「狼」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「狼」について
【表記】狼
【読み方】おおかみ
【ローマ字読み】ookami
子季語・関連季語・傍題・類語など
・豺(やまいぬ:yamainu)
・山犬(やまいぬ:yamainu_)
・蝦夷狼(えぞおおかみ:ezookami)
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季節による分類
・「お」で始まる冬の季語
・「冬の動物」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
狼を含む俳句例
狼のかりま高なり冬の月/奚
狼の声揃ふなり雪の暮/丈草
凌霄や狼少女の貫頭衣/竹中宏
狼の跡踏み消すや浜千鳥/史邦
狐山狼山の尾花かな/三好達治
寝冷腹抱へて槽の狼/高澤良一
狼や睾丸凍る旅の人/正岡子規
狼のあと踏消すや浜千鳥/史那
草枯や狼の糞熊の糞/正岡子規
狼の祭の鯨食うべけり/矢島渚男
狼を神とし祀り山凍る/岡田日郎
狼の眼の狛犬や山始/鳥居雨路子
狼のまつりか狂ふ牧の駒/炭太祇
狼は亡び木霊は存ふる/三村純也
山犬をのがれて露の聖かな/蕪村
滅びたる狼の色山眠る/矢島渚男
狼の小便したり草の霜/正岡子規
狼の墓堀り探す落葉哉/正岡子規
狼の道をつけたる落ばかな/程己
一本は狼のため夕桜/高野ムツオ
俳句例:21句目~
物を獲て狼迅し氷上を/緒方朴子
天狼の青き光も春めけり/二口毅
天狼の絶滅はまだ寒旱/矢島渚男
狼のおくる山路や月夜茸/中勘助
狼の浮木に乗や秋の水/榎本其角
狼は今夜出るぞと山の冷/小島健
狼を崇め秩父の棚田打/飯島芳村
狼や梺にひくき小夜砧/正岡子規
狼に墓の樒の乱されし/石井露月
大雪や狼人に近く鳴く/正岡子規
狼の糞見て寒し白根越/正岡子規
大日や年の天狼海の上/岡井省二
狼の護符を戸口に寒造/勝呂/靖
褻衣の狼であれ鬼房忌/山田桃晃
狼に寒鮒を獻す獺の衆/正岡子規
狼の子をはやしけり麻の中/許六
狼のこの比はやる晩稲かな/支考
絶滅の狼以後を狗尾草/神戸秀子
狼穽のあと腥し残る雪/小原十峰
裏街や天狼ももう春の星/原田喬
俳句例:41句目~
狼をのがれて淋し山の月/島田五空
狼を詠みたる人と月仰ぐ/茨木和生
狼罠も徒に春隣りけり/日比帰麓園
狼の群に入らばや初時雨/寺田寅彦
狼葬の草原にある冬日かな/島田柊
綿滅のかの狼を連れ歩く/三橋敏雄
狼の哭く哀しさは何故ぞ/森本幸子
狼の絶えて百年滝涸るる/岩津厚子
天狼の夜々の空あり臘八会/森澄雄
赤頭巾狼の腹にぬく~と/阿部次郎
狼が空に来てゐる冬銀河/石原八束
半月に狼吼えて雲けはし/正岡子規
半月や狼吼えて雲かゝる/正岡子規
古の狼火場とかや若葉山/高木晴子
吏員某夜は狼の声をあぐ/味元昭次
狼の檻に釦の落ちてをり/松本文子
山河荒涼狼の絶えしより/佐藤鬼房
戦争とかの狼を連れ逝けり/小島健
狼の糞あたゝかに寺の霜/正岡子規
沼涸れて狼渡る月夜かな/村上鬼城
俳句例:61句目~
渦巻ける雪は狼の子守唄/奥坂まや
狼の生存説に炉火欲しき/石村与志
狼の犬より小さし襤の中/福島小蕾
狼の滅びし郷のぼたん雪/江里昭彦
狼に夜は越せざる峠かな/大谷句仏
狼に引かぶりたる蒲團哉/正岡子規
狼を連れて熊野の波頭/天津伎依子
狼のふみゆく音や枯尾花/正岡子規
狼の人くひに出る夜寒哉/正岡子規
狼の吾を見て居る雪の岨/正岡子規
狼の見えて隱れぬ雪の山/正岡子規
狼の遠吠え包の夜くだら/平野龍風
狼のによろりと出るや藤の花/荒雀
狼は山へ歸るや御代の春/正岡子規
狼や剣のごとき月の弦/細木芒角星
狼や祭りて草の淋漓たる/松瀬青々
狼の色の秩父となりにけり/松尾隆信
暁闇を猪やおおかみが通る/金子兜太
狼の聲も聞こゆる夜寒かな/正岡子規
山犬の里へ吠え寄る夜寒哉/寺田寅彦
俳句例:81句目~
燈火親しむ山犬の長鳴く頃/山口誓子
その夜の送り狼てふ主題/佐々木六戈
不眠曠野の狼でありし日々/小田弥生
狼や出て我まゝの野べの花/井原西鶴
狼のまつりに染めるすゝきかな/普佶
狼や月に向って吠ゆるなり/山口笙堂
狼に古墳の月の上りけり/柴田佐知子
狼のくひのこしたる小判かな/龍岡晋
狼のごとく消えにし昔かな/赤尾兜子
狼の振りこ歩きに檻の冷/上田千枝子
狼を剥製となす丹生社かな/岡井省二
狼の声そろふなり雪のくれ/内藤丈草
狼を嵌める一行の墓へ参り/安井浩司
樵夫らの狼怖れ火絶やさず/松元桃村
狼のあと踏み消すや浜千鳥/中村史邦
狼の影あまた過ぎ夏の空/高野ムツオ
狼を飼うて砂漠に住む女/保田白帆子
末枯のそよぎ始めを狼火山/伊藤京子
狼籍と去来も見しか柿落葉/松瀬青々
狼のひよつと喰ふべし鉢たたき/野童