俳句例:101句目～
草も木も雨の中なる涼み舟/岸本尚毅
芭蕉葉や風なき内の朝涼み/中村史邦
両神山を指呼に頂上涼み台/高澤良一
橋涼みこゝにも金の咄かな/藤野古白
御仏も扉をあけて涼みかな/正岡子規
月の出や幼きものゝ門涼み/野村喜舟
桃の木にたつぷりと水夕涼み/上村占
今生の音がきらめく床涼み/松浦敬親
枇杷葉湯呑むや涼みの行すがり/秦洋
興もなき地震話や門涼み/楠目橙黄子
兎の仔みんな黒くて夕涼み/飯島晴子
打網に人のたかりや夕涼み/会津八一
立ありく人にまぎれて涼みかな/去来
破風口に日影や弱る夕涼み/松尾芭蕉
砂川をわたりてあそぶ涼みかな/土芳
朝涼み楓のもとに立ち寄らん/方/山
分捕の軍艦見ゆる涼みかな/正岡子規
岩と波語らうを聞く涼み船/前田普羅
妻も来よ一つ涼みの露の音/渡辺水巴
闇がりに座頭忘れて涼みかな/五車反古
俳句例:121句目～
首のない貴婦人ふたり夕涼み/藤岡筑邨
よい月に背き座頭の納涼かな/伊藤松宇
鱚舟や涼みの人も乗つてゐて/依光正樹
人降りし納涼船の灯を消さず/鈴木貞雄
夜話の露が下りたる納涼かな/尾崎紅葉
渦潮や燈にまみれたる納涼船/川崎展宏
空にうつらんか納涼台人一杯/中島月笠
納涼にあらず君が夫の弾く小唄/及川貞
納涼の上方芝居に泣き笑ふ/大塚とめ子
納涼の義太夫かたり乗せし船/稲畑汀子
納涼やつまみてむさき君の櫛/飯田蛇笏
納涼台朽ちるも古き舗なれば/山口青邨
納涼映画国境越えて逃亡せり/鈴木栄子
納涼映画小学校の椅子出され/池田秀水
蝕みし葉が鳴る納涼了ひかな/中島月笠
あつみ山や吹浦かけて夕涼み/松尾芭蕉
あられなき姿となりぬ夕涼み/長谷川櫂
あら壁や水で字を吹く夕涼み/内藤丈草
うば玉の涼みや髪干女後にて/椎本才麿
お涼みあれと絵葉書の宋の壺/桜井博道
俳句例:141句目～
かたまりて暮色となりし涼み舟/桂信子
くらがりに鳴らす涼みの白扇/石原舟月
ふところに薄き句集や夕涼み/野村喜舟
ゆるゆると涼み憩ひて神詣/深川正一郎
ギブス組涼みがてらの莫迦話/高澤良一
一力の涼み牀几の土佐太夫/中村さとし
下駄はいて竹積む上に涼みけり/鈍太楼
云ふならば初老夫婦の夕涼み/高澤良一
八尾びと路地先に据ふ涼み台/高澤良一
公達もしどけなかりし夕涼み/筑紫磐井
勉強の灯を見上げつつ庭涼み/松浦敬親
又揚る涼み花火や吹きくづれ/鈴木花蓑
口笛に独そゞろぐ涼みかな/阿波野青畝
夕涼み人あり屋根に詩を歌ふ/星野麦人
夕涼み仲居に文字を習はする/正岡子規
夕涼み尻をまくりて歩きけり/下村牛伴
夕涼み格列拉の門を戻りけり/尾崎紅葉
夜涼みに油のやうな水の景/上田五千石
夜涼みの岸壁蝦夷の材が匂ふ/佐藤鬼房
夜荷役の灯に黒く浮き涼みの人/堀葦男
俳句例:161句目～
天竺や涼み映画の客として/佐々木六戈
好者の羽織飛ばせし涼みかな/前田普羅
のりあげた舟に汐まつ涼み哉/正岡子規
客変へて同じ海漕ぐ涼み舟/百合山羽公
屋根の上に棹さす人や涼み舟/松下紫人
左右の山暮れて相似る橋涼み/富安風生
庵主の灯を消し闇に涼みけり/富田潮児
弓持ちて通る人ある涼みかな/岡本松浜
待ち合はす涼みの連や橋の上/寺田寅彦
手甲脱ぎあぶれ涼みの日雇女/西本一都
提灯に西日つよけれ涼み舟/楠目橙黄子
映る灯を波の杼の縫ふ夕涼み/毛塚静枝
月よさの将棋さしけり涼み合/尾崎紅葉
松島に足ぶらさげる涼みかな/正岡子規
松島の闇を見てゐる涼みかな/正岡子規
梅干した門はさめけり夕涼み/浜田酒堂
橋の名に涼み提灯かざしみる/高木晴子
橋涼み小火の人出のくずれ来る/悌二郎
橋涼み温泉宿の客の皆出でて/高浜虚子
気安さに涼みばなしもして戻る/上村占
俳句例:181句目～
涼みゐし中の一人に電話来し/星野立子
深山草挿してありけり床涼み/藤田湘子
渋り腹なるとはいへず涼み舟/茨木和生
用事ふと涼みの群を脱しけり/野村泊月
田を借景屋根ある朱橋昼涼み/香西照雄
甲板に笑ひを飛ばし涼みをり/狩野刀川
痴人彼も髪白きとし夕涼み/百合山羽公
筧にも滝と名のつく涼みかな/正岡子規
考へは教師を出でず涼みけり/辻井ト童
耶蘇島の墓場は蜑の涼み処/小原菁々子
聞えざる涼み芝居を唯見をり/高浜虚子
聞き覚えある声ばかり夕涼み/児玉輝代
涼み石鳥の止まれば鳥のもの/村越化石
蚊ののらぬ所までいざ涼み舟/広瀬惟然
誘ひ立つ涼み床几の舞子たち/後藤夜半
遠く消えて人魂らしき涼み哉/小澤碧童
那智黒の小石拾ひぬ浜涼み/楠目橙黄子
鉱山慣れて手拭首に涼みけり/清原枴童
門涼みかゝる夜更けに旅の人/高野素十
門涼み人に来られて仕舞けり/尾崎紅葉
