口幸子
ぬすびとに夜々の雨月や瓜畠/飯田蛇笏
過ちて紅き酒飲む雨月かな/小泉八重子
鍵提げて雨月の校舎見て廻る/真砂松韻
阿波雨月蛸がいも喰ふ噺かな/進藤一考
隠棲の蝉たえまなき雨月かな/飯田蛇笏
雨月にも魚紋あきらか山の池/飯田蛇笏
俳句例:41句目~
雨月今殊にあかさや雁落つる/西山泊雲
風颯と雨月いよいよ確かなり/高澤良一
一と膝を寄せての話雨月かな/北川英子
作小屋に雨月の酒の届きけり/古住蛇骨
高野槙ふかく雨月の真闇かな/西村公鳳
雨月なり兎跳ねゐる楽茶碗/矢吹嘉な江
団子二串雨月となりし宿坊に/野澤節子
大阪に潮満ちてゐる雨月かな/山本洋子
女傘さして出でたる雨月かな/加藤霞村
妻に言継ぐもなかりし雨月か/杉山岳陽
果物舗雨月の光りさしそひぬ/飯田蛇笏
待つ花や今宵雨月の馬さぐり/上島鬼貫
御僧の絵解きに侍る雨月かな/佐野美智
松島の雨月や会ふも別るるも/佐藤鬼房
侍従長風と去りたる雨月かな/今泉貞鳳
梨食みて雨月は人を偲ぶかな/伊藤京子
海に出て後の雨月ぞ只ならね/高橋睦郎
物音も雨月の裏戸出でずして/田中裕明
あるだけの酒くみ寝ぬる雨月かな/上村占
垣の外へ咲きて雨月の野菊かな/渡辺水巴
俳句例:61句目~
御影堂の内はともれる雨月かな/三星山彦
うそ寒く読み終へぬ雨月物語/高橋淡路女
うなぎ笊ころがしてある雨月かな/安住敦
松杉やわけて雨月のあすならう/佐野良太
をりをりは空の明るき雨月かな/帖地津木
雨月かな亡き娘の話今日はする/高木晴子
ぬかるみて雨月の園の径かな/楠目橙黄子
厠窓ここも雨月の戸樋の鳴り/波多野爽波
雨月とて障子のうちの遊びごと/高濱年尾
碇泊燈雨月の空にかかりたり/五十嵐播水
雨月なり王の名忘れたるように/対馬康子
傘影の出来ては消ゆる雨月かな/西山泊雲
庭篝燃えくすぶりて雨月かな/高橋淡路女
温泉にあれば雨月の蜑の話ごゑ/木村蕪城
雨月情ありこのひとを帰しかね/三好潤子
風蘭に雨月ありけり蚊帳に入る/渡辺水巴
舟をりをり雨月に舳ふりかへて/飯田蛇笏
虫声惻々雨月の黄菊我も嗅がむ/北原白秋
小樽運河ガス燈黄なる雨月かな/細井みち
心中に雁舞うてゐる雨月かな/徳永山冬子
俳句例:81句目~
墨すれば今宵雨月の香ありけり/村林星汀
暗きより潮押しのぼる雨月かな/村沢夏風
いなづまや雨月の夫婦まだ寝ねず/黒柳召波
くさむらに羽根まじりける雨月かな/中田剛
たま~の奈良の雨月もよかりけり/真木芽舟
はやも酔ふ雨月の酒と思ひつつ/後藤比奈夫
まなじりに雨月はやみて秋のかや/飯田蛇笏
わが胸に雨月のほかの愁ひあり/福永みち子
くらがりに炭火たばしる雨月かな/石田波郷
ガレーヂの開かれしまゝ雨月なり/横山白虹
のそと来る雨月の傘を立てかけて/山口青邨
傘ぬちのほのと明るき雨月かな/冨田みのる
棗の実ことに雨月をしだれたる/成瀬桜桃子
出ついでの傘さして佇つ雨月かな/飯田蛇笏
雨月なる外人倶楽部まくらがり/五十嵐播水
少しぬるめに少し長めに雨月の湯/福永鳴風
銀杏の葉のしきりに落つる雨月哉/西山泊雲
雲切れてひととき雨月澄めりけり/永井龍男
縁側に射したり消たり雨月かな/阿波野青畝
死者の辺に一夜を明かす雨月かな/佐野美智