「冴返る」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「冴返る」について
【表記】冴返る
【読み方】さえかえる
【ローマ字読み】saekaeru
子季語・関連季語・傍題・類語など
・冱返る(いてかえる:itekaeru)
・しみ返る(しみかえる:shimikaeru)
・寒返る(かんかえる:kankaeru)
・寒もどり(かんもどり:kammodori)
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季節による分類
・「さ」で始まる春の季語
・「春の時候」を表す季語
・「初春」に分類される季語
月ごとの分類
冴返るを含む俳句例
冴返り礼儀全き老教師/林翔
磐根や一高放歌冴返る/齋藤玄
冴返る檜のなかの翌檜/小澤實
真青な木賊の色や冴返る/漱石
沢水の面持暗く冴返る/今泉貞鳳
赤信号滅法長し冴返る/高橋秀夫
青松が森の稜線冴返る/石田波郷
五六丈滝冴え返る月夜かな/蓼太
冴返る音や霰の十粒程/子規句集
冴え返る三十三間堂の端/岸田稚
一瞬時海山暗し冴返り/瀧井孝作
今生や花三椏に戻り寒/塚本邦雄
靴底に暗渠響き冴返る/長崎洋子
校正の朱を八方へ冴返る/福永耕二
某の乱行に似て冴返る/相生垣瓜人
いく春秋偲ぶ交り冴返る/桑田青虎
誓子逝く荒星煌と冴返り/伊東宏晃
本願寺二百三畳冴返る/稲垣美知子
衰へしいのちを張れば冴返る/草城
冴返る野天に石の御百体/鈴木花蓑
俳句例:21句目~
ただ一日ゆるす懶惰に冴返る/林翔
落葉松に月の切先冴返る/根岸善雄
冴返る埠頭に並ぶ輸入材/宇野直治
一高処踏む風紋ぞ冴返る/石川桂郎
花のことば水のことばと冴返る/裕
冴返る夜も恋故の通ひ猫/石塚友二
背戸中は冴え返りけり田螺殻/丈岬
冴え返る沓音高しお水取/石井桐陰
石と亀ともに動かず冴返る/森田峠
一人だけ酒呑童子や冴返り/飴山實
一本の薄紅梅に冴え返る/高浜虚子
嵐山の稜線天に冴返る/粟津松彩子
冴え返る空灰色に凧一つ/会津八一
島移る林響もなし冴返る/高田蝶衣
収まらぬ溝板一枚戻り寒/奈良文夫
上品の一佛の掌の冴返る/青木重行
対岸に一灯ともり冴返る/大西比呂
目の玉を剔りて風の冴返る/上村占
冴え返る面魂は誰にありや/草田男
冴返る万の足痕過密都市/寺井谷子
俳句例:41句目~
凍返る瀧の不動の面構/野間ひろし
冴返る机辺整理は喪の如し/安住敦
飜然と又敢然と冴返る/相生垣瓜人
冴返る丹色剥げたる太柱/西村和子
冴返る二三日あり沈丁花/高野素十
父母の同じ年忌や戻り寒/水越菖石
鳥移る林響もなし冴返る/高田蝶衣
桑の瘤四方へ瞠き冴返る/永方裕子
冴えかへる鳥籠被ふ白き布/中田剛
黒板に残す数式冴返る/小野恵美子
還暦の春に酒なし冴えかへる/中勘助
誰一人通らぬ町の冴え返る/藤田静水
凍返る星ほろ~と吾子生る/佐藤賢一
冴返るささくれ妙義紺青に/堀口星眠
ちちの机ははの鏡よ冴返る/北川泰子
胸うすき百済観音冴返る/川崎美知子
ももいろの一生傷も冴返る/辻田克巳
一病の屈しごころに冴返る/大橋敦子
ひとり佇つ東京駅の冴返る/小澤初江
冴返る離れに老の一人かな/吉田伝治
俳句例:61句目~
冴返るものに詩人の心電図/二村典子
冴返る走りの行の沓の音/加藤知世子
伊豆も又冴返る日のあることを/汀子
友の訃に太き傍線冴返る/加藤知世子
光背の支へ木ほそし冴返る/大島民郎
海峡を渡る灯の橋冴返る/海老根筑川
冴返る思ひにありし吾が心/稲畑汀子
征夷大将軍頼朝の墓冴返る/水原春郎
冴え返る敗戦の碑は海中に/対馬康子
影よりも風の日向の冴返る/稲畑汀子
常盤木の冴返りたる面会日/石田波郷
春泥や夕暮すこし冴え返り/小杉余子
冴返る日の東京に帰りけり/渋沢渋亭
冴え返る万の足痕過密都市/寺井谷子
橋上の継目の鐵や冴え返る/内田百間
月に置く地球の影や冴返る/三島広志
山峡の杉冴え返る谺かな/芥川龍之介
冴返る虹いくたびも日本海/黒田杏子
冴え返る鐘の響きに驚けり/島田青峰
冴返る仏に千手われに二手/伊藤通明
俳句例:81句目~
星詩なきあとの郡や寒返る/飯田蛇笏
寒戻り戻り戻らぬ人のあり/手塚美佐
子規堂の一机一硯冴返る/伊吹ぬい子
冴返る袋に透けて買ひしもの/小澤實
妻の肌乳張つてゐる冴返る/滝井孝作
昨日より今日の青空凍返る/山本晃裕
冴返る金毛閣は人入れず/阿波野青畝
冴返る仕立て直せし黄八丈/中村明子
冴返り冴返りつゝ人となり/星野立子
冴返り又居ずなりぬ春の蠅/高濱虚子
教室の明けがたにをり冴返る/中拓夫
殉教の血染めの遺品冴返る/桑田青虎
水底のよな淋しさを冴返る/佐野良太
大時計止まりし広場冴返る/山村達也
同じ道黙し戻れば冴え返る/高澤良一
蒟蒻に吸ひつく刃先冴返る/岡田和子
冴えかへるとて美しき仏顔/石原八束
戻り寒日蝕の陽に出土土器/青木満子
冴え返るもののひとつに夜の鼻/楸邨
冴返り冴返りつつ逝く昭和/中嶋秀子