俳句例:101句目~
籐椅子にうつしみ雲の如くあり/岡本松浜
籐椅子にゐても立つても子を憂ふ/安住敦
籐椅子や季節めぐりてきたりけり/京極杞陽
籐椅子によろこび凭れり大夕立/池内たけし
籐椅子の人みな本を得てしづか/波多野爽波
籐椅子の家族のごとく古びけり/加藤三七子
籐椅子や沖のあをぞら虹消えず/佐野青陽人
テレビ消さう消さうと思ふ籐寝椅子/八坂洵
籐椅子にならびて掛けて恋ならず/富安風生
籐椅子を抜ける西日となりにけり/長谷川櫂
カルピスやひとり離れて籐椅子に/岸風三楼
籐椅子にしづみてうすき母の膝/古賀まり子
籐椅子や誰を待つとにあらねども/川口益広
仮睡する籐椅子雲に流さるる/長谷川かな女
籐椅子の身を拒むやう包むやう/蓬田紀枝子
立秋のあるがままなる籐椅子かな/中村汀女
わがために立つて籐椅子ゆづりたり/上村占
猫の眼に湖のいろあり籐寝椅子/柴田白葉女
すはだかに熟睡したる籐椅子かな/飯田蛇笏
籐椅子に深々とあり去なんと思ふ/後藤夜半
俳句例:121句目~
籐椅子や一人立ちてもみだれ現る/栗生純夫
籐椅子の籐ほつれゐる遺品かな/滝川ふみ子
籐椅子に身を投げしかば四辺暮れ/皆吉爽雨
韈はく乳のたゆたへる籐椅子かな/西島麦南
いまもなほ父在るおもひ籐寝椅子/横原律子
この船のながき船路の籐寝椅子/山口波津女
ぬばたまの湖に向けある籐寝椅子/原田青児
ふるさとの山に囲まれ籐寝椅子/冨田みのる
籐椅子に掛けて見馴れし物を見る/池内たけし
籐椅子にすぐ消えたがる主語であり/如月真菜
籐椅子にけぶる大阪を四方にせり/大橋櫻坡子
暮れてゆく空うつくしき籐椅子かな/岸風三楼
籐椅子に凭りて船待つとろとろ眼/稲垣きくの
コスモスに倒されて朽つ籐寝椅子/田川飛旅子
目をつむり右手ひたひに籐寝椅子/深見けん二
それとなく空く籐椅子を待つてをり/井上明華
古籐椅子はらからうとくなりにけり/橋本花風
この森に籐椅子向けて老うるらし/稲垣きくの
籐寝椅子片頬は月に吸はれけり/長谷川かな女
籐椅子のヌードモデルのガウンかな/浅井陽子
俳句例:141句目~
浜茶屋の佐渡へ向けある籐寝椅子/加藤たかし
籐椅子にペルシャ猫をるメロンかな/富安風生
籐椅子の人のごとくにむきあへる/成瀬正とし
古籐椅子引きずり場所を替へもする/高浜年尾
虚子むかへたる籐椅子はありしまま/池田和行
籐椅子や佐渡もろともに海かたぶく/栗生純夫
籐椅子に母はながくも居たまはず/馬場移公子
籐椅子にひつかかりつつ出てゆきぬ/波多野爽波
籐椅子にかけて読みだすハイネの詩/渡辺宇免江
籐椅子に手ぐさのほつれありにけり/軽部烏頭子
座椅子籐椅子余生まだまだ書を手にす/皆吉爽雨
国宝の間とは古籐椅子のあるところ/加倉井秋を
由良の門をへだてゝ加太や籐寝椅子/大橋越央子
籐寝椅子在りし日のまま富士へ向く/横田さだ子
籐椅子に倚ればかならず眼をふさぐ/猿橋統流子
スリッパの父眠り籐椅子を出るヘリコプター/島津亮
カーネーシヨン籐椅子ならして骨牌とる/長谷川かな女
『土瓶、薬かんのつる捲き』籐椅子一つもこわれた儘に/橋本夢道