「隙間風」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「隙間風」について
【表記】隙間風
【読み方】すきまかぜ
【ローマ字読み】sukimakaze
子季語・関連季語・傍題・類語など
・ひま洩る風(ひまもるかぜ:himamorukaze)
–
季節による分類
・「す」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
隙間風を含む俳句例
白襖の黒枠不吉隙間風/香西照雄
枕上来てやる度に隙間風/中村汀女
減塩の腰抜汁や隙間風/高橋茶梵楼
晩年といふ家ありて隙間風/蔦悦子
屑籠を楯なる書屋隙間風/井沢正江
朝粥の湯気斜なる隙間風/村上青竜
飲食や檜の家の隙間風/殿村莵絲子
隙間風兄妹に母の文異ふ/石田波郷
指銜え口中にある隙間風/和田幸司
寸分の隙をうかがふ隙間風/富安風生
隙間風終生借家びととして/石塚友二
御座の間の百万石の隙間風/吉本香歩
かみ合はぬ話に黙す隙間風/加藤武夫
隙間風来る卓上に林檎一つ/山口青邨
この店のここに坐れば隙間風/辻桃子
隙間風想ひ出す顔みな違ふ/赤尾兜子
折目正しき屏風より隙間風/鷹羽狩行
煤掃きて改め招く隙間風/百合山羽公
旅にして海の匂ひの隙間風/山内山彦
百姓の夜はしづかや隙間風/橋本鶏二
俳句例:21句目~
隙間風何に倣ひて犇くや/相生垣瓜人
サーカスの緊張解けし隙間風/きよみ
隙間風寝煙草煙顔に来る/米澤吾亦紅
五百年つづける宿の隙間風/茂里正治
隙間風寝嵩崩さず妻子あり/小林康治
潮騒を伴ふ隙間風に叔母/大岳水一路
縄のれん一本挟む隙間風/黒坂紫陽子
国宝の寺おほらかに隙間風/鷹羽狩行
隙間風十二神将みな怒る/阿波野青畝
隙間風驚き合ひて棲みつかな/岸田稚
隙間風ちちははの夢吾子の夢/相馬遷子
隙間風とも争はずなりにけり/藤田湘子
かたくなな心に隙間風の吹く/山田敏子
隙間風エレベーターの扉より/関森勝夫
隙間風パン焼く香り運びくる/田中雅子
隙間風剃らるる鬚に黒ぞなく/石川桂郎
隙間風屏風の山河からも来る/鷹羽狩行
隙間風元三大師のお札より/佐々木六戈
隙間風その数条を熟知せり/相生垣瓜人
隙間風衆愚の目鼻して病めり/小林康治
俳句例:41句目~
隙間風逃ぐる術なき夜々の肩/石塚友二
人の世に出遅れてゐる隙間風/松山足羽
隙間風殺さぬのみの老婆あり/相馬遷子
単身赴任寮プレハブの隙間風/福原紫朗
夢にまで入る隙間風夫婦たり/大沢初代
折詰に鯛の尾が出て隙間風/波多野爽波
時々にふりかへるなり隙間風/高浜虚子
東京の隙間風とも馴染みたる/山田弘子
灯を消して雪の匂ひの隙間風/堀口星眠
版画屑転がしてゐる隙間風/中条久三夫
産小屋の十坪に足らぬ隙間風/斉藤夏風
町ながらここは谷の底隙間風/下村槐太
隙間風灰を熾して通りけり/佐々木六戈
長病みの夫の背中に隙間風/浅見まき子
閉むるときをどる襖や隙間風/小路紫峡
隙間風さへ団欒をさまたげず/斎藤道子
みちのくの馴染みの宿の隙間風/小島左京
隙間風せんなし火鉢守る父子/小原菁々子
隙間風座りかへたるところへも/宮下翠舟
さりげなく語りゐる座の隙間風/高野彩里
俳句例:61句目~
恋に怯づは才なきあらず隙間風/石塚友二
すぐ寝つく母いとほしや隙間風/清崎敏郎
ほのゆるゝ閨のとばりは隙間風/杉田久女
コンセント大工に貸して隙間風/塩川祐子
二階より隙間風来る母の死後/中尾寿美子
助け茶屋仕舞ひ仕度の隙間風/加藤知世子
隙間風来し方見つめ直すとき/久保田静子
隙間風かんばし偸安の人よ国よ/香西照雄
忍び入り紛れをるなる隙間風/相生垣瓜人
隙間風五十腕置くに膝よりなし/原田種茅
糸繰るや雪気もまじる隙間風/能村登四郎
妻の指に真珠うるほふ隙間風/千代田葛彦
カーテンの動いてゐるは隙間風/高濱年尾
隙間風臍につぶやく言葉とて/加藤知世子
精いつぱい身を楯にして隙間風/森川恭衣
隙間風どのみち立て付け直す家/高澤良一
母がりやむかしのまゝの隙間風/山本晃裕
かく隙ける隙間風とはわらふべし/皆吉爽雨
隙間風ひとすぢこころ無惨なり/柴田白葉女
立てまはす古き屏風や隙間風/阿部みどり女
俳句例:81句目~
疼く歯のほとりを行けり隙間風/相生垣瓜人
眉毛にも耳朶にも著けり隙間風/相生垣瓜人
灯虫来し野より来るなり隙間風/相生垣瓜人
海の隙間風茶沸しの瓦斯ゆるる/田川飛旅子
隙間風次第しだいに四面楚歌/佐土井智津子
隙間風般若波羅蜜多生きたしや/田川飛旅子
隙間風薔薇色をこそ帯ぶべけれ/相生垣瓜人
隙間風祖母と寝し子の寝落ちしか/大野林火
隙間風負ふべくあらぬ身の負ひ目/石塚友二
蒸しものの細めの瓦斯や隙間風/宍戸富美子
ありとある隙を占めをる隙間風/相生垣瓜人
隙間風母をらぬ家のどこよりか/春日こうじ
けぶりゐるランプに見ゆる隙間風/米沢吾亦紅
輸かざりやすでに三日の隙間風/久保田万太郎
隙間風さまざまのもの経て来たり/波多野爽波
しみじみ孤り寝ても覚めても隙間風/小松崎爽青