俳句例:101句目～
葭の柄のうすうす青き団扇かな/篠原
写し絵の姉妹一つ団扇持つ/久米正雄
凌霄や蝉の団扇に日の相撲/上島鬼貫
病む身には団扇に重き軽きあり/上野泰
いつよりを晩年といふ渋団扇/有馬朗人
売れのこる残暑の店の団扇哉/会津八一
物買うて団扇貰ひし薄暑かな/小杉余子
物おもふ暮や黄色なぬり団扇/椎本才麿
屑籠に骨とび出して捨て団扇/松本照子
その中の腰折団扇捨てらるゝ/高濱年尾
山中や絵団扇の色薄きまま/波多野爽波
それぞれの僧の投げ癖団扇撒/市川光子
たそがれのものとや団扇ひとへ帯/なか
なほざりに団扇白しや古畳/楠目橙黄子
ぬばたまの黒主山の団扇かな/大石悦子
大リーグ観戦団扇持ち替えて/高澤良一
ひらりひらり登山講の渋団扇/会津八一
浅草と書きて真赤な団扇かな/藺草慶子
沓脱に団扇おちゐて月すゞし/清原枴童
水団扇ペカ～鳴りて涼しいぞ/鈴木花蓑
俳句例:121句目～
母親に夏やせかくす団扇かな/正岡子規
まどかさや片面は白茶白団扇/渡邊水巴
大団扇あげて人堰く祭かな/大橋櫻坡子
大団扇三社祭を煽ぎたつ/長谷川かな女
大玉の花火に見惚る団扇かな/高澤良一
漂へる団扇の文字も船の塵/米沢吾亦紅
一つづゝ団扇を添へて革蒲団/高野素十
七人の子を眠らせし渋団扇/田上/良子
三五本団扇撒き置く句会かな/野村喜舟
庭清水団扇を置いて掬びけり/鈴木花蓑
梵網会過ぎしと思ふその団扇/後藤夜半
中元やわれにこよなき水団扇/河原白朝
桟橋に出て夕凪の団扇かな/水原秋桜子
松どもに嵐ふくみて団扇まき/松瀬青々
束ねしやここに蝿打捨団扇/坂本四方太
仏壇に尻を向けたる団扇かな/夏目漱石
川風や団扇持て人遠ありきす/子規句集
何云うてもみんな言訳団扇風/高澤良一
傷み方あれこれありて古団扇/高澤良一
優曇華の附きし団扇を大切に/石田波郷
俳句例:141句目～
八厘と云ふも可笑しき団扇哉/寺田寅彦
前峯を風おろさねば団扇かな/尾崎迷堂
子の心ほぐるるまでを団扇風/太田昌子
村と話す維駒団扇取つて傍に/正岡子規
巻々の中に吹かるる団扇かな/斯波園女
古団扇使ひ易きが取り柄なり/高澤良一
古団扇骨傷みして風へなへな/高澤良一
団扇二ツ角と雪とを画きけり/正岡子規
団扇にて扇ぎて蟇を退けつ/相生垣瓜人
手にとりて思はぬ軽さ初団扇/松村蒼石
捨団扇遊女の顔のあはれなり/正岡子規
相方の寝相や団扇持ちしまゝ/高澤良一
月に柄をさしたらばよき団扇かな/宗鑑
矢の如く飛びゆく一つ団扇撒/西野白水
少しくは肋が冷えて団扇置く/高澤良一
団扇絵や野の逃水の一とこを/尾崎迷堂
端居して団扇の上に爪を切る/角川春樹
筆筒に団扇さしたる机かな/河東碧梧桐
捨団扇物のあはひに介まれぬ/尾崎紅葉
絵団扇が株式欄に伏せてあり/大石雄鬼
俳句例:161句目～
団扇置くところを己が齢の座/村越化石
新古今風に団扇をつかふかな/櫂未知子
団扇の手たゆき鍾馗の妹かな/尾崎紅葉
絵団扇や貴船は今も山の中/波多野爽波
絹団扇旅愁ともなき灯しごろ/河野南畦
縦あふぎはた横あふぎ団扇風/高澤良一
美しき忘れ団扇の山家かな/大峯あきら
羽団扇に又孟獲を見る日かな/子規句集
団扇貼る手元の見えて裏住居/柴原保佳
団扇掛やいづこ草家の煤の竹/尾崎迷堂
背の子へ団扇でおくる子守唄/百井芳枝
胡座して大きく使ふ渋団扇/小原菁々子
腰にさす団扇も軽し絵の旅寝/浜田酒堂
腹の底割りて二つの団扇かな/高澤良一
舞妓来て川床に団扇の風造る/山口誓子
御僧の法話すませし団扇かな/芝不器男
方丈の油団の光沢や棕櫚団扇/大谷繞石
草の上おきし団扇の色浮かみ/木村蕪城
月光もいくとせかみし白団扇/渡邊水巴
団扇手に流水を見に行きしのみ/上村占
俳句例:181句目～
僧の撒き吾の拾ひし団扇これ/後藤夜半
団扇風みぞおち辺り汗に冷ゆ/高澤良一
団扇風顔は遥かへ向けてをり/村越化石
袂より団扇とり出す逢瀬かな/野村喜舟
団扇白く父在せば母死なされず/松本進
説教のあらぬ方へと古団扇/佐々木六戈
暇あればすぐ横になり古団扇/高澤良一
掌の中に団扇ありけり昼寝覚/高澤良一
身空てふ言葉も死語に団扇風/高澤良一
輿といふ大きな文字の渋団扇/野村泊月
御旅所に団扇と扇子語らひつ/高澤良一
金閣の裾を団扇で煽ぎけり/大木あまり
戦へるベトナム国の団扇かな/下村梅子
団扇もてあふがん人のうしろむき/芭蕉
叮嚀に使うてありし団扇かな/後藤夜半
電燈を煽いで見たる団扇かな/会津八一
客揃ひ団扇二本の余りけり/高田風人子
顔よせて団扇のなかの話かな/下田実花
風送る母の背欲しき夜の団扇/鈴木まゆ
白団扇廻して水の如く居る/桑尾黒潮子
