俳句例:101句目~
男凧海の初日を曳き上る/高橋悦男
尾をつけて一番高し奴凧/前田普羅
凧なにもて死なむあがるべし/苑子
切凧の絵をうつぶせに麦の上/篠原
凧糸はいま恍惚の抛物線/松山足羽
少年の瞳に海平ら凧揚ぐる/東早苗
外房の大凧ひびく海の上/橋本榮治
よく見れば昼の月あり凧/正岡子規
切凧の落行さきは淡路哉/正岡子規
父の手に息吹き返す奴凧/葛野良子
わが声の五十となりぬ凧/藤田湘子
点滴のふたり正月凧遠し/神尾季羊
凧遠し家根と枯木と半せり/瀧春一
火防凧ひつくり返り納りぬ/岸田稚
几巾きのふの空のありどころ/蕉村
夏燕故宮広場の凧もまた/加藤耕子
凧の陣帯屋桝屋ぞ人も知る/田士英
凧ばいと売る古町や雪催/石川桂郎
一点に凧止まりて恍惚と/平松荻雨
いかのぼり東寺八坂の塔の間/蝶夢
俳句例:121句目~
上昇の揺れを大きく奴凧/池田秀水
減り~て五尺の雪や凧/佐野青陽人
凧ひとつ凍みて白山遠くせり/昭彦
海は国境少年の凧あがる/対馬康子
凧を張る糸に朝光矢のごとし/原裕
奴凧肩怒らせて一人占め/川崎春浪
決闘の島逆しまに凧合戦/堀青研子
青空の深きに凧や真田領/横山昌子
住吉に凧揚げゐたる処女はも/誓子
大方は海へ上りて島の凧/宮田蕪春
合戦の父子相討つ凧日和/上野泰子
切凧や少年土手に躍り出づ/角菁果
凧あげの原や秩父嶺あきらかに/貞
大凧を駅天井に切符買う/対馬康子
凧二三裏の白見す流寓者/香西照雄
国府跡真白な凧ひきずれる/原田喬
青嵐喧嘩凧空に大水入り/村上清香
冬晴や鳶がちかづく奴凧/稲葉房枝
既に妻の朝の物音空に凧/中村草田男
凧揚がる藤原京の風とらへ/田中美月
俳句例:141句目~
ありたけの糸のばしたり凧/石井露月
初東風をうしろにうけて凧/正岡子規
ある時はすねて落ちけり凧/正岡子規
新月といふほどのもの凧のへん/青畝
担ぎたる絵凧に磯の波あがる/有働亨
手元から日の暮れゆくや凧/井上井月
夕焼の輪中の田より凧一つ/近藤一鴻
うなり凧天上にあり軒菖蒲/和田祥子
弥彦晴仰げば小さき凧の紅/坂手美保
凧揚げて男の空と思ひけり/辻田克巳
峠家の子の数の凧峠に見ゆ/茂里正治
凧揚げの子らに灯り地安門/原田青児
凧揚げの師は横丁の煎餅屋/工藤克巳
岡寺や揚りすはれる凧一つ/松藤夏山
初辰の水を上ぐるや凧の中/増田龍雨
きれ凧に主なき須磨の夕べかな/蓼太
大凧のゆさ~来たり五人力/尾崎紅葉
きれ凧や糸くひとむる鬼瓦/正岡子規
凧揚の下語らひの藁塚二つ/太田土男
けふの空助六よりも奴凧/後藤比奈夫
俳句例:161句目~
大凧に触れ傾ける絵凧かな/星野吉人
夢醒めよ天上大風凧あがる/和田悟朗
凧日和流水湾に押し入りつ/澤田緑生
凧次第にふえぬ目白台/阿部みどり女
凧澄むや天の香具山低くあり/柊愁生
北窓に金色の凧あがりけり/橋石和栲
凧狂ふ風の狼藉逃がれ得ず/河野南畦
凧空見てものはおもはざる/加舎白雄
叡山を下るに大津凧あげる/萩原麦草
みづうみに月光を容れ懸凧/菅原鬨也
古戦場たりし河原の喧嘩凧/阿部恭晃
わかの浦に来てうち跼む凧日和/梅史
凧落ちて砂にまみれて冬鴎/対馬康子
実直な風を探しに凧さげて/柴田久子
学校の上に絵凧が唸りけり/内田百間
一人子の凧揚りけり麦の秋/正岡子規
一天に座の定まりし凧の数/清崎敏郎
いかのぼり海抜千の晴天に/宮坂静生
上賀茂の神の庭なるかかり凧/中火臣
中空にとどまる凧も夕陽浴ぶ/桂信子
俳句例:181句目~
鬼凧を買ふほかはなし壱岐土産/原裕
二村の凧集まりし河原かな/正岡子規
風神を味方につけし武将凧/品川鈴子
青空の凧には凧の自由席/森田ていじ
夕風や空に日暮るゝ凧一つ/正岡子規
奴凧よき川風の眼鏡橋/山野邊としを
凧高く揚げたる父を誇りとす/下村福
青空に繋ぎとめたり父の凧/出口善子
兵の子の凧蒼天へ糸張れり/細谷源二
太陽の真下に澄めり凧/阿部みどり女
凧あがり少年の日の山河あり/倉田青
凧あがり戦前戦後町変らず/福田蓼汀
霜除にちらり~と凧の影/池内たけし
電線に凧のかかりて春の風/寺田寅彦
凧あぐる風にこぼすやいも麻疹/白良
藪入の新井薬師に凧あがる/皆川盤水
蒼天や舌出す凧の三番叟/水原秋櫻子
凧あげや沖の沖より父の声/高柳重信
天駆くる馬の嘶き武者絵凧/住谷幸子
凧の影失すれば宿る旅安し/島田青峰