俳句例:101句目~
夫婦老い涙見せ合ふ終戦日/殿村菟絲子
少年の日の我が裸身終戦日/真鍋つとむ
あかあかと藷洗ひあげ終戦日/高澤良一
父の忌も奇しくも同じ終戦日/今泉貞鳳
生きのこり黒き句集や終戦日/沢木欣一
甲高きラジオの時報終戦日/片山由美子
終戦日どこへもゆかず畳拭く/田口紅子
終戦日夕焼くさき水を飲めり/福永耕二
終戦日孤独の風呂を溢れさす/雨宮抱星
終戦日朦朧機雷えいになれ/百合山羽公
終戦日沖へ崩るる雲ばかり/渡邊千枝子
終戦日深くしゃがんで厠の蚊/高澤良一
終戦日迎ふるにわが空手かな/石川桂郎
肘の知る椅子の感触終戦日/岩淵喜代子
肥後守の錆磨りて居り終戦日/加藤耕子
芙蓉咲き今朝の供華とす終戦日/及川貞
遠い木の雲を見てをり終戦日/西林/始
かみきりの机を噛めり敗戦日/白岩三郎
この空を奈落より見き敗戦日/岡田貞峰
ハモニカのとんぼ印や敗戦日/政木紫野
俳句例:121句目~
八月の富士のくろがね敗戦日/水原春郎
古都の石垣隙まで乾き敗戦日/花谷和子
吊り皮のみな手錠めく敗戦日/木田千女
学べざりし気後れ今も敗戦日/岡田和子
孫たちに囲まれている敗戦日/里見宜愁
常のごと病児診しのみ敗戦日/水原春郎
戦時下映画深夜に及ぶ敗戦日/高澤良一
靴はくと痛む指あり終戦日/佐藤静峰子
城垣のみが進むかに濤敗戦忌/香西照雄
敗戦日語らざる父酔ひにけり/橋本榮治
役立たぬものほど溜り敗戦忌/関森勝夫
敗戦忌据ゑし遺品のみな鉄塊/小泉小泉
敗戦忌深夜のバイクの暴走音/早川翠楓
敗戦忌炎えてしまつた青年ら/北さとり
仏飯の小さなひと口敗戦忌/平井さち子
敗戦忌燃えてしまつた青年ら/北さとり
敗戦忌砂のざらつく風呂の底/木田千女
敗戦忌腹べんべんと存へし/中戸川朝人
旧悪もなつかしきとか敗戦忌/香西照雄
石をもて何擲つべきや敗戦日/岸風三樓
俳句例:141句目~
水のんで顔のゆるみし終戦忌/小林鹿郎
爪染めし嫁が米とぐ終戦忌/田中こずゑ
終戦忌頭が禿げてしまひけり/藤田湘子
いつまでもいつも八月十五日/綾部仁喜
てのひらのほてる八月十五日/浅沼艸月
八月十五日どどどどどどと浪/篠崎圭介
八月十五日ぺつたんこに坐る/大坪重治
八月十五日朝母音のゆたかなり/石寒太
飲食のおそき夜なる終戦日/星野麥丘人
赤き蛾の昼いでて舞ふ敗戦日/藤田湘子
敗戦日味噌汁熱く熱くする/風間みどり
すいとんを振舞ふ寺の終戦日/相河美智子
ちちははも師も亡く迎ふ終戦日/伊東宏晃
舗装路の昨夜のほてりや敗戦日/飯野計夫
ひとつづつ玉子にシール終戦日/小高沙羅
わたつみの声なお耳朶に終戦日/掛/花城
スリッパの散らかる山の終戦日/岡田史乃
火のような白髪もあり敗戦忌/藤井冨美子
終戦日夫ひそと蝉ほしいまゝ/殿村莵絲子
歩を倦まぬ象と子らの頭終戦日/古沢太穂
俳句例:161句目~
終戦日風の行方のくさかげろふ/有馬籌子
終戦日海おそろしく山やさし/大塚千光史
木々のこゑ石ころのこゑ終戦日/鷹羽狩行
終戦日妻子入れむと風呂洗ふ/秋元不死男
隔靴掻痒とは子に伝ふ敗戦忌/折原あきの
戦記なべて自決で閉づる敗戦忌/福原紫朗
終戦日何処へゆくとも父言はず/北澤瑞史
タゴールの「人間不戦」終戦忌/松本澄江
場ふることいまは暑のみや終戦忌/及川貞
身ほとりの軽くなりゆく敗戦日/樅山/茂
手に触るる物みな乾く敗戦忌/菊池ふじ子
玉子ごはんは馳走の部類敗戦日/高澤良一
終戦忌切れ電球を透かし見る/川村三千夫
マッカサー銜えパイプの終戦日/高澤良一
キヨスクに弁当あふれ敗戦忌/七田千代子
足らぬ飯買ひに出でたり終戦忌/石黒哲夫
敗戦日重ね重ねて老いにけり/町田しげき
終戦日ジャンボ餃子屋ガード下/高澤良一
しづかとは音を欲ること敗戦日/櫂未知子
テレビ見ぬ一と日を過す終戦日/須山重信
俳句例:181句目~
遺されし母も逝きけり終戦日/古賀まり子
敗戦忌海恋ふ貝を身につけて/山本つぼみ
敗戦日重ねサイ口も古りにけり/大島民郎
終戦日いただく時は手を合はせ/杉山加代
終戦日LOFTの袋旗のごとし/内田美紗
なまぬるき雨に打たれて終戦日/小島千架子
藁の香に祖のぬくもり終戦日/鍵和田ゆう子
象の餌のゆたかに積まれ敗戦忌/白岩てい子
筋を通せしわが「青春譜」敗戦忌/尾村馬人
敗戦忌ここまで生きて来た不思議/尾村馬人
ヱリカひしと仏蘭西に摘む敗戦日/小池文子
終戦日ノモンハン耳鳴りけふも診る/佐竹泰
少女の胸と揺れをともにし敗戦日/古沢太槐
海を見に祖母が来てをり敗戦日/島田まつ子
みんみん鳴くゆふぐれ八月十五日/角川春樹
コップの氷見てをり八月十五日/千代田葛彦
終戦記念日ひるのお粥を赤ん坊と/原コウ子
出会ひたる蓮はくれなゐ終戦日/九鬼あきゑ
一肢置いてががんぼ去りぬ終戦日/小暮洗葦
はらからの死に風化なし敗戦忌/山本つぼみ