俳句例:101句目～
ちかちかと星も氷片流氷来/八牧美喜子
流氷の基地いま無人ぞ原爆忌/香西照雄
流氷の岸にあがりしが丈余なり/有働亨
流氷群蒼然と昏れともないぬ/宇咲冬男
流氷群沖を来る日の海鳴れり/甲賀山村
流氷やわれから知つて死装束/石川桂郎
クリオネを抱き流氷の海蒼む/浜本直子
上陸をせし流氷は置きざりに/長谷草石
切つ先を向けて流氷来りけり/佐藤緑芽
口をつく語を流氷の奪ふなり/石川桂郎
流氷の闇の動きてをりにけり/白幡千草
大国のひとつ消えたる流氷期/坂本宮尾
流氷の上に藍はき目になじむ/古館曹人
尾白鷲天に流氷きしみ哭く/長谷川史郊
屋根低き番屋閉ざせり流氷期/高橋良子
廊どこか歪みて軋む流氷期/金箱戈止夫
暁の流氷かけらと見えるまで/二村典子
流氷来鴉おろおろ吹きもどる/巌谷小波
流氷やま近となりし宗谷岬/三ツ谷謡村
流氷となる一片のはなれゆく/近澤杉車
俳句例:121句目～
流氷と羅臼の雪嶺いづれ濃き/石原八束
流氷の汚れて岸によりかかる/津根元潮
流氷期湯浴児くるむ白タオル/大平照子
流氷原音持たぬもの迫り来る/及川知子
流氷の海光なりや赴任せり/加藤希世子
流氷に彳つ連ありて連のなし/石川桂郎
流氷に注連巻き流氷祭かな/石垣軒風子
流氷に群れてたたかふ蝦夷鴉/澤田緑生
流氷の千島につづく色なき天/古館曹人
流氷へ割り込む大音声の船/久保千鶴子
流氷のうちあふこだま宙に消え/高田高
流氷の海に日の落つ尾白鷲/大森三保子
海豹を載せ流氷の迫りくる/墓田いさを
漁師みな貧し流氷沖へ去り/岡部六弥太
流氷の蓮葉むすびつひに見ず/石川桂郎
流氷や闇すきまなく迫り来る/清水節子
流氷の揺さぶつてゐる水平線/増田豊子
聞かれざる言葉影なす流氷期/仙田洋子
胎内の闇を馴らしぬ流氷期/沼尻巳津子
流氷を待ち風邪人となりゆけり/斎藤玄
俳句例:141句目～
流氷の蒼白に日をとどめをり/佐藤国夫
蜑のテレビ崩れやすしよ流氷来/岸田稚
頭のごとく流氷は一家の裏へ/山田緑光
流氷の来る薄闇のオホーツク/石原八束
馬細る岬流氷はすべてを消し/山田緑光
駅に家かたまり寄せて流氷群/古館曹人
流氷やなにかのこりし鍋の底/藺草慶子
海明けの雀あやふさありあまる/松澤昭
流氷一片鰭あるものとして愛す/栗林千津
流氷やたそがれきては庖丁もつ/寺田京子
流氷の継ぎ目を落ちてゆく言葉/櫂未知子
流氷来はがねの風をさきがけて/草村素子
いつもこのかたちに眠る流氷よ/飯島晴子
ふかき罅もちて流氷つながれり/津田清子
流氷の勝ち気なるさま迷ふさま/櫂未知子
わが思ひ流氷原とはてしなし/成瀬桜桃子
寝衣やさし一灯もなく流氷くる/寺田京子
眼裏のクリオネ消えず流氷季/佐々木栄子
流氷で割るウイスキー誕生日/北見さとる
流氷に委ねてなげき遠ざかる/軽部烏頭子
俳句例:161句目～
あかつきの流氷沖に群れ顕てり/伊東宏晃
流氷に翼もつものきらびやか/勝又星津女
流氷のうすくれなゐの余光かな/涌井信雄
流氷を見て来し人の酒つよし/能村登四郎
流氷のひとつ月光裡のベッド/小檜山繁子
流氷のジクソーパズル完成す/竹田ひろ子
嬰児まつげを長くしねむる流氷来/岸田稚
流氷の写真沖までささくれて/田川飛旅子
流氷を見にゆく男をまじえずに/寺田京子
流氷の夜鐘ほど父を突きにけり/西川徹郎
流氷の寄せくるこだま天に飛ぶ/柳瀬重子
流氷の張りつめてくる空の飢ゑ/石原八束
海明けが来る搾乳の湯気の中/野々村晃二
流氷の近づく沙汰に船出さず/小林沙丘子
流氷にアクアマリンの色を置く/稲畑汀子
種牛の鳴く海明けのオホーツク/佐野農人
流氷来る海を見てをり毛蟹売/古賀まり子
流氷の早さ不揃いに犬は犬を求め/和田悟朗
オホーツクや流氷のこゑ遥かより/徳永敬二
流氷や誓子とサハリン歩きしこと/南部富子
俳句例:181句目～
涯しなかりし獄と流氷無音に寝る/古沢太穂
流氷に夜はたてがみの欲しきかな/落合水尾
流氷声なく夕日の弥撒へ急ぐなり/中村還一
流氷の哭く夜は聖書読むと言ふ/小枝秀穂女
あざらしの仔にはゆりかご流氷来/佐藤シズ
流氷の遮二無二打寄せ来つる胸/沼尻巳津子
流氷の立ちながら唏く星あかり/鳥居おさむ
海明けの鳥はひかりのかけらかな/仙田洋子
流氷一夜明けたましい澄みわたる/山田緑光
流氷の光り三百六十五面体の我/沼尻巳津子
流氷にいたみし船のつきにけり/三好雷洋子
流氷群夜を明かす子のひとりの燈/永田耕一郎
河豚の血のしばし流氷にまじらざる/橋本多佳子
流氷のかがやきのなかを航くしづか/長谷川素逝
わが頭上過ぎたる影はオホーツクの流氷原を舞ふ尾白鷺/山名康郎
オホーツクに流氷がきぬきしきしと海きしむたび星座かたむく/山名康郎
