「沙羅の花」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「沙羅の花」について
【表記】沙羅の花
【読み方】しゃらのはな
【ローマ字読み】sharanohana
子季語・関連季語・傍題・類語など
・夏椿の花(なつつばきのはな:natsutsubakinohana)
・ひめしゃら(ひめしゃら:himeshara)
・さらの花(さらのはな:saranohana)
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季節による分類
・「し」で始まる夏の季語
・「夏の植物」を表す季語
・「晩夏」に分類される季語
月ごとの分類
沙羅の花を含む俳句例
夏椿水琴窟に水使ふ/乾/節子
曲水や後手突いて夕日山/沙羅
山水の音に四五人夏椿/岡井省二
追憶の波郷は優し沙羅の花/沢聰
葉の色に白は淋しき夏椿/高木晴子
よみがえる一瞬昏き夏椿/高澤晶子
蕾みては百の小坊主夏椿/高澤良一
木曾殿に一日花の沙羅白し/有働亨
掃苔の桶も帚も沙羅の雨/木田一杉
一瓣の紅さへ沙羅の夕かげり/林翔
夏椿今日も安楽椅子に夫/豊島美代
夏椿大佛のまゆかたに白/和知喜八
夏椿峡の湯岩古くなりぬ/横光利一
たっぷりと朝の気含む夏椿/稲辺美津
潔斎の僧が籠れる沙羅の花/津田清子
わが傘の滴も沙羅の落花打つ/岸善志
一筆の円を茶掛や夏つばき/荒井正隆
償いはしてもらいます夏椿/大西泰世
沙羅生けて平水指の朝茶かな/及川貞
夏椿落花こんなに雨止まず/高澤良一
俳句例:21句目~
夏椿一輪が守る虚子の墓/鈴木真砂女
拓本涼し紙透き出づる沙羅の詩/林翔
人われは言葉恥ぢらふ沙羅の花/林翔
冥界も茜さすらむ沙羅の花/若林小文
刹那てふ刻を重ねて沙羅落花/林直人
十日月沙羅の蕾は明日開く/正田稲洋
沙羅の葉に月の雫す涅槃像/吉富無韻
沙羅の花少女の髪の掌に余り/橘彰子
舌のみぞ知る夏椿辛きこと/攝津幸彦
沙羅の花咲く家潰す鉄の爪/田島蔦子
師逝きし早暁沙羅の花未だ/嶋田麻紀
庭石に影を遊ばす沙羅の花/影島智子
送行の笠抱へ立つ沙羅の庭/桑原光果
籠堂下りくる僧や沙羅の雨/村上荻風
白粥や沙羅の落花と一卓に/村越化石
白河に近き水音沙羅の花/鳥居おさむ
天界へ咲きつぐ沙羅の花のいろ伊丹公子
一夜寝て一夜うしなう夏椿/小池万里子
沙羅の花踏み白面の僧なりし/小倉由紀
夏椿咲きそめて子に婚期来る/茂恵一郎
俳句例:41句目~
夏椿御廟を守りて咲き出でぬ/石井桐陰
沙羅の木に寄るや声添ふ夏鴬/村越化石
掌をすぼめるやうに夏つばき/高澤良一
散るための雨を吸ひをり夏椿/高橋栄子
聴きなれしピアノの底に夏椿/田中信克
自死といふことの悲しや夏椿/河野友人
御僧と久闊沙羅は咲きゐるか/田村木国
肉体を離れてしずか沙羅の花/高澤晶子
下草にのりて明るき沙羅落葉/高木晴子
洗はれて朝の嶽濃し沙羅の花/矢島渚男
沙羅の花波間に蟹の沈むかな/岸本尚毅
沙羅咲きて一燈もるる持仏堂/細川螢火
沙羅咲いて花のまはりの夕かげり/林翔
仰ぎ見る間も光曳き沙羅落花/山本松子
沙羅の花耀くは風あるらしき/高木雨路
沙羅落花曙覧の国に来て拾ふ/浦野芳南
別れ来し人に文遣る沙羅の雨/西村和子
一の枝のことに夢咲き沙羅の花/赤松子
御佛を仰ぐ高さに沙羅の花/佐藤美恵子
沙羅の散る音は浄土に還る音/宮崎稔子
俳句例:61句目~
咲く沙羅のしづもり人の貌暮れぬ/林翔
沙羅の花曉より燻ゆる常香盤/茂里正治
沙羅落花齢ひつさぐるに似たり/岡本眸
飛石のほどよき湿り沙羅の花/西畑幸子
坪内の沙羅の芽吹の雨に濡れ/高木晴子
壺中より窺う天や沙羅万朶/宇多喜代子
夏寒き白根の風に沙羅咲くか/村越化石
時国家門扉閉ざせり沙羅の花/千田一路
小雨中一花を灯し沙羅の花/西島美代子
天界のものとし拾ふ沙羅落花/井沢正江
沙羅落花して白汚れなかりけり/稲畑汀子
沙羅落花大地に梵字こぼすかな/大橋敦子
夏椿こらへかねたる白さかな/佐藤美恵子
石塔寺韓のほとけに沙羅咲けり/水垣暁子
風過ぐるごと夏つばき花了へぬ/高澤良一
見て覚え見て覚え今日沙羅の花/後藤夜半
音立てて落花の沙羅の辺に睡る/伊丹公子
頬杖という杖ふくよかに沙羅の花/澁谷道
鴻毛の真白き沙羅をひろひけり/本多静江
わが声音母より承けし沙羅の花/鈴木貞雄
俳句例:81句目~
一日の花とし沙羅の散る夕べ/大間知山子
一花拾へば一花の匂ひ沙羅の花/吉野義子
井戸水のつめたき朝に沙羅ひらく/上村占
僧に乞ひ沙羅の花剪る朝湿るを/大野林火
和紙よりも縮れ微妙に沙羅の花/山下美典
咲く花も落ちたる花も沙羅清浄/下村梅子
地に落ちて花びらの錆沙羅の花/沢木欣一
夕空の紺よみがへる沙羅の花/大槻紀奴夫
天界に待つ人増えて沙羅の花/伊丹三樹彦
子につきて美容体操沙羅の花/石田あき子
安息のほのかに白し沙羅落花/千代田葛彦
山寺夜明沙羅の花より顕われて/伊丹公子
散るために病院に来し沙羅の花/朝倉和江
有情無情沙羅の花さき花散るも/安沢阿弥
桃色沙羅受ける諸手を器とし/伊丹三樹彦
死者生者涼めとここに沙羅一樹/村越化石
残生はあるがままにと沙羅の花/増田治子
水よりも地に翳りあり沙羅の花/伊藤柳香
齢一つ享けて目つむる沙羅の花/手塚美佐
沙羅の花十年詠つて十年老ゆ/伊丹三樹彦