季語/石蕗の花(つわのはな/つわぶきのはな)を使った俳句

俳句例:101句目~

仏壇の鉦の色もて石蕗が咲く/高澤良一

今日よりは十一月の石蕗の花/高木晴子

屹として瑞鹿山の石蕗咲けり/高澤良一

石蕗の花戸主の名前を筆太に/石川文子

石蕗の花憐れ御仏首おとし/永井喜久司

巌襖沖の鳴る日を石蕗荒れて/河野南畦

石蕗の花心の崖に日々ひらく/横山白虹

濡縁に立てば日のあり石蕗の花/上村占

石蕗の花往昔男に死処ありき/直井烏生

石蕗多き大隅の山汽車尾振り/藤後左右

結ぶ指開くが如く石蕗咲けり/高澤良一

燈台に雲の流離や石蕗咲けば/古舘曹人

古障子色の日差しが花石蕗に/高澤良一

地軸より咲きし色なり石蕗の花/原石鼎

思ひきや潮路展けて崖の石蕗/石塚友二

筆塚へ茎かたむけて石蕗の花/荒井正隆

採る石蕗の柔毛のくもり指につく/篠原

塀の上に嫁ケ島あり石蕗の花/西本一都

教会の朱欒ちかづく石蕗の花/和知喜八

冬晴の青潮もよし石蕗もよし/中村三山

俳句例:121句目~

石蕗の花島の電話のよく聞え/細川加賀

壮年の大仏にして石蕗の黄よ/中村明子

日々同じ花を掲げて庭の石蕗/高澤良一

石蕗咲くやわが散骨の海がある/中拓夫

石蕗の花十三弁はまことかや/山口青邨

石といふ石に石蕗咲き長命寺/古舘曹人

石蕗咲いて熊野古道明るくす/上田朴月

声出して己はげます石蕗の花/横山房子

夕闇に石蕗の明りのまだ昏れず/星野椿

石蕗咲いて密航の島人住まず/高橋悦男

石蕗卑し湯屋の煙の一すぢに/沢木欣一

冬ちかく石蕗の蕾のかたいこと/原石鼎

石蕗の花譜代の家を誇りとし/桑原和子

石蕗の花八衢に月さしにけり/岡井省二

海かくて空と一碧石蕗日和/佐野まもる

石蕗むらに眼またゆき夏の始/岡井省二

ろうかんをくだく白波石蕗の崖/石原八束

虻去るとはつかに石蕗の独り言/高澤良一

虻石蕗に来る赤とんぼ松に来る/星野立子

蝶の黄を淡しと思ふ石蕗の花/五十嵐播水

俳句例:141句目~

貧にして住持去るなり石蕗の花/夏目漱石

道ばたに渦の来てをり石蕗の花/西本一都

郷土史に明るき人と石蕗をみる/高澤良一

釣り人の片手あそばせ石蕗日和/金子佳子

門を出て一本道や石蕗昏るゝ/波多野爽波

青邨忌近づく石蕗の花あかり/古舘みつ子

鳥屋径は島崖を縫ひ石蕗の花/小原菁々子

つはぶきにこころ和んで潮見亭/高澤良一

つはぶきの黄の残りたる夕景色/吉屋信子

のり越えし巌の向うも石蕗の花/須並一衛

ひとしほに湖水のみどり石蕗の花/中田剛

ひとつづつ机を拭いて石蕗の花/岸本尚毅

よき庭も荒れたる庭も石蕗の花/上崎暮潮

わが庭のどこ歩きても石蕗と虻/星野立子

不機嫌な一人は部屋に石蕗の花/寺井谷子

井戸掘の土に圧されて石蕗の花/中川四明

今すがれゆくもの惜み石蕗の花/稲畑汀子

付添って二人の影絵石蕗の花/近藤三知子

元日の石蕗にすさべり伊豆の海/臼田亞浪

古九谷の唐子もあそべ石蕗日和/村上光子

俳句例:161句目~

古庭や百舌啼き去つて石蕗の花/会津八一

同じ色の蝶来て石蕗の花に高く/高濱年尾

塗椀をひとつづつ出し石蕗の花/岡本高明

安穏に馴らされゆく身石蕗の花/高澤良一

尼法師に石蕗の花さく小春かな/村上鬼城

崖の石蕗濤の阿修羅に海へ散る/河野南畦

崖石蕗も絶えて天嶮つづくなり/皆吉爽雨

床下を風吹きぬくや石蕗の花/岡本癖三酔

庭に出て点呼取りたき石蕗の花/高澤良一

引かへて白い毛になる石蕗の花/上島鬼貫

後水尾天皇を恋へば石蕗咲けり/丸山哲郎

思ひ出が辿り着きたる石蕗の花/山内山彦

敲くとはときに描くこと石蕗の花/中田剛

日もすがら碧空を恋ひ石蕗の花/飯田龍太

日当らぬ家悲しけれ石蕗の花/高橋淡路女

晩年のかなしき人や石蕗の花/成瀬正とし

木洩日のあれば必ず石蕗の花/大久保橙青

死は永久や老は暫く石蕗の花/殿村菟絲子

石蕗に日の当るを待ちて虻来る/西井猶存

母の目の裡にわが居り石蕗の花/石田波郷

俳句例:181句目~

汐げむり上れば濡るゝ石蕗の花/山尾白兎

沖荒れてひかり失ふ石蕗の花/柴田白葉女

波郷忌が近づき石蕗は黄を競ふ/皆川盤水

波郷死す月光石蕗にとどこほり/伊東宏晃

海鳴りも遺品のひとつ石蕗の花/三森鉄治

石蕗うまし大隅に骨埋むべきか/藤後左右

石蕗さくや猫の寐こける草の宿/村上鬼城

石蕗どこも咲きし三国と記憶せむ/早崎明

石蕗の葉の霜に尿する小僧かな/子規句集

石蕗の花ここに帰りて靴鳴らす/加藤楸邨

石蕗の花二三片づつ欠けにけり/佐藤漾人

石蕗の花入日の窓を開けておく/飯島晴子

石蕗の花夢の中でも夢をみて/長谷川草々

石蕗の花婆来て日向つくりけり/長谷川双

石蕗の花死ねざる無援の日雇者/岩田昌寿

石蕗の花炊煙いつもぬかるみへ/沢木欣一

石蕗の花照り昃りして刻移る/五十嵐播水

石蕗の花経たる旅寝や涜れなし/清水基吉

石蕗の花赫と日矢さす九十九里/水野柿葉

石蕗の黄の内助の母に詣でけり/古舘曹人