「早苗」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「早苗」について
【表記】早苗
【読み方】さなえ
【ローマ字読み】sanae
子季語・関連季語・傍題・類語など
・玉苗(たまなえ:tamanae)
・苗運び(なえはこび:naehakobi)
・苗配り(なえくばり:naekubari)
・苗まわし(なえまわし:naemawashi)
・大苗打ち(おおなえうち:onaeuchi)
・苗打ち(なえうち:naeuchi)
・小苗打ち(こなえうち:konaeuchi)
・小苗配り(こなえくばり:konaekubari)
・苗持子供(なえもちこども:naemochikodomo)
・早苗舟(さなえぶね:sanaebune)
・早苗束(さなえたば:sanaetaba)
・余り苗(あまりなえ:amarinae)
・捨苗(すてなえ:sutenae)
・早苗籠(さなえかご:sanaekago)
・苗籠(なえかご:naekago)
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季節による分類
・「さ」で始まる夏の季語
・「夏の植物」を表す季語
・「仲夏」に分類される季語
月ごとの分類
早苗を含む俳句例
早苗束濃緑植田浅緑/高野素十
燕の下腹さはる早苗かな/胡布
苗運ぶ力右足左足/土永竜仙子
早苗束抛りし空の浅間山/蓼汀
山おろし早苗を撫て行方哉/蕪村
子は裸父はててれで早苗舟/利牛
植余る早苗あからむ径かな/嘯山
湖や鳥のくはへて行く早苗/信徳
老びとの一握のみどり早苗取/青邨
厳を打ち玉苗を打つ麦嵐/萩原麦草
余り苗貰ひあつめて遅田植/林蓼雨
早苗とる入日や近き土手の下/梨月
早苗とる手もとや昔しのぶ摺/芭蕉
玉苗や乙女が脛の美しき/井上井月
猫背より力を絞り苗運ぶ/津田清子
そよぎだす早苗田の青昼鏡/桂信子
教会へ百姓がゆく余り苗/栗林千津
深山田に雲なつかしや早苗時/石鼎
夕風や水口に置く余り苗/加古宗也
大山の水をあまねく早苗月/飴山實
俳句例:21句目~
月の出や印南野に苗余るらし/耕衣
婆よりも爺のひそけき早苗村/澄雄
早苗振の袋大きく胡桃の音/下田稔
早苗大切に又放棄して顧みず/誓子
隠岐うかぶ沖より夕日捨苗へ/昭彦
野良は早苗ふし立にけり莚織/宗也
水煙あげて早苗の投げらるゝ/虚子
山颪早苗を撫て行衛かな/蕪村遺稿
時ぞ早苗庄屋の息子泥をふむ/露言
早苗田の風も旅人道の駅/青木千秋
早苗田の増えたる中を帰る道/篠原
西か東かまづ早苗にも風の音/芭蕉
蝦夷近き雨雲わたる早苗かな/水巴
蜆とり早苗に習ふこころかな/秋色
菩薩とはならでや道の余り苗/乙州
余り苗平家の墓に供へけり/飴山實
肉親へ一直線の早苗投ぐ/能村研三
早苗束女の身振り程飛ばず/佐藤淡竹
捨苗の流し雛めき河口いづ/羽部洞然
いつまでも一つ郭公早苗取/高野素十
俳句例:41句目~
捨苗の緑を捨てて昇天す/百合山羽公
捨苗を天秤棒も悲しがる/百合山羽公
早苗投ぐ声を力に童あり/米沢吾亦紅
早苗舟朝凪ぐ水脈を右左/水原秋桜子
新しきは空と早乙女早苗籠/野沢節子
日暮まで水さわさわと早苗とる/羽公
日本海しづか早苗に水の玉/名取里美
早苗籠負うて走りぬ雨の中/高浜虚子
雨折々思ふことなき早苗哉/松尾芭蕉
隣田へすぐに貫はれ余り苗/須藤素童
一山の構へを解きて早苗束/鎌倉佐弓
一日を跼み通して早苗取る/大橋敦子
七十の爺がかしらや早苗取/石塚友二
早苗束放る響の谷間かな/松本たかし
玉苗にマッチの煙や誘蛾燈/西山泊雲
白鷺の羽すりにうごく早苗かな/浪化
約束のやうに風来ぬ余苗/志賀佳世子
早苗振や絵馬塗替も一話題/清原枴童
早苗とる手元に落ちて笠雫/西山泊雲
参道を行つたり来り苗運ぶ/桐田春暁
俳句例:61句目~
早苗束毬藻の如く浮みたり/星野立子
少年の匂ひの早苗束放る/新海あぐり
住吉や兄より早苗渡さるゝ/角川春樹
山峡の風に黄ばみて余り苗/高澤良一
古利根に水嵩もどる早苗月/松本泰二
吊橋の二つ目は暮れ苗運び/黒木野雨
早苗箱重ねて傾ぐ畦の窪/蓬田紀枝子
早苗にも我が色黒き日数哉/松尾芭蕉
法華寺の里に玉苗余りけり/大屋達治
手ばなせば夕風やどる早苗かな/芭蕉
朝髪に田の水つけつ早苗取/高田蝶衣
朝富士の天窓へ投げる早苗かな/一茶
早苗束提げ山鳩の啼く方へ/横田綜市
見てゆくや早苗のみどり里の蔵/言水
余り苗紀貫之に捨ててあり/藤田湘子
捨苗の夕べの雨に立直り/中村千恵子
捨苗の束ごと根づき祭来る/皆川白陀
捨苗の束に生れし蜻蛉かな/小沢碧童
玉苗を洗ひあげたる濁りかな/松瀬青々
玉苗を置きつぱなしに伊吹山/関戸靖子
俳句例:81句目~
甲斐駒の雲に雷をり早苗採/水原秋櫻子
畔切れて早苗の水は光り落つ/高橋馬相
こぼるゝもありて鮎苗運ばるゝ/森田峠
空知野の早苗ととのふ鳶の笛/中條富子
笠の又さゝと重なり早苗取る/皆吉爽雨
置き並めて飼屋の前の早苗箱/石田勝彦
苗箱の早苗ぴくぴく雨を受け/高澤良一
青嵐早苗凹めて消えにけり/五十嵐播水
まだ水になれぬ手足や早苗取/村地宏木
二日月三日月早苗夜も育つ/百合山羽公
二軍てふマスで育ちし余り苗/都筑智子
井戸底に木桶のひびく早苗月/野中亮介
余り苗伊吹の風を溜めてをり/関戸靖子
余り苗息吹の風を溜めてをり/関戸靖子
余り苗育ち四万十川青世界/伊藤いと子
余り苗風を集めてゐたりけり/山田径子
光秀のやさしさ思へ早苗籠/大峯あきら
助の手の腰立ちがちや早苗取/石塚友二
寄せられて風に戦げず余り苗/関森勝夫
小山田に早苗とるなり只一人/正岡子規