「年の市」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「年の市」について
【表記】年の市
【読み方】としのいち
【ローマ字読み】toshinoichi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・節季市(せっきいち:sekkiichi)
・暮市(くれいち:kureichi)
・歳末大売出し(さいまつおおうりだし:saimatsuouridashi)
・クリスマス大売出し(くりすますおおうりだし:kurisumasuouridashi)
・師走の市(しわすのいち:shiwasunoichi)
・暮の市(くれのいち:kurenoichi)
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季節による分類
・「と」で始まる冬の季語
・「冬の行事」を表す季語
・「仲冬」に分類される季語
月ごとの分類
年の市を含む俳句例
約束の半襟えらぶ年の市/占
編笠の俄隠者や年の市/也有
長崎に唐物もなし年の市/氷化
蛤の舌出してをり年の市/宋淵
狛犬を葭簀の中に年の市/青邨
やせ馬も浅草拝め年の市/路通
水仙に銭ふるひ出す年の市/休可
蒟蒻を落して跼む年の市/飴山實
のぼせたる女の顔や年の市/草城
神鳴もさはぐや年の市の音/去来
渡し場や人行きどまる年の市/奚
旅先の街のぞめきも年の市/圭仙
雪の上に炭火旺んや歳の市/暮雪
裏住の底をくぐるや暮の市/丈草
年の市朝熊の岳の真柴かな/乙由
鴨一羽帯にはさむや年の市/涼莵
夜空より大きな灰や年の市/桂信子
寺からも買に出でけり年の市/正名
臼売の臼坐りして年の市/荒井正隆
年の市白髪の母漂へる/山田みづえ
俳句例:21句目~
知りつくす抜裏さびし年の市/春草
男ものさがしあぐねし年の市/照子
甘酒の老舗はくらし歳の市/秋櫻子
年の市終りて天に星の市/本宮鼎三
歳の市裏通りより入りけり/桂信子
引当てし鰤一本や歳の市/小野喬樹
年の市絵本ならべて一むしろ/松浜
年の市線香買ひに出でばやな/芭蕉
観音堂の巨き闇あり年の市/滝春一
干蝮この軽きこと師走市/山田千秋
呼びからす声や師走の市の人/魯白
何に此師走の市にゆくからす/芭蕉
不二を見て通る人あり年の市/蕪村
年の市柳屋小さん歩きをり/たけし
年の市裸電球ひとつ足す/山川雅舟
歳凶に師走の市の人淋し/佐藤紅緑
商ひの看板古りて年の市/曽田ハツ
明暗す羽子板市や年の市/石川桂郎
真青な海に沿ひたる年の市/山田雅子
神棚を高く積み上げ年の市/佐藤博重
俳句例:41句目~
草庵に桶を足しけり年の市/野村喜舟
その上に星美しき年の市/深川正一郎
蒸籠が道にはみだす年の市/品川鈴子
蝕甚の月吹きたゆみ年の市/宮武寒々
一と筋に島の埠頭へ年の市/佐藤脩一
西側も夜店の出でゝ年の市/小澤碧童
釣銭で鯛焼買ふも年の市/下村ひろし
雷神の物買ひにくる年の市/正岡子規
青空に鴉また鳴く年の市/大峯あきら
高架下とは通りの名年の市/岩崎照子
屋根よりも高き雪道節季市/滝沢鶯衣
行灯の陰に市ふる師走かな/水田正秀
年の市たつうら町は月夜かな/大江丸
窈窕と吾妹はゆけり歳の市/飯田蛇笏
年の市や馬士によみやる送り状/召波
年の市妻が財布の古びたる/鈴木公二
年の市海山の幸積み上げて/高澤良一
年の市煙を昇る火の粉疾し/小川軽舟
年の市瓦寄進に附きにけり/野村喜舟
年の市誰を呼らん羽織どの/榎本其角
俳句例:61句目~
年の市鯛の尾ひれが秤打つ/石河加代
年の市鯛焼きを買ふ修道女/西村英子
徴発の馬つづきけり年の市/正岡子規
新婚の嫁と連れ立つ年の市/池田博子
水仙の香も押し合ふや年の市/千代女
年の市青〆縄のにほひたつ/石川桂郎
焚火して臼杵売れり年の市/宮本旅川
煮売屋による昼酒や年の市/小澤碧童
牛と馬と嘶きあふや年の市/佐藤紅緑
年の市飲ませては売る健康茶/山口恵子
いつしかに靄立つてきし年の市/森澄雄
見せものゝ獣吠ゆるや年の市/石井露月
市に暮るゝ師走の人の眉太し/島田青峰
ひたひたの水に売り鯉年の市/奈良文夫
人込みの中に我居る年の市/岩男/正子
注連の山その中ぬくし年の市/山口青邨
雪晴のはたして人出年の市/津谷たみを
外套のけものがくさき年の市/古舘曹人
宵過ぎの雪となりけり年の市/日野草城
山雀の芸こぞり見る年の市/真下喜太郎
俳句例:81句目~
年の市ここのみ静か仏具買ふ/河府雪於
年の市にまぎれ出けり峰の僧/松岡青蘿
昆布さげて人波わくる年の市/正岡子規
年の市抜けて子の病む病院に/石塚友二
灯の下の菜の青くして年の市/如月真菜
百合根買ふ大和国中年の市/山田みづえ
うちこぼすささげも市の師走かな/正秀
銀ブラの言葉古りゆく年の市/岩崎照子
年の市薬研堀とはなりにけり/野村喜舟
年の市歯朶より白きものを見ず/碧雲居
男やは何買ひに来し年の市/高橋淡路女
年の市帯をこぼれし小銭かな/巌谷小波
王孫を市にあはれむ師走かな/子規句集
掃き寄せし雪に夕陽や歳の市/大谷句佛
年の市宮師は神輿かざりけり/野村喜舟
酔李白師走の市に見たりけり/高井几董
なきごゑの一縷遠ゆく歳の市/福永耕二
年の市何しに出たと人の云ふ/小林一茶
歳の市青空ひろくなりにけり/角川春樹
灯の海を高架よぎれり年の市/宮武寒々