俳句例:101句目~
教室に海鳴りが満つ卒業後/今瀬剛一
断髪の生まの襟足卒業す/上田五千石
日本の負けいそぐとき卒業す/大牧広
春雪の解くるが如く卒業す/前田普羅
一司書へ言葉をかけて卒業す/森田峠
一樹よく耀く日以て卒業す/下村槐太
万金を約され撰手卒業す/吉良比呂武
木を植ゑて風桃色に卒業す/小嶋治子
東京を去る未練なし卒業す/辻口静夫
校塔に鳩多き日や卒業す/中村草田男
棒切のごとき記念樹卒業す/橋本榮治
母われの最も泣きて卒業歌/都筑智子
水と火が家々にあり卒業す/長谷川双
交換日記少し余して卒業す/黛まどか
人の子の卒業論文わが閲す/山口青邨
今日限り廃校となる卒業歌/佐藤信子
沖に出て気球虹色卒業期/小野恵美子
俗語のみ覚えて彼の卒業す/櫂未知子
父のけふ卒業乙女両脇に/赤松ケイ子
父の纜発止と受けて卒業す/斎藤節子
俳句例:121句目~
制服の襟よく拭いて卒業す/吉屋信子
剣賜ひ水漬くかばねと卒業す/及川貞
劇に出て鼠の役や卒業す/田川飛旅子
田や畦やけふ卒業の木綿服/石川桂郎
耶蘇髭を貯め彫刻科卒業す/岡田貞峰
卒業すプールの梯子垂直に/宮坂静生
卒業す一粒の麦地に播かれ/番條澄子
聖母像うしろの昏き卒業期/原田青児
菊花展卒業式のごとくなり/高澤良一
卒業といふ卒業かとも思ふ/行方克巳
裏山に巣箱を掛けて卒業す/原口洋子
卒業に下宿の荷物まとめけり/上村占
誰も来て仰ぐ大樹や卒業期/山岡季郷
卒業のこの雪の田も水音す/桜井博道
踏青やきこえて遠き卒業歌/木下夕爾
運命は笑ひ待ちをり卒業す/高浜虚子
鍵盤に山の端が映え卒業歌/今瀬剛一
雪国の海きらきらと卒業す/高木弘子
雪雲の尾のめぐる空卒業す/川崎展宏
黄落のなかに卒業記念樹も/佐野美智
俳句例:141句目~
卒業の一人々々の面輪かな/清崎敏郎
卒業の丘に椿の咲きにけリ/岸風三樓
卒業の兄と来てゐる堤かな/芝不器男
卒業の娘の晴著持ち上京す/加藤晴子
卒業の子にたしかなる喉仏/安田晃子
卒業の子のー人ゆく峠あり/岸/霜蔭
卒業の子の戻り来る峡の家/皿井節子
卒業の子を乗せ父の船帰る/大澤柿村
卒業し父母の菩提の僧となり/山口笙堂
いびつなる自画像残し卒業す/河合澄子
片ゑくぼ吾に似し子の卒業す/田中英子
卒業子霞の末となりにけり/五十嵐播水
かたく巻く卒業証書遠ひばり/木下夕爾
卒業生らしきが掃きし校舎裏/加藤正尚
父の意にそはぬ学部を卒業す/中井文人
この空をふるさとにして卒業す/三宅桂
これよりは恋や事業や水温む/高浜虚子
父の声もちし吾子なり卒業歌/小川廣男
大方は善き子なりけり卒業す/森田公司
卒業歌青き吾子の頭見当りぬ/石川桂郎
俳句例:161句目~
卒業を見下してをり屋上に/波多野爽波
なまけ降る目の前の雪卒業す/宮坂静生
なんとよく泣くよ今年の卒業子/森田峠
はだれ野の安曇に聞けり卒業歌/及川貞
卒業の翼そのまま父との旅/赤松ケイ子
卒業期樹は根元より水に映る/津田清子
卒業をして東京に未練なく/中川きよし
わんこそば屋に卒業の前夜祭/吉田ひで
アネモネは瓶に短かく卒業す/岸風三楼
渾名まづ目に浮ぶ子よ卒業す/富永小谷
卒業歌止んで花壇の石黙る/百合山羽公
グラウンド光溜めをり卒業す/鈴木貞雄
卒業歌八雲の裔を師と仰ぎ/長谷川史郊
慣れそめし父の任地に卒業す/西村和子
波音を聞きに来てゐる卒業子/山田弘子
末の子の見上ぐる背丈卒業す/稲畑汀子
波ふえて卒業の日の沖見えず/藤田湘子
ヒヤシンス水に根を張り卒業期/樋笠文
卒業子の答辞加筆し居残れる/木村蕪城
卒業は昨日なりしに連れだち来/森田峠
俳句例:181句目~
一コリント十三章読み卒業す/大山多吉
少女らの瞳濃くなる卒業期/向野由貴子
上りホーム下りホームに卒業子/辻桃子
山彦を山へかへして卒業す/遠藤若狭男
下駄箱の別れそのまま卒業す/田口風子
山手線の日の中にゐる卒業子/斎藤夏風
卒業やモンペの並ぶ古写真/大塚とめ子
卒業期われにも古き日記あり/前田鶴子
作曲も芸に生くる身卒業す/池内友次郎
兄いもと遠く隔てゝ卒業す/大場白水郎
凧揚ぐるまだ征服の卒業子/下村ひろし
母の手に明るく育ち卒業す/岩川みえ女
卒業や今はあとなき旧校舎/五十嵐播水
卒業す以下同文の一人とし/大久保白村
島の医になる臍かため卒業す/塚原木犀
卒業や名を持つ星と持たぬ星/櫨木優子
島よりの航跡ながし卒業歌/長田喜代子
巻きぐせのはやも卒業証書かな/日原傳
巻き込んで卒業証書もう古し/福永耕二
校庭の山羊にも別れ卒業す/成瀬櫻桃子