「春蘭」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「春蘭」について
【表記】春蘭
【読み方】しゅんらん
【ローマ字読み】shunran
子季語・関連季語・傍題・類語など
・シナ春蘭(しなしゅんらん:shinashunran)
・ほくり(ほくり:hokuri)
・ほくろ(ほくろ:hokuro)
・はくり(はくり:hakuri)
・えくり(えくり:ekuri)
・報歳蘭(ほうさいらん:hosairan)
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季節による分類
・「し」で始まる春の季語
・「春の植物」を表す季語
・「仲春」に分類される季語
月ごとの分類
春蘭を含む俳句例
春蘭や雨雲かむる桜島/秋櫻子
春蘭や渡る他なき丸木橋/浦田宏
春蘭や野坂参三百歳に/柴野公子
春蘭の花とりすつる雲の中/蛇笏
春蘭や耳にかよふは竹の雨/草城
春蘭や尼に眉間の皺はなし/静塔
春蘭や雪崩の跡に土乾き/児玉小秋
若者の渇き春蘭水の辺に/細見綾子
春蘭に畳の埃とぶことも/吉井幸子
春蘭の裏庭にゐる媼かな/山本洋子
春蘭の風をいとひてひらきけり/敦
己が葉の影春蘭に濃かりけり/奈王
憂き日々にあり春蘭の薄埃/桂信子
春蘭のひともと陶の埃棚/伊藤敬子
春蘭の櫟の丘は伐られけり/和地清
春蘭やけんけん雉子も杉の奥/友二
春蘭や三十余年わが庭に/瀧井孝作
春蘭や杣とは違ふ足の音/和田祥子
春蘭の一鉢を先づ病床に/高濱年尾
春蘭や天城が降らす雲かぶり/青邨
俳句例:21句目~
春蘭や僧の客間に良寛像/関森勝夫
春蘭や山の音とは風の音/八染藍子
春蘭に山廬先生莞爾たり/植村通草
春蘭に松の落葉の深々と/川端龍子
春蘭や無名の筆の俗ならず/正岡子規
春蘭や奈落をいそぐ水の音/松本美簾
春蘭や日かげ勝なる山の寺/中川四明
春蘭の蕾もたぐる夕月夜/福田萬喜子
重湯飲めば春蘭の山河あり/相馬遷子
掘りきたる春蘭花をそむきあひ/立子
貧書斎春蘭花をあげにけり/富安風生
春蘭や暗きに打てる紙砧/水原秋櫻子
春蘭と蕨四五本とを得たる/岸風三楼
母の顔春蘭に重ね家郷恋ふ/原田孵子
春蘭は山の消息お見舞に/志子田花舟
春蘭に佇ち紅梅にふり返る/岸風三樓
杣出の渓春蘭のふるへをり/石原八束
春蘭活け吉川英治夫人の家/天野慶子
春蘭に狐のごとき花芽出づ/堀口星眠
春蘭を騒いで掘つて笹の山/岡井省二
俳句例:41句目~
春蘭のあえかの花に片時雨/行方克巳
春蘭や男は不意に遺さるる/飯島晴子
春蘭を今朝の新聞紙に包む/内山忍冬
春蘭の花茎ゆらし軍靴くる/松浦敬親
春蘭や香のかたちに香の灰/日野草城
春蘭の草に紛るる薄暮かな/隈加須奈
春蘭や雲の中にも殿の址/小澤満佐子
春蘭の固き蕾の解くる日を/田中冬二
春蘭や指を組みたる母の骨/栗林千津
春蘭の影濃くうすく昼しづか/桂信子
ひえびえと春蘭の土こぼれたる/下田稔
春蘭や実生の松にかこまれて/星野立子
葉の色に紛れ春蘭咲き初むる/下間ノリ
蔭の花春蘭の香に眼を見はる/臼田亞浪
春蘭と二月の雲のゆく下に/軽部烏帽子
春蘭の一鉢かくれなかりけり/後藤夜半
春蘭の匂ふ胎内くぐりかな/小形さとる
春蘭の咲きて使はぬ山の井戸/関戸靖子
春蘭の幾株か減り雑木山/阿部みどり女
春蘭の曾ての山の日を恋ひて/高浜虚子
俳句例:61句目~
春蘭の根を包みをる苔芽ぐむ/横光利一
春蘭の水の匂のほかはせず/後藤比奈夫
春蘭の花芽と信じ育てをり/水田ムツミ
春蘭の葉のとどめたる牡丹雪/野沢節子
春蘭や度々の行幸の神武寺に/尾崎迷堂
春蘭や徒食の爪はのびやすし/巌谷小波
淑気満つ春蘭の香を箸の尖き/安田鶴女
春蘭の花芽伸び来し鉢を置く/長井伯樹
春蘭や株ごとに持つ野の故郷/遠藤はつ
春蘭や秩父も奥のどんづまり/江口千樹
春蘭は日を吸ひ落葉日を返へし/上野泰
春蘭や記憶次第によみがへる/中村汀女
春蘭や学問ほどの不確かに/鳥居美智子
春蘭を得し素朴なる日を愛す/吉田草風
春蘭を掘たる山を眺めをり/深川正一郎
春蘭を掘り目隠をされてゐる/田中裕明
春蘭を掘る一株にとゞむべし/横田弥一
春蘭を移し植ゑたる庭の闇/加藤三七子
春蘭を穫て峡ふかき日を仰ぐ/塚原夜潮
春蘭を置いてゆきたる見舞人/高濱年尾
俳句例:81句目~
春蘭を踏み大靴の悪霊たち/八木三日女
ほくり咲き秋田支藩の武家屋敷/高澤良一
ドア開ける度び春蘭の匂ひ立つ/稲畑汀子
交りや春蘭掘りてくれしより/高田つや女
春蘭や滝の芯のみよみがへり/黒坂紫陽子
春蘭を掘り提げもちて高嶺の日/高浜虚子
春蘭やジャズの流るる異人館/中川/克子
春蘭や朝日集めてうすみどり/穂坂日出子
春蘭や雨をふくみてうすみどり/杉田久女
春蘭の花さみどりに母恋ひし/中村しげ子
春蘭に首をかしげてゐる男/出羽/智香子
春蘭に添えば消えてゆく痛み/本田ひとみ
松売りや根に春蘭をくゝりける/松瀬青々
春蘭の古葉剪らんと思ひつゝ/軽部烏帽子
花一つ持ちて春蘭掘られけり/大谷碧雲居
花現れし春蘭いだき屋上より/軽部烏帽子
春蘭にくちづけ去りぬ人居ぬま/杉田久女
春蘭やみだれあふ葉に花の数/高橋淡路女
雀ねらふ猫平然と春蘭嗅ぐ/長谷川かな女
雲深くして春蘭の濡れゐたり/池上浩山人