「茅花」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「茅花」について
【表記】茅花
【読み方】つばな
【ローマ字読み】tsubana
子季語・関連季語・傍題・類語など
・茅萱の花(ちがやのはな:chigayanohana)
・茅花野(つばなの:tsubanano)
・針茅(つばな:tsubana_)
・ちばな(ちばな:chibana)
・浅茅が花(あさじがはな:asajigahana)
・しらはぐさ(しらはぐさ:shirahagusa)
・茅花ぬく(つばなぬく:tsubananuku)
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季節による分類
・「つ」で始まる春の季語
・「春の植物」を表す季語
・「仲春」に分類される季語
月ごとの分類
茅花を含む俳句例
望郷や茅花流しの工女寮/西本一都
旅鞄おけばつういと茅花かな/風生
空海の筆跡茅花流しかな/白澤良子
茅花散り徒然草に恋の段/西村和子
茅花かげ螢鬱金の灯をともす/和田渓
茅花野の光へ峠越えにけり/山田弘子
屋久島や茅花流しの海の色/小坂順子
川風に蝶吹き落ちし茅花かな/好文木
茅花流し水満々と吉野川/松崎鉄之介
径ほろび茅花流しの塩屋跡/桂樟蹊子
笹舟の舫ひていでぬ茅花かな/飴山實
茅花野に兎の如く君待つも/小池文子
故郷や茅花ぬきしは十余年/正岡子規
屋上の茅花ほほけて吹きなびき/楸邨
葛西橋渡りて茅花流しかな/蟇目良雨
雲遠し呆け茅花の辺に坐せば/安住敦
夕風の白き茅花の家路あり/山田弘子
馬鹿貝や茅花に降りし雨三日/齋藤玄
水の面の凹みし茅花流しかな/岸田稚
茅花吹くいまも歩める空也像/上村占
俳句例:21句目~
日月や茅花流しの野路の空/室積徂春
大空の凧に風ある茅花かな/小杉余子
茅花の穂蛭の血止めに今もすや/綾子
茅花野に夕風立ちて雪加啼く/伊東宏晃
茅花の穂光り忘れてゐる時も/佐藤裸人
茅花明り湖明りして来りけり/岡田貞峰
男から死ねと茅花の野に笑う/寺井谷子
段畑に人ゐて茅花流しかな/大谷たか子
狂ひても女/茅花を髪に挿し/三橋鷹女
口中の茅花を我に見するかな/大岡頌司
同齢者老い透明な茅花流し/能村登四郎
夢の中に茅花の白を摘み来る/河野南畦
川が暮れその辺が暮れ茅花暮れ/蔦三郎
旅ひと日茅花流しや湖に吹く/角川春樹
旅枕夜目にも茅花流しかな/沼尻巳津子
地の果のごとき空港茅花照る/横山白虹
水に映り茅花は白し死は徐々に/桂信子
茅花野を鉛筆書きの手紙くる/能村研三
寂れゆく捕鯨の浜の夕茅花/白水佐代子
狐の面つけて茅花の吹かるるよ/辻桃子
俳句例:41句目~
青空のつめたき茅花流しかな/鹿野恵子
茅花の穂千の鴎となりにけり/西川織子
三日月のほのかに白し茅花の穂/正岡子規
人ゆかぬ姥子のみちの茅花どき/河野南畦
古墳見て白き茅花のなびくのみ/松村蒼石
和服着て茅花流しの日なりけり/光木正之
庭に母の声して茅花流しかな/古賀まり子
放哉の庵訪へざりし茅花手に/稲垣きくの
昨日今日能登ゆく茅花流しかな/霊園文子
月照らす茅花野ははや真白なり/斉藤栄子
母いでて我よぶ見ゆる茅花つむ/高濱虚子
浜風のゆふべ茅花の吹かれをり/谷中隆子
生きること死ぬこと茅花流しかな/岸田稚
茅花どき旅の一つもせよと云ふ/高澤良一
茅花ながし妻の眠りは深眠り/八木林之助
茅花呆け旅の涙を野におとす/稲垣きくの
茅花噛む戯絵の兎になりたくて/佐藤鬼房
茅花摘む茅花の中へ走り込み/石井とし夫
茅花流し母に雨傘もういらぬ/古賀まり子
茅花野の川越えてまた茅花の野/辻田克巳
俳句例:61句目~
茅花野の幾重波なすかくれ村/古賀まり子
茅花野へ杖を頼みの試歩百歩/前田/白雨
おそろしき迄穂に出る茅花かな/子規句集
たはやすく昼月消えし茅花かな/芝不器男
行春を鬼となりたる茅花かな/安藤橡面坊
貨車通る風のつめたき茅花かな/木下夕爾
雲を見に茅花の丘にのぼりけり/西本一都
どれの子も一掴みつゝ茅花かな/篠崎霞山
青し但馬土手の茅花のどこまでも/堀葦男
まなかひに青空落つる茅花かな/芝不器男
めつむりて茅花流しに流さるる/福永耕二
稚児舞の畦行く茅花ながしかな/石田阿畏子
暮るる野や先へ先へと茅花光る/加藤知世子
離宮田の茅花は長けてうやうやし/堀口星眠
子が一つおぼえの唄よ茅花暮れ/成瀬桜桃子
われ在りと無数のわれが茅花吹く/大坪重治
ほゝけたる茅花の畦を塗りにけり/松藤夏山
茅花流しサルベージ船の錆こぼす/栗山妙子
茅花流し叱りすぎたる弟子送り/古賀まり子
脛吹いて茅花流しのむづかゆし/小松崎爽青
俳句例:81句目~
ほこほこと茅花の絮の日にほぐれ/丹羽玄子
茅花の野蒸気機関車あらはるゝ/瀧澤伊代次
茅花笛みじかき音をたてにけり/加藤三七子
とめどなく身の痩せゆける茅花原/須藤妙子
風なきに茅花ひれ伏す夕爾の死/成瀬桜桃子
夕べ淋しさや茅花茅花の明り持つ/高田蝶衣
くちびるが覚えてゐたり茅花吹く/山本美代
茅花あかり貰ひ風呂から二人つれ/中川四明
早乙女や茅花のわたをふきもどる/下村槐太
茅花野やすぐに火を焚く男たち/小泉八重子
真日の下瀬音かすかに茅花噛む/金尾梅の門
茅花ぬくひとり夕べの日にそまり/鈴木正子
茅花嗅ぐわれは如何なる風ならむ/河原枇杷男
潮の香のほのかに茅花なびきをり/海野ふさ子
浮桶下げて海女も鳴らすよ茅花笛/町田しげき
茅花穂となりて日をため日をあつめ/野村久雄
とへば茅花すべて与へて去にし子よ/中村汀女
茅花野に薩摩おごじよは髪吹かる/八木林之助
乞へば茅花すべて与へて去にし子よ/中村汀女
茅花野の風に措かれてゆくばかり/八木林之介