「甘藷」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「甘藷」について
【表記】甘藷
【読み方】さつまいも
【ローマ字読み】satsumaimo
子季語・関連季語・傍題・類語など
・藷(いも:imo)
・唐藷(からいも:karaimo)
・琉球薯(りゅうきゅういも:ryukyuimo)
・薩摩薯(さつまいも:satsumaimo_)
・島いも(しまいも:shimaimo)
・蕃薯(ばんしょ:bansho)
・紅薯(こうしょ:kosho)
・甘藷掘(いもほり:imohori)
・甘藷畑(いもばたけ:imobatake)
・藷蔓(いもづる:imozuru)
・甘藷の秋(いものあき:imonoaki)
・干藷(ほしいも:hoshiimo)
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季節による分類
・「さ」で始まる秋の季語
・「秋の植物」を表す季語
・「仲秋」に分類される季語
月ごとの分類
甘藷を含む俳句例
草市や僅に細き甘藷/野村喜舟
黒島の藷の畑に時雨虹/松藤夏山
猪の鼻が藷掘る無月かな/龍岡晋
稀の栗愛でたし常の藷親し/瓜人
秋風や甘藷酒通す咽仏/野村喜舟
藷腹に軽き飢あり示現流/橋本榮治
藷畑にただ秋風と潮騒と/山本健吉
日の沈む地平線まで藷畑/本間登世
藁担ぎ来て甘藷穴の霜覆/根岸善雄
海近き夜明の藷の畝が冷え/中拓夫
下顎を動かし食らふ熱き藷/森澄雄
月明の箸を逃げたる甘煮藷/斎藤玄
柳川や汲水場に洗ふ走り藷/有働亨
島畑の藷蔓のみや戻り籠/石丸恭子
疎開地の機銃掃射の藷畑/高澤良一
冬空へ打つ甘藷の鳥威し/太田土男
甘藷畑の崖下に紺日本海/茨木和生
走り藷少し並べて朝市女/柿島貫之
甘藷蔓を捨てゝ肥とす島の畑/森田峠
春鹿も所詮貧しう藷食へり/原コウ子
俳句例:21句目~
甘藷配つ街裏大河流れたり/中島斌男
内閣改造甘藷包みし新聞紙/星野禎三
空海のまるみを土の中の藷/大坪重治
利心も漸く失せて藷旨し/相生垣瓜人
粗壁に夕日が射して甘藷煮ゆる/柏禎
藪ふかく甘藷竃古る華鬘草/富安風生
南大門址の藷掘り起す頃/百合山羽公
古墳近し甘藷掘って丘丸裸/右城暮石
樹々多き町富田浜甘藷分つ/山口誓子
欸欸の終焉の島藷を挿す/阿波野青畝
死の雨へ鋼の手足藷買ひに/熊谷愛子
藪鴬笑ひ甘藷提げ三鬼去る/沢木欣一
みそなはせ仏勤も藷よごれ/松藤夏山
藷の付く頃を猪よく知れり/高澤良一
藷を挿す屋の上の畑の白き日に/篠原
藷掘の楽しみ畝に探り当て/高浜年尾
よき婢来て甘藷煮ころばす新厨/林翔
藷掘の藷より多き子の話/永井たえこ
藷畑の起伏二の丸三の丸/下村ひろし
夫婦して主に汗捧げ甘藷挿す/上村占
俳句例:41句目~
辺戸岬甘藷蔓たぐりゐし女/沢木欣一
酒赤し、甘藷畑、草紅葉/芥川龍之介
新馬鈴藷や黒土の窪器めく/香西照雄
串ざしの甘藷宝前に初閻魔/井上治子
雜俳と藷作っても作っても/高澤良一
甘藷掘に神父手を貸す島畑/松原直庵
あかあかと吉野は藷を洗ひあげ/日原傳
予後の妻藷の畝見てまた歩む/斉藤夏風
あかあかと藷洗ひあげ終戦日/高澤良一
藷堀の意を強うせる風が吹き/高澤良一
供藷眼耳鼻舌身意もなしと/阿波野青畝
うつくしきもの献饌の走り藷/黒田杏子
甘藷食ぶまだ信仰に遠くゐて/岩岡中正
藷掘れる島に向つて舟を寄す/松藤夏山
山を向くゆまり念仏藷の里/赤松けい子
虹の雨そゝぐ藷蔓うちかへす/西島麦南
子育ての頃の重みや藷背負ふ/羽根嘉津
しろしめす国土の恩甘藷太る/河野静雲
半漁の糊口の藷に濤ひびく/大岳水一路
甘藷屑がころぶ彼岸の土乾く/松村蒼石
俳句例:61句目~
藷掘りを猿が見に来る岬かな/須原正三
藷掘りに新月かゝり始めけり/松藤夏山
甘藷を掘る女の欲は限りなし/右城暮石
藷掘りて信仰支ふ大江びと/下村ひろし
土われてべにあかこえる藷畠/飯田蛇笏
ミサの鐘藷掘る夫婦立ち上り/秋吉良聞
藷掘られ土と無縁のごと乾く/津田清子
一鍬に藷いくつもの肌すこしみゆ/篠原
主人拙を守る十年つくね藷/芥川龍之介
山頂に女藷食ふかなしけれ/石田あき子
掘り残す甘藷足裏が捉へけり/藤野/力
甘藷車押すは大江の神父かも/古場青芒
新馬鈴藷や農夫掌よく乾き/中村草田男
藷の葉に大いなる穴開けし奴/高澤良一
暮るるまで後一仕事藷をさす/中村志ま
水盤に活けて甘藷蔓ただ暗し/小池文子
水藷といへども笑棄てざりき/石田波郷
福引の当りてどかと藷大根/新津香芽代
藷殻の黒塚群れてわれを待つ/西東三鬼
藷畑のへりの土はや秋深む/百合山羽公
俳句例:81句目~
藷穴の大きく長子還り来る/大江かずこ
藷蔓を衾ちちろの鳴けるなり/高澤良一
藷負ふや焦土の果の夜明富士/加藤楸邨
甘藷の貨車出勤の踏切断ちぬ/原田種茅
風の雁甘藷蔓あげの朝海女に/橋本鶏二
うす味に馴らされて今日走り藷/朝倉和江
うゑをへし拓地の藷に返り梅雨/飯田蛇笏
日に酔うて藷挿しをるや山畑/藤田あけ烏
甘藷売の火屑をこぼす鳥総松/久保田晴朗
お十夜の供物の甘藷にくる鼠/小原菁々子
晩紅を汚して藷を掘りつくす/百合山羽公
暮の富士女ばかりが甘藷負ふか/岩田昌寿
莫迦戦争藷が主食の座につきて/高澤良一
甘藷洗ふ少女に乞ひて水あまき/塚本久子
母よ藷が真赤に晩年もいいね/北原志満子
藷掘る子彼岸の川に走りけり/米沢吾亦紅
土塊にくつついてゐる子藷かな/松藤夏山
コロッケに藷のかたまり夜学果つ/辻桃子
藷掘を見下ろしたまふ野の聖母/朝倉和江
八方へ逃げゆく藷を掘り上ぐる/神生彩史