俳句例:101句目~
極月の柚子垂る錦鶏鳥の上/佐野美智
梅鶯の南部坂聴き早や師走/高澤良一
師走とて刷ろはむ翼もなし/石塚友二
禿山を師走の町へ下りけり/寺田寅彦
建長寺さまの托鉢来て師走/宮下翠舟
影淡き師走の寺や笹子鳴く/角川春樹
痩法師師走の質屋覗きけり/渡辺香墨
師走圏外金色を経て一紫雲/香西照雄
大黒の小槌の塵も師走かな/加藤耕子
鳴らし売る防犯ベルや町師走/中火臣
旅衣あでに師走の女衒かな/石原舟月
新しく溝板かへて路地師走/菖蒲あや
獨身の文で物買ふ師走かな/幸田露伴
女を見連れの男を見て師走/高浜虚子
かく多き人の情に泣く師走/相馬遷子
くわん~と炭火おこれり師走店/篠原
極月の投石水に届かざる/宇多喜代子
海広し師走の町を出離れて/正岡子規
旅寝よし宿は師走の夕月夜/松尾芭蕉
風呂吹や師走の闇を鬼女の影/中拓夫
俳句例:121句目~
極月の扶持乏し筆氷るまで/小林康治
極月の常と変らぬ朝の街/中島よし絵
電話鳴る度に心の師走かな/小川修平
師走記者筆の疎略を慎まん/吉井莫生
瞑りて師走半ばの世の音か/相馬遷子
山陵の壱歩をまはす師走哉/榎本其角
師走尽友をたづねて白き飯/栗生純夫
極月の山彦とゐる子供かな/細川加賀
枯木折る音や師走の崖の上/内藤吐天
愧かしき三百余日師走かな/喜谷六花
月白き師走は子路が寝覚哉/松尾芭蕉
浚渫の師走雨降る水の上/鈴木六林男
そら死や師走の町の酔倒れ/尾崎紅葉
極月の水を讃へて山にをり/茨木和生
極月の子を守る嫗と貝殼虫/松村蒼石
極月の深井戸母の声がして/中村苑子
極月の火に煽られて中華鍋/高澤良一
極月の白晝艶たるは海の藍/飯田蛇笏
極月の石の一つが道しるべ/村越化石
鮎やつれゐし極月の熊野川/茨木和生
俳句例:141句目~
獅子舞や師走の空の雪催ひ/富田木歩
篁や師走の月のかけりざま/高井北杜
極月の喪服の冷をまとひけり/樋笠文
街をゆく師走心にほど遠く/高木晴子
極月の虫歯の深く奥へかな/如月真菜
行灯の陰に市ふる師走かな/水田正秀
日曜の出勤もはや師走なる/長野深郷
極月の路地深く来る箒売り/菖蒲あや
極月の郵便配るアルバイト/中村居月
極月の都会に来り籤を買ふ/加藤芳子
極月の雪ほぐしをり善光寺/西本一都
極月の頭上でさわぐゆで卵/栗林千津
蕪村忌や師走の鐘も合點だ/村上鬼城
極月の魚貝ひそめる岩生簀/小野喬樹
極月やきらきら垂れて韓の服/辻桃子
極月やほうと立ちたる芥の火/岸田稚
極月や一流水にも遅速あり/北野民夫
荒馬の師走の牧の寒さかな/斯波園女
極月や尚未知の日のある暦/三浦恵子
極月や摘みて匂はぬ芹だまし/有働亨
俳句例:161句目~
極月の卵をつつむ新聞紙/小島千架子
極月や朝を勝負の魚市場/鈴木真砂女
極月や桝目のからき小売塩/飯田蛇笏
水仙にたまる師走の埃かな/高井几董
水仙や早稲田の師走三十日/夏目漱石
極月や雪山星をいただきて/飯田蛇笏
極月や魚のぬめりの夜の巷/榎本愛子
極月の人の温味のある紙幣/片山桃史
決意などなし極月の海に来て/伊藤梢
片隅に正座を強いる喪の師走/渋谷道
予定なき師走の客の応対に/松尾緑富
極月の一閑日を子の家に/下村ひろし
軒に薪積んで師走の軽井沢/佐川広治
織田作碑見て極月の繁華街/大橋敦子
極月のひと日濤立つ風の音/矢野芳湖
色見えてをり極月の風車/鳥居美智子
酔の尾や極月の貧躱しえず/小林康治
風しづまりし極月の林かな/石原舟月
耳鳴るや師走を寝よと賜ふ風邪/及川貞
川痩せて師走の町を流れたり/相馬遷子
俳句例:181句目~
市に暮るゝ師走の人の眉太し/島田青峰
師はひとり痩身の師の師走また/河野薫
師走かな餅つく音の須磨の浦/野澤凡兆
師走すぐ目の前にして急く心/高浜年尾
師走ぞと呵る妻あり舌ありや/高井几董
師走てふ物入り月が目の前に/高澤良一
耳塚の前ひろびろと師走かな/川端茅舎
師走の分野是かや春の物狂ひ/榎本其角
老體や師走や而もおなかうど/尾崎紅葉
海彦と遊んでゐたる師走かな/池田秀水
節季候の来れば風雅も師走哉/松尾芭蕉
王孫を市にあはれむ師走かな/子規句集
師走の身触れあふ緋鯉長挨拶/香西照雄
炭賣に日のくれかゝる師走哉/蕪村遺稿
師走六日初雪消えて髭のびて/林原耒井
師走六日母に文書く暇得たり/林原耒井
師走妻算盤はじく眼をしたり/高澤良一
師走妻風呂敷にある稜と丸み/香西照雄
師走某日壺の酒欲る恋ごころ/萩原麦草
師走街ゴーストップの今は青/高木晴子