季語/蝉(せみ)を使った俳句

俳句例:101句目~

露の幹静に蝉の歩き居り/高浜虚子

霙せり蝉折といふ笛ありて/中田剛

昼頃の蝉の峠の茶屋日覆/清原枴童

樹に眠る蝉一点の熱帯夜/対馬康子

蝉のこゑ加はりて森新鮮に/横田泉

板の間にへた~寝るや蝉の声/鳳朗

雲の下飛ぶ雨雲に狂ひ蝉/石塚友二

こほこほとなる神遠し蝉の声/几董

蝉に遠く蛙に近し裏二階/子規句集

蝉に蝉声加へゆく切通し/都筑智子

晩涼や蝉落ちまろぶ石畳/木下夕爾

全山の蝉の鳴き止む消火栓/長田等

雲のぼる六月宙の深山蝉/飯田龍太

凩や蝉も栄螺もから許り/正岡子規

隠国の長谷一山の蝉時雨/亀井新一

降晴て杉の香高し蝉の声/加舎白雄

降りかけの雲慌し昼の蝉/臼田亞浪

初蝉のふと銀箔を皺にせる/澁谷道

初蝉の団十郎に学ふかな/尾崎紅葉

閑かさや岩にしみ入る蝉の声/芭蕉

俳句例:121句目~

初蝉の耳まで来たる暑哉/横井也有

哲人の風貌しかと蝉の面/高澤良一

熊蝉の声より晴れて磯馴松/村岡悠

長雨にことし少き蝉の穴/高澤良一

引継もいと簡単に楠の蝉/高澤良一

銀製の蝉を埋めて父とは忘却/林桂

初蝉や鉛筆削よく切れる/野村喜舟

逢坂やいとどせきあふ蝉の声/智月

逢坂の夜の暗さや蝉丸忌/中島曾城

桐の木や雨のながるる蝉の腹/梅室

暁の蝉がきこゆる岬かな/前田普羅

蝉と妻いづれ短命昏みつつ/斎藤玄

原稿紙白し蝉声波紋なす/野澤節子

友二先生夫妻に万の山の蝉/岸田稚

御鏡に曠古一瞬蝉しぐれ/石塚友二

蝉とんで木蔭に入りし光かな/虚子

退屈な鉛筆削り蝉時雨/増田河郎子

心頭を滅却しても蝉時雨/野中亮介

吃々と蝉の前奏推敲成る/香西照雄

石原に蝉落ち居けりいまの雨/召波

俳句例:141句目~

身に貯へん全山の蝉の声/西東三鬼

忍辱の鎧に蝉の啼き通す/高澤良一

足は百姓顔は學生蝉時雨/津田清子

諸蝉の声に独りの夏深む/藤森成吉

月代にゆめ見て飛ぶか蝉の声/正秀

月光に椽の蒼みし蝉の穴/小山森生

唖蝉の鳴かぬ梢もあはれなり/杉風

蝉鳴けり家の一角を湿る風/中拓夫

息長き蝉ごゑを籠め墓の穴/岸田稚

蝉鳴くや麦を打音三ゝゝ/服部嵐雪

橙青き丘の別れや蝉時雨/横光利一

蝉鳴くや行水時の豆腐売/子規句集

蝉鳴くや梢に煙る浅間山/藤野古白

蝉しぐれ寄進杉苗拾萬本/高澤良一

喚く蝉二百億劫経て成佛/高澤良一

蝉餐食す梢の風の二三寸/尾崎紅葉

喫泉に百万石の蝉しぐれ/田中英子

機関車の骨格太し蝉の暁/近藤一鴻

地の蝉冷たし夜桜の国麦の国/林桂

城山にあり弾の穴蝉の穴/品川鈴子

俳句例:161句目~

堂縁に一つ載せあり蝉骸/高澤良一

棚経や蝉の羽衣煽ぎけり/前川素泉

蝉穴を鴉の次に覗きけり/牧石剛明

朝の蝉わく藍つよき箸置も/中田剛

声かれて蝉一本の濡れ仏/古舘曹人

蝉穴の暗き貫通ばらの寺/西東三鬼

蝉稚し山色翅にみなぎらせ/金子潮

水面に油紋のみどり蝉の昼/桂信子

荒御霊に大樹が降らす蝉時雨/林翔

夕立や降りそそくれて蝉の声/游刀

夕蝉に鶏頭がまづ暮るるなり/林火

蝉涼し朴の広葉に風の吹く/碧梧桐

森の蝉すずしきこゑや暑き声/乙州

蝉涼し山の泉のひとゝころ/上村占

蝉涼し仏足石に供へ米/冨田みのる

夕蝉の息やはらかし越のくに/照子

蝉涼し一路直ちに山門へ/石井露月

夕蝉の水明り舟岸に着く/石井露月

提灯にばさと夜蝉や迎鐘/谷川朱朗

森深く蝉八百の眼瞠きて/高澤良一

俳句例:181句目~

摘草や蝉嬋として人の指/山口青邨

蝉止まる所に拘る太郎杉/高澤良一

夕蝉や嫋々として飛騨訛/大野林火

夕蝉や昆虫館に灯りし火/後藤夜半

夕蝉や野分がのこる岨の竹/及川貞

夕蝉や黙して對ふ癌患者/相馬遷子

断水の家の表も裏も蝉/井上比呂夫

方便の一つに蝉の小便も/高澤良一

法悦の蝉夕刊のとどく刻/中山純子

熊蝉の焦躁見えて栗大樹/堀口星眠

蝉時雨急に近づき接岸す/西村和子

聖壇の光陰へだつ蝉時雨/橋本榮治

蝉時雨岩屋それぞれ仏さま/杉本寛

蝉の胸時計の内部覗くごと/高澤良一

あすなろに鎬を削り始む蝉/高澤良一

蝉の穴覗く故郷を見尽して/中村苑子

いちにちの省略の刻蝉時雨/三木照恵

蝉の穴覗き行く末漠然と/殿村莵絲子

渚ゆく鉄路しづかなる朝蝉/田中裕明

爽涼の蝉一吟にをはりけり/佐藤国夫