俳句例:101句目~
一番の冷え込みありぬ蔦紅葉/高澤良一
一筋は戸にはさまれて蔦紅葉/正岡子規
走りたる蔦もて館をなしにけり/不破博
二百十日塀きれぎれに蔦の骨/横光利一
蔦紅らむ野外音楽堂椅子一目/宮津昭彦
冷まじや人の面うつ蔦かづら/手塚美佐
白樺に火巻きのぼれる蔦紅葉/岡田日郎
図書館も研究室も蔦紅葉/石野/ちづ子
執念のがつきと崖に蔦かつら/石塚友二
塀の蔦瑪瑙いろなる一、二葉/高澤良一
皆知れる蔦の館でありにけり/稲畑汀子
売家の直は下りけり蔦かづら/横井也有
蔦の実を馬にくはすなうつの山/涼莵/
蔦の葉の二枚の紅葉客を待つ/高浜虚子
海をのす風のたまりや森の蔦/内藤丈草
蔦紅葉す注連をはりたる大榎/寺田寅彦
窓四角のこして書庫の蔦紅葉/鮫島交子
蔦紅葉垂れてあたたか窯の肌/伊藤京子
蔦紅葉小猿の尻のまぎれけり/巌谷小波
欠け~て蔦のもみぢ葉つひになし/風生
俳句例:121句目~
山蔦に朝露すべる葉数かな/芥川龍之介
蔦紅葉濡れしは今かしぐれけむ/秋櫻子
白雄忌の火取蛾一夜蔦沼に/鳥居美智子
薮蔭や蔦もからまぬ唐辛子/萩原朔太郎
石垣やあめふりそゝぐ蔦明り/飯田蛇笏
色かへぬ松のはれ着や蔦紅葉/高井几董
夜に入れば灯のもる壁や蔦かづら/太祗
蔦の網ぱりぱり剥げば壁けぶり/栗生純夫
その角を蔦にからめてなく鹿か/正岡子規
蔦ひらく二日に一度づつの葉を/加藤楸邨
稲妻や散るばかりなる窓の蔦/大谷碧雲居
手紙かくや蔦に灯を置く夏隣/大谷碧雲居
蔦紅葉くろむらさきを深めたる/高澤良一
我が袖の蔦や浮世の叢しぐれ/遊女-薄雲
トルソーの冷え身に移る蔦紅葉/横山房子
人がひとを阻む壁にて蔦育つ/稲垣きくの
蔦紅葉りんりんと落つ渓の水/河野多希女
吊橋をがんじからめに蔦紅葉/猿橋統流子
蔦の葉や拙の身ながらかゝる時/服部嵐雪
蔦もみじ神が登つてゆきにけり/中村苑子
俳句例:141句目~
色変へぬ蔦は寒かり時雨れては/林原耒井
落葉松を駈けのぼる火の蔦一縷/福永耕二
篠原や日あたる蔦のむらもみぢ/飯田蛇笏
枝折戸やからめる蔦の実を残す/石川桂郎
白壁をキャンバスにして蔦紅葉/大澄利江
猿一つ蔦にすがりてしぐれけり/正岡子規
岨の松の蔦の秋とはなりにけり/尾崎迷堂
散り果てて蔦は朽木を支へをり/原田種茅
十月や燃えのぼりたる蔦うるし/和田祥子
巣箱までとどきし蔦やいわし雲/大島民郎
鉢蔦のみだれおちたる諸葉かな/飯田蛇笏
石崖に木蔦まつはる寒さかな/芥川龍之介
露霜の石抱くものに蔦かづら/伊丹さち子
松のぼることたやすけれ蔦紅葉/高澤良一
馬車道に瓦斯燈ともる蔦紅葉/古賀まり子
蔦もみぢ神が登つてゆきにけり/中村苑子
日覆して蔦の茶房もエルグレコ/澤田緑生
天辺に蔦行きつけず紅葉せり/福田甲子雄
蔦紅葉イエスは修羅をまだ知らず/齋藤愼爾
蔦巻く家へ悲劇の方へ一歩づつ/秋元不死男
俳句例:161句目~
見上ぐれば蔦紅葉なりまたあるく/高木晴子
まなかひに蔦のくれなゐ岩を這ふ/中川宋淵
鉢おほふ蔦紅葉夜を散りいそぐや/原田種茅
ロンドンや蔦に埋もるる鉄扉錆び/野中亮介
蔦沼とかこむ紅葉と他は暮れぬ/水原秋櫻子
淋し母に拾ひ子もがな蔦紅葉/長谷川かな女
墓所の杉火よりもあかき蔦まとふ/大野林火
木椅子の脚を蔦が掴みて悲劇めく/内藤吐天
炭がまやぬりこめられし蔦かづら/加舎白雄
蔦の実の日ざしの秋の深まりぬ/吉岡禅寺洞
久女より多佳子に系譜蔦かづら/池上不二子
もみづるを急く葉急かぬ葉すべて蔦/山内山彦
蔦もみぢ濡れしは今かしぐれけむ/水原秋櫻子
蔦新葉みづみづと螢一つ行く/飛鳥田れい無公
窓の蔦にまつはりなびく蚊遣かな/大谷碧雲居
きりさめやいかにおつべき蔦のつゆ/飯田蛇笏
かはせみに蔦をよそはぬ老樹なく/竹下しづの女
雹のなかつめたき蔦は葉をよせて/飛鳥田れい無公
夕日の蔦紅葉もつと赤い蔦紅葉かなた/安斎櫻カイ子
家一つ蔦と成りけり五月雨/一茶/享和三年癸亥