俳句例:201句目~
手袋の指出るまでになりにけり/中山稲青
身にしむや白手套をみるにつけ/飯田蛇笏
手袋をまだ脱がずゐる遠嶺かな/綾部仁喜
手袋を取りて別れの手を重ね/藤野/山水
風の地に手套落ちゐて生生し/鈴木六林男
手袋を取りて夜会の始まれり/稲畑廣太郎
黒き手套はめつゝ螺旋階くだる/岸風三樓
手袋を岩に置きたるままにして/岸本尚毅
手とればマッフに雪の花ぞ散る/岡野知十
犬怖ぢて雪に倒れぬマッフの子/矢田挿雲
わがたのむピアノ弾く手や手袋す/田中敬子
枯れし明るさ黒手袋を深く嵌む/鷲谷七菜子
迎へ出る子の手つなぐと手套とり/吹田青蛾
手袋の失せざれば持つ古びかな/楠目橙黄子
欲るこころ手袋の指器に触るる/鈴木しづ子
手袋の手をつなぎあふ親子かな/鈴木真砂女
手袋をつかみて人を見送りぬ/長谷川かな女
けもの臭き手袋呉れて行方知れず/西東三鬼
黒手袋を見事に落し気がつかず/田川飛旅子
手袋を出でていつもの手なりけり/櫂未知子
俳句例:221句目~
手袋の手の老いを愧づ人しれず/稲垣きくの
手袋をはめても行手さだまらず/下村ひろし
マッフして頬氷らせつ戻りけり/大石越冬丘
手袋の五指なげうつて五指のこる/行方克巳
ピッケルを握るかたちの手套脱ぐ/小林碧郎
冷笑をこらへ手袋はめゐたり/長谷川かな女
洋行せし伯母の形見の古マッフ/戸塚千代乃
吾子を抱く外套のまま手套のまま/鷹羽狩行
手袋に十指をおさめ耐えるのみ/高橋たかえ
手袋にもらふより飛ぶ何のビラ/下村ひろし
手のうちを見せぬつもりの黒手套/神林久子
脱ぎ手袋の指に見られて紅茶飲む/河野南畦
伊豆は白い手袋蜜柑の花が散り/川島彷徨子
手套嵌むつまさきにすぐ水広し/大岳水一路
手套嵌む吾へさしたる小鳥の眸/大岳水一路
玻璃くもり壁炉の上に古マッフ/栗原とみ子
砂丘の女手袋ぬげば海盤車になる/有馬朗人
怒も寒もわが手袋の中なりけり/橘川まもる
梨花のもと黒き手套をしぼり持つ/原コウ子
穴へ忘れられ穴掘りたる手袋は/加倉井秋を
俳句例:241句目~
手袋や去年となりたる昨日のこと/藤岡筑邨
春手袋ほつれ易くて父母の無し/長谷川秋子
少しふくらんで手袋脱がれあり/上野さち子
花を買ふ手袋のままそれを指し/山口波津女
スキー手袋置かれ握力まだ残りて/平井さち子
飛びたちさうに春手袋の忘れもの/櫛原希伊子
やはらかき掌を与へむと手套脱ぐ/佐野まもる
別れ来し黒き手套を脱ぎてみつむ/柴田白葉女
手袋合掌させて蔵いし会いたきなり/寺田京子
祈りにはあらず手套の五輪を組む/磐城菩提子
妻のポケット探せばぬくき手袋など/香西照雄
手袋の手をたゞひろげゐる子かな/松根東洋城
墓地をゆき黒き手袋をぬがざりき/橋本多佳子
手袋をわすれ四五歩をもどりけり/廣江八重櫻
若き士官かくしに手袋のはし見せし/喜谷六花
弊衣無帽無手袋なれど教授なる/竹下しづの女
外出がちなるを悔いつつ手袋ぬぐ/柴田白葉女
町に出てゐてあてのなきマッフかな/三宅絹子
鴎舞ひゐし手袋の手を振りて去りし/池内友次郎
ペンだこに手袋被せてさりげなく/竹下しづの女
俳句例:261句目~
手袋とるや指環の玉のうすぐもり/竹下しづの女
大いなる寝手袋をして寝まりけり/竹下しづの女
牧師の手套まぶしく孤児のなでられる/川口重美
ショーウインドーの手袋緑立ててをり/金箱戈止夫
手袋の穴に聴くアンダンテカンタビレ/長谷川かな女