「春塵」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「春塵」について
【表記】春塵
【読み方】しゅんじん
【ローマ字読み】shunjin_
子季語・関連季語・傍題・類語など
・春の塵(はるのちり:harunochiri)
・春埃(はるぼこり:harubokori)
・砂じんあらし(さじんあらし:sajinarashi)
・砂あらし(すなあらし:sunaarashi)
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季節による分類
・「し」で始まる春の季語
・「春の天文」を表す季語
・「三春」に分類される季語
月ごとの分類
春塵を含む俳句例
春埃立てず拝見虚子の館/堀恭子
春塵や欅並木に映画館/西本一都
俳諧も紙の類なり春埃/竹本健司
子規堂の電燈の笠春埃/高澤良一
十字架の湾頭に舞ふ春の塵/原裕
春塵のひだ美しき仏達/大橋杣男
疾風行春塵溜り来る睫毛/石塚友二
春塵の同じ暗さへ退勤工/吉田鴻司
病人の耳滓春の塵として/嶋田麻紀
春塵や観世音寺の観世音/高野素十
新兵の靴引するや春の塵/尾崎紅葉
春塵の如き学問考古学/粟津松彩子
売れ残る干支の置物春の塵/渡辺晧
外套の裾切れ街は春埃/米沢吾亦紅
伝へ古る渾天儀あり春の塵/有働亨
酒少しすぎて唄あり春埃/河野南畦
拭ひたる卓に春塵棒立ちに/上野泰
裾払ふ折尺伸ばす春埃/米沢吾亦紅
老農の洗ふ眼鏡や春埃/中村草田男
春埃奉天に来て虹を見し/室生犀星
俳句例:21句目~
春埃拭ひ馴れつゝ卓の傷/高濱年尾
あな醜し肉附の面の春埃/山田みづえ
春塵の衢落第を告げに行く/大野林火
春塵の軽く揚りて経修理/池上浩山人
春塵の鏡はうつす人もなく/山口青邨
春塵も置かず遺愛の杯並べ/稲畑汀子
一悶着あるごと春塵払ひけり/森敏子
春塵やオゾンの穴を覗き見る/森須蘭
春塵や吾を見あげて妻の像/河野静雲
春塵や寸の仏も彫ふかく/大橋櫻坡子
多彩仏春塵仏と拝みける/赤松けい子
春塵をかぶり一億より出づる/松澤昭
掃きよせし春塵の中針光る/橋本鶏二
春塵を虹でおさへて撒水車/土生重次
時折に春塵の立つ風情のみ/京極杞陽
黒豚の春塵まみれ杜甫の国/毛塚静枝
三笠山見る面上に春の塵/吉岡禅寺洞
仏壇の宙に生きもの春の塵/鷹羽狩行
華鬘なる花鳥雲に春の塵/佐々木六戈
春塵に心まみれて帰りけり/中村苑子
俳句例:41句目~
春塵に押され大阪駅を出づ/辻田克巳
春塵のたぐひの一つわが句屑/外城恒
春塵の分厚く赤茶け煤仁王/高澤良一
春塵の壺の一つを愛すかな/三島汲水
春塵の没日音なき卓を拭き/加藤楸邨
春埃わづかの道を来てすでに/高濱年尾
けだるさやピアノの上の春埃/筑間美江
春塵やふくさかけたる謡本/藤田春梢女
地球儀の世界を覆ふ春の塵/浅見まき子
先生やいま春塵に巻かれつつ/岸本尚毅
春塵をつけて妻と子戻るべし/高橋沐石
友欲しきとき春塵が橋渡る/田川飛旅子
鏡台をたま~縁に春の塵/阿部みどり女
春埃そつと拭いたる子の遺影/吉田きみ
春埃り髪につけをり女香具師/宮武寒々
春塵に舌の根かわく閻魔王/葉狩てる子
春塵の近江に貨車を放ちけり/斉藤夏風
春塵をやり過したる眉目かな/高浜虚子
春塵と見えし街の灯君は北ヘ/桜井博道
春塵や病めば後るゝことばかり/泉春花
俳句例:61句目~
春塵の耳を洗へば今日はるか/細川加賀
帰り来て耳に東京の春の塵/猿橋統流子
春塵に息浅くして魚のごとし/野沢節子
病消えてまた町医たり春の塵/相馬遷子
筆の穂にかかりて紅き春の塵/橋本鶏二
春塵や水路工事の遅々として/倉内法子
踏まれゐる邪鬼につもれる春埃/野村美恵
春塵を積みザヴィエルの面の創/有馬朗人
春塵にたかぶり人とけものどち/石橋秀野
春塵の中でベレーの塵はたく/佐野まもる
春塵の一本松よ眸あぐるたび/永井よしい
葬につどふ人に春塵濃き日なり/大橋敦子
春塵のかたづけさせぬ机上かな/石川予風
春塵のいづこに住居もつべしや/高橋沐石
春塵や東京はわが死にどころ/鈴木真砂女
ふるさとの春塵の道ひかりをり/秋山素子
投票をしるすに春の塵ざらざら/横山白虹
かなしき日春塵の厨拭いて寐る/草村素子
春埃無能の自影でうるほふかに/香西照雄
春塵と吹かれて重き歩みかな/石田あき子
俳句例:81句目~
春塵の玻璃に展示の能衣裳/長谷川かな女
橋が明日へ源知らぬ春塵どか/磯貝碧蹄館
春塵やこころの馬鹿のトルストイ/平井照敏
春塵の巷にありて機屋かな/五十崎古郷句集
友に会はん春塵かぶる駅のポスト/桜井博道
老いて読むつもりの本や春の塵/北見さとる
春塵に眼をしばたたき繋ぎ馬/阿部みどり女
春塵やいつひろごりし生活の輪/久保田万太郎
戦没学徒ら透明に群なし春塵駆く/磯貝碧蹄館
をとめごの春埃のなかにふとりけり/室生犀星
春塵をひそめたなごのつやゝかに/『定本石橋秀野句文集』