「茂」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「茂」について
【表記】茂
【読み方】しげり
【ローマ字読み】shigeri
子季語・関連季語・傍題・類語など
・繁茂(はんも:hammo)
・繁り(しげり:shigeri_)
・茂る(しげる:shigeru)
・茂し(しげし:shigeshi)
・茂み(しげみ:shigemi)
・茂山(しげやま:shigeyama)
・茂野(しげの:shigeno)
・茂り葉(しげりば:shigeriba)
・茂林(もりん:morin)
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季節による分類
・「し」で始まる夏の季語
・「夏の植物」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
茂を含む俳句例
嵐山藪の茂りや風の筋/芭蕉
沈黙の茂り蔓草奔放に/滝春一
茂りけり乞食が森の下竈/調和
蜀魂門は胡桃の茂りかな/木導
かちととぶ髪切虫や茂中/虚子
混浴や漁樵声出す茂より/青畝
玉鉾の里の茂りや浮世杖/調和
松虫や兎の道の茂りあふ/野狂
旧道や人も通らず草茂る/子規
草茂る要塞砲を毀たれて/誓子
草茂る空鬱々と古墳群/中川糸遊
蜩や茂みの中は古き池/野村喜舟
茂山やさては家ある柿若葉/蕪村
藪際や水仙の葉のやゝ茂り/篠原
茂るさへ淋しきものを枯葎/太祇
樫茂る手垢だらけの解剖書/林徹
本陣の定紋残し草茂る/木村蕪城
茂みなほ黒く朝の海に沿ふ/篠原
葛村の茂平次寄進露の磴/飴山實
尚奥へ寂光院は茂り中/堤俳一佳
俳句例:21句目~
葎のみ茂り戦跡崖残す/北野民夫
萩芒縁まで茂る燈籠哉/小澤碧童
菖蒲刀砥水の沼に茂りけり/調古
松茂る黄檗山の氷かな/岸本尚毅
墓原や墓低くして草茂る/正岡子規
あやめ草加茂の仮橋いま幾日/嵐雪
夏の月牛蒡畠の茂りかな/山本村家
夏草の溝越え茂る街汗す/横光利一
夕映えや茂みの漏るる川の跡/丈草
蕗茂る畑を均して地鎮祭/岩下幸子
蕗茂る木曾にも隠れ切支丹/杉本寛
津の柳茂り極めぬ雲の峯/野村喜舟
篠の露袴に掛けし茂り哉/松尾芭蕉
蓮の香や深くも籠る葉の茂/炭太祇
秋青き茂りや被爆中心地/石塚友二
秋近き梶の茂りや天の川/松瀬青々
法師蝉茂り疲れし老柳/百合山羽公
寒菊や茂る葉末のはだれ雪/炭太祇
菅笠や草の茂りの坊主持/水田正秀
石段の一筋長き茂りかな/夏目漱石
俳句例:41句目~
形骸の旧三高を茂らしめ/平畑静塔
ややあれば茂り離るる風の筋/汀女
小雨降る池の小径や草茂る/枌御許
山茂る耶馬臺國を謎のまま/上村占
草茂る忠魂碑跡母校なる/広瀬一朗
草茂る寺門に仰ぐ武田菱/木村蕪城
左手に蝉山茂る速球投手/攝津幸彦
牧牛は遥かに散りて草茂る/滝峻石
幻の添水見えける茂りかな/泉鏡花
柏槇の茂み宿りの雨の鵙/高澤良一
庄内の米蔵ならぶ大茂り/和田祥子
金屋の小茂りゆかし郡山/松瀬青々
静かにも病者の彼方茂りたる/龍太
教會の塔聳えたる茂り哉/寺田寅彦
栃茂り光芒あをき奥の滝/岡田貞峰
校庭に十薬茂るわが戦後/桑原三郎
聖堂の門に槐の茂りかな/渡辺香墨
茂る葉の中にまぎれず顔と顔/蝶夢
茂り合ふ草に旱の埃かな/尾崎紅葉
元湯とて一軒のみの茂りかな/実花
俳句例:61句目~
光りあふ二つの山の茂りかな/去来
十字架に旭の光る茂り哉/寺田寅彦
昏々と眠り半身茂るかな/鳴戸奈菜
茂りに入る鳥は虔む姿して/林之助
孔孟の国の実生の楷茂り/福田蓼汀
古池の小隅明るき茂り哉/角田竹冷
樫茂る念力巌の如くなり/藤田尚平
園茂み傘に飛びつく青蛙/正岡子規
庭茂りすぎしといふも一風情/安原葉
虎杖や蝦夷用水の辺に茂り/高濱年尾
うぶすなの昔の榎茂れども/臼田亞浪
蘆茂り岬に遺るアイヌ砦/太田ミノル
蔦茂り壁の時計の恐しや/池内友次郎
蓮茂る中へ舳をすゝめけり/野村泊月
この庭の柿より茂りはじまりぬ/立子
蓬薊これより草の茂るかな/尾崎迷堂
しんしんと夜の光の草茂る/川端茅舎
引潮に酸模の茂り人の声/河野多希女
草茂る舟小屋葛の蔓も延び/村上冬燕
草茂る空の煉瓦の貯水槽/小山今朝泉
俳句例:81句目~
御用箱ちまたの葵茂りけり/椎本才麿
草茂る中洲や雨後の水の嵩/石塚友二
草茂り草の類ひの木の茂り/後藤夜半
草花を圧する木々の茂かな/子規句集
草山の谷間に槇の茂りかな/野村泊月
蕨手の長けし茂りとぞ思ふ/中原道夫
牧場の中に大樹の茂りかな/野村泊月
曾遊の友と憩ひし茂りかな/寺田寅彦
火炎樹の広き茂りや祈りの刻/杉本寛
光茂が膠兀げたる火桶かな/黒柳召波
苗代に日々茂り行く柳かな/籾山柑子
神々と春日茂りてつづら山/上島鬼貫
滝水の流れを更へて葛茂る/河野南畦
大阪の煤によごれて芦茂る/富安風生
夭折のかほありありと草茂り/中田剛
滝案内茂の中に入らんとす/野村喜舟
茂り山伐り山狭霧棚引けり/瀧井孝作
低山の茂り寂しく炎えにけり/瀧春一
家貧に茂りもあへす麦門冬/尾崎紅葉
夏草そこまで茂り母といる/橋本夢道