俳句例:101句目~
霾天や起重機鈍にものおろす/大橋敦子
霾降るや原罪のごと擁かるゝ/小林康治
つちふるや潮鳴こもる九十九里/東天紅
霾るや犬にも鬱の日のありて/西尾照子
蒙古風いづれの車夫も活羅漢/永井龍男
赤松は鳴りて汚れず胡沙ふる中/及川貞
黄塵にまぎれもあらぬ傷痍の目/三谷昭
黄塵に息浅くして魚のごとし/野澤節子
黄塵に挑むがごとく水を打つ/下村梅子
黄塵に視野奪はれし車事故/吉良比呂武
黄塵のかすみて暮るる行々子/臼田亜浪
黄塵の厩舎のそばの便所かな/京極杞陽
黄塵の町のこなたに接木する/中村汀女
黄塵や雨知らぬ畑に寝て憩ふ/相馬遷子
黄沙濃し日冰輪となりて去る/しづの女
黄沙降る筑紫路の山高からず/中村田人
餐館の窓辺つちふる硝子絵/下村ひろし
黄砂降る沙翁の節の一くさり/筑紫磐井
二荒山墨絵ぼかしに霾れり/松崎鉄之介
喪の列や娶りの列や霾る街/大橋越央子
俳句例:121句目~
帆船の音なく出づる霾ぐもり/松本幹雄
幽みきて眉に積み降る夜の霾/石原八束
強腰の桑を抜きゐる霾ぐもり/橋本榮治
つちふるや大和の寺の太柱/大峯あきら
猛獣の檻の目粗し霾ぐもり/石田阿畏子
石器もて魚捌きをり霾ぐもり/はやし碧
霾の地に鳴れど驢馬臼挽ける/西村公鳳
つちふるも武蔵野ぶりの空の色/清崎敏郎
きさらぎの黄塵壁の鋲ひかる/川島彷徨子
ちはやぶる鳥居に迫る黄砂かな/五島高資
遼太郎逝きてモンゴルより黄砂/柳澤一生
黄砂ふる子の落書のボンネット/蔵本丈晶
霾るを憶良の子らは見上げしか/松田紀子
売れ残る黄砂の宅地みどりの日/清水晴子
つちふるや一天くらく林鳴り/長谷川素逝
朝粥抱く黄沙なごりの風の中/伊丹三樹彦
干す網に暮色もつるる霾ぐもり/高橋好温
黄塵に暮れゆく運河燈ともさず/竹下陶子
肉食家族に黄砂は夜を流れおり/寺井谷子
黄沙きて龍馬が裾を吹きにけり/古舘曹人
俳句例:141句目~
胡沙来る元冠の使者斬りたる碑/田中英子
霾天の海坂たるみ壹岐かくす/下村ひろし
黄塵の空にいく日ぞ鯉のぼり/軽部烏帽子
黄沙降る国へゆく日は兵として/赤尾兜子
黄沙降り博多の春も終りなる/小原菁々子
霾るや留学ビザのウェイトレス/下山宏子
銃眼を覗くや美濃の霾ぐもり/大矢美代子
いまだ見ぬ夫の故里黄沙降る/豊田美奈子
天涯のバッファローより霾れり/嶋田麻紀
つちふるや尾骨は天之忍男なり/五島高資
黄沙降る錨ころがり大いに銹び/横山白虹
黄塵の生れ止まざる国に来し/金田志津枝
つちふるや近くてとほき夫の声/和田祥子
象の背にキリンの首に黄沙降る/石川天虫
つちふるや乗る人のなき観覧車/瀧登喜子
霾天や盲ひたる日の在りどころ/石川予風
霾歇むと驢馬又粉を碾きはじむ/柳村来雨
烏賊干して呼子の沖は霾ぐもり/小林碧郎
つちふるや嫌な奴との生きくらべ/藤田湘子
霾ぐもり鞭をあげつつ馬車消ゆる/福田蓼汀
俳句例:161句目~
つちふると小さき机に向ひゐる/大峯あきら
黄塵来「みなとみらい」の一丁目/新井康村
黄塵の過ぎても牛のめつむれる/市村究一郎
黄塵に笠傾げゆく遍路かな/五十崎古郷句集
霾ると妻が告げ来ぬわれ臥すに/冨田みのる
黄砂ふる朝より二杯目のコーヒー/足柄史子
青春を斉すに似る黄砂が降る/竹下しづの女
つちふるや日輪たかく黄に変じ/長谷川素逝
をさまるはなき黄塵にむつき干す/依田明倫
いんいんと黄沙降りくる孔雀かな/吉田汀史
長城に茶を点てわれら胡沙の芯/加藤知世子
湯浴みつゝ黄塵なほもにほふなり/相馬遷子
つちふるや涙の目もて死をわらふ/石川桂郎
ジンギスカン走りし日より霾れる/有馬朗人
胡沙吹くや立ちつつ走る根なし草/加藤楸邨
胡人泊めし夜深の空の霾にごり/能村登四郎
黄砂ふる日を曼荼羅にぬかづきぬ/吉田汀史
蒙古風に船出ずといふや雁帰る/楠目橙黄子
壁画古墳人馬つちふるごとくなり/野見山朱鳥
暗いなあと父のこゑして黄沙せり/小川双々子
俳句例:181句目~
黄沙ふるあまたよみけるもののなか/田中裕明
驢馬の市つちふるまゝに立ちにけり/三篠羽村
身の灰を黄沙と均らし翔ばむかな/沼尻巳津子
驢馬を打つ鞭のひびけり胡沙ぐもり/毛塚静枝
黄塵の障子あかあかと日のびけり/川島彷徨子
つちふるや茶室に舟のつながれて/吉本伊智朗
黄塵を来てミサベールひらめかす/下村ひろし
ルービックキユーブのぎりり霾れり/大石雄鬼
霾るや墓地をくる手のひらひらと/波多野爽波
死して灰黄砂まじりに翔ぶもよし/鳥居おさむ
つちふるや抱きてつめたき独活の束/藤原如水
つちふるやおのれのほかはみな他人/田中裕明
黄沙来と涸れし乳房が血をそそる/竹下しづの女
汗の目はかがやき黄塵の頬はとがり/長谷川素逝
トランペット吹けばいよいよ黄沙降る/塩路隆子
つちふるやぬすまれさうに日が吹かれ/谷下一玄
霾やひしやげてながきクラクシヨン/夏井いつき
黄沙降る地に触れたまふ釈迦の御手/伊藤いと子
ひとむれのつばめがやつてきた黄沙がこないうちに/吉岡禅寺洞