俳句例:101句目～
白雲を吹き尽したる新樹かな/椎本才麿
新樹に鴉手術室より血が流れ/西東三鬼
夜の乳房重く新樹に雨降れる/菖蒲あや
眉きよく壮年が耀る新樹林/柴田白葉女
一掬の新樹の翳を掌握す/竹下しづの女
一斉に新樹の鰭のはためきぬ/櫂未知子
月蝕の夜の新樹に旅衣ぬるる/森川暁水
新樹中飴ねばる指なめてやる/古沢太穂
亭々の灯るも新樹がくれなる/岸風三楼
新樹曇りて朝より重き頭かな/島田青峰
肌に触る風しばしば新樹なり/横光利一
新樹光神の蝋涙をまのあたり/松村蒼石
背の児のこぶしが握る新樹光/中村圭作
伝書鳩新樹の森へ降りられず/大石雄鬼
板屋根に蛇這ひ下る新樹かな/会津八一
新樹より一銀嶺に眼を飛ばす/古舘曹人
花嫁の父の背越しの新樹光/伊藤いと子
午砲鳴れば新樹の空に耶蘇の鐘/瀧春一
友とせば新樹の心得るものや/細谷源二
新樹の日厚朴の葉脈ありありと/瀧春一
俳句例:121句目～
術痕の湯に透きとほり新樹影/高澤良一
議事堂の囲まれてゐる新樹かな/坂井建
新樹光祷りのときに迷ひあり/石原八束
遠ちまでの新樹の道に涯ありや/及川貞
野の欅新樹と呼ばむ時過ぎぬ/林原耒井
図書館は坂の上なる新樹かな/高木喬一
城はただ仰ぎ新樹を歩くべし/稲畑汀子
陵のつむりのまろき新樹かな/石田勝彦
新樹の日失はん鳥の叫びかな/中島月笠
雉子鳴いて新樹一斉に雫せり/相馬遷子
夜の新樹すこしの酒に胸さわぐ/桂信子
夜の新樹旅に華やぐ妻の声/岩田沙悟浄
雲行けば新樹を渡る光あり/池内友次郎
夜の新樹父として読む性の本/中山良章
夜の新樹生るる牛に灯を運ぶ/中村房子
雷又雷尾根の新樹を震はせて/高澤良一
順序よき子の誕生日夜の新樹/都筑智子
風ありて新樹淋しき大路なり/内田百間
大粒となりて新樹を襲ふあめ/高澤良一
高々と松に風吹く新樹かな/大谷碧雲居
俳句例:141句目～
太陽と風と新樹の園生かな/成瀬正とし
新樹光花咲蟹とはおもしろや/巌谷小波
新樹ゆきくろき仏ををろがめる/桂信子
鷺いどむ新樹の匂ながれたり/渡邊水巴
新樹光風のおこりて塔の尖き/石原舟月
掃きながら新樹出て来る女かな/清原枴童
新樹光産湯に伸びて子のふぐり/今瀬剛一
しつとりと夜の新樹の幹ぬれて/橋本鶏二
せわたりのしれぬ小村の新樹かな/蒼きう
月光に聳りたちたる新樹かな/五十嵐播水
ひそかなるものに夜の沼夜の新樹/有働亨
みはるかす塔も新樹も雨の中/八幡城太郎
水漬きつゝ新樹の楊真白なり/水原秋櫻子
オムレツのやうな薄黄に新樹山/高澤良一
新樹山臨みてアイスミルクかな/高澤良一
ニュートリノ天網を抜け新樹山/高澤良一
新樹照るや罫こま～と原稿紙/大谷碧雲居
バスの窓新樹たまゆらしかと位置占む/梵
月蝕のいまは星のみ新樹の温泉/森川暁水
新樹の中背丈は伸びねど望湧く/香西照雄
俳句例:161句目～
五十鈴川新樹の雨のささ濁り/深見けん二
人に会ふ指環に新樹たちこめて/古舘曹人
人間に尾のあと残る新樹の夜/和田耕三郎
仰ぐ木となりたり被爆地の新樹/朝倉和江
写生して山の新樹のもくもく感/高澤良一
出湯出づ脛のすうすう新樹冷え/高澤良一
吹き起こる風に新樹が新樹押す/高澤良一
哭きに出て夫の匂ひの夜の新樹/関戸靖子
喪の家に新樹の風の強く吹く/波多野爽波
四阿の屋根葺き替えて新樹濃し/吉屋信子
夕空に新樹の色のそよぎあり/深見けん二
新樹の窓に高々とある書生かな/河野静雲
新樹の道雪嶺に向き背まつすぐ/細見綾子
夜の新樹詩の行間をゆくごとし/鷹羽狩行
夜の新樹高しと思ひ眠りけり/藤本草四郎
大いなる新樹のどこか騒ぎをり/高濱虚子
大風に湧き立つてをる新樹かな/高浜虚子
安達太良へ怒濤の如き新樹かな/杉山岳陽
家の内も雑木新樹のかげ射しぬ/右城暮石
山の音すひこまれたる夜の新樹/高木晴子
俳句例:181句目～
耳朶やわきダムの新樹ら青幾色/寺田京子
恋ひ来しは恵那なる新樹杣と語る/及川貞
燭光や地獄にのびて新樹の根/鈴木六林男
背黒鶺鴒新樹を過る時しろし/小松崎爽青
師道険し新樹の直枝左右に迫り/香西照雄
牧の山羊新樹の影を得つつあり/石田勝彦
菅笠へ新樹の雨ののびて落つ/池内友次郎
島をもて神とし斎く新樹かな/大橋越央子
新樹風湯ぼてりの頬撫でゆけり/高澤良一
幸疑ふかにまばたきや新樹の下/香西照雄
新樹風鳶の尾舵のあきらかに/五十嵐播水
目の前の山の新樹の吹かれやう/高澤良一
盲らの新樹の風を打ち仰ぎ/阿部みどり女
鼓打ち新樹の木魂呼び下ろす/上野さち子
阿蘇も火を噴くと新樹のきのふけふ/羽公
激つ瀬は夜目にも白き新樹かな/茂里正治
新樹林木の性質のこと話しゆく/高澤良一
釣人の籠のひょこひょこ新樹谿/高澤良一
雨あがりつゝ風あらき新樹かな/高濱年尾
新駅の完成新樹のニユータウン/金堂豊子
