季語/春燈(しゅんとう/はるともし)を使った俳句

俳句例:101句目~

残務の灯一角つよし春嵐/鷲谷七菜子

春灯の暗きに心魅かれゆく/西村和子

一人居て春燈ともる大広間/高木晴子

行く春の千体仏の燭ゆれて/細見綾子

春燈や読んでは畳む師の栞/戸恒東人

春燈に涙もふかずいましけり/上村占

明日嫁ぐ子に家ぢゆうの春灯/堀曜子

春灯の流されてをる雨の玻璃/上野泰

春燈膝下に病めば恋もなし/野澤節子

人の灯への灯寄つて春岬/鳥居おさむ

春燈の二つ一つは今ともし/後藤夜半

春灯祇園は道へ零れけり/金田志津枝

春燈を点せば嗚呼と二十人/大野朱香

春灯や指にはさみて筆細し/橋本鶏二

枕辺の春の灯は妻が消しぬ/日野草城

春燈を山に飛ばして山家あり/上野泰

春の海一燈つよく昏れにけり/桂信子

春の灯にカスバの女無表情/澤田緑生

春の灯に暗き影ある女かな/田中王城

春月や水に相呼ぶ渡しの灯/籾山柑子

俳句例:121句目~

春灯や菊勇のかげ銀屏風に/田中冬二

春灯女神の背筋なまめける/佐藤春夫

春燈の見上ぐるたびに光り増す/林火

春の雷大阪の灯を昏くせり/松村富雄

灯をともす指の間の春の闇/高浜虚子

春燈というあやしさの息遣い/源鬼彦

燈ともせば竜の髭濃き春夕/下村槐太

独り居の春燈の下冷雨降る/高木晴子

織り上る紬にほへり春灯/氏家さち子

美容室春灯一つづつ消して/河野扶美

春驟雨花購ひて灯の軒づたひ/岡本眸

葬の灯へ春の霰の音もなし/伊藤京子

春燈遅筆を影に添はれゐつ/野澤節子

行く春の南京町は灯も多彩/福田蓼汀

子の寝息確かめ消しぬ春灯/西村和子

遠く航くための仮泊の春灯/友岡子郷

孫戻す家のしょんぼり春燈/高澤良一

客のありいま家ぢゆうの春灯/森田峠

家建ちし春の門燈含羞めり/松山足羽

贈られし花環に燭や春の宵/中川四明

俳句例:141句目~

ためらはず瞠め春燈無慙にす/野澤節子

春燈の色違ひたる二間かな/正木ゆう子

灯の前にはにかむ妻や宵の春/西山泊雲

春の燈に笑みこぼれたる皓歯かな/麦南

灯の上の山に雉子鳴く春の川/飯田龍太

みほとけの淡き翳もつ春燈/長谷川蕗女

浜木綿の枯れしままなる春燈/岸本尚毅

春灯消せばおん母灯る胸の中/楠本憲吉

ベッドの灯に春の苺の屹立す/桜井博道

春灯の一つ一つに迎へられ/深見けん二

一夜照りし春灯の痩せ暁紅に/野沢節子

春燈の昼は消えをる市場かな/如月真菜

上海にあり春灯の下に在り/三宅清三郎

春灯眠りを椋ぐ乳子とゐて/上田日差子

仮縫のピンを鎧ひて春灯下/嶋田摩耶子

仰山に猫ゐやはるわ春灯/久保田万太郎

先斗町春灯洩るも洩らさぬも/西村和子

春燈くらし獄なりミチオヤム/橋本夢道

春灯の衣桁に何もなかりけり/清崎敏郎

卓上赤子祖父に眉似て春燈/磯貝碧蹄館

俳句例:161句目~

南吹いて灯に虫飛べる春浅き/富田木歩

春燈に抜き糸の中の紅を選る/金子篤子

春鮒を煮て隣より灯が遅れ/能村登四郎

喪ごころとなす峡の田の一春灯/岸田稚

地下室といへど華やか春燈/五十嵐播水

夜をふかす灯の下さらに春ふかし/柳芽

夜着いて燈はみな春や嵐山/波多野爽波

夢殿に灯の入りてより春の雪/茂里正治

大阪の灯に春愁を深めたる/片山由美子

天命といふ春灯に似たるもの/齋藤愼爾

娶る灯へ春の川波ひた押しに/大坪重治

子の眠る春燈父の病む春燈/深見けん二

寝れば子は重し味噌煉る春燈/宮坂静生

島々に灯をともしけり春の海/正岡子規

春燈として仏燈の暈のゆれ/鈴木六林男

島の灯の遠くに春の愁かな/植本/恵美

店たたむ春燈一つ切れしまま/館岡沙緻

待つ人のゐる明るさの春灯/片山由美子

春行くや苗一つ~しまふ燈に/渡辺水巴

文楽の春とはいへど灯影冴え/飯田蛇笏

俳句例:181句目~

春燈に美しき夢もつは自由/高田風人子

春燈の鈴ふるふごと点る路地/成田千空

春あさし饗宴の灯に果樹の靄/飯田蛇笏

春塵と見えし街の灯君は北ヘ/桜井博道

灯を卓に近づけ春の宵となる/高木晴子

灯を献じ春の神滝やさしかり/河野南畦

明けそめし春燈を消しまたねむる/篠原

燈濃き玻璃多き長屋ぞ春の月/香西照雄

爪染めて爪に春燈あそばせる/加藤雅伊

春暁や灯ともるに似て妻の鼻/小林康治

窓の灯の消えて綾なし春の泥/高浜虚子

細めても喪の春燈に変りなし/関戸靖子

縁に出て京の灯見ゆれ春星忌/田中王城

春燈や障子のそとは与謝の海/大野林火

春燈や長女の部屋は消えずをる/上野泰

若き尼御厨子に春の灯をささぐ/秋櫻子

春灯や言ひてしまへば心晴れ/星野立子

春灯を一人占めして夫の留守/西村和子

春めく灯あすの人参けふ洗はれ/草田男

行春の玉座加持の灯翳りけり/萩原麦草