「薺」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「薺」について
【表記】薺
【読み方】なずな
【ローマ字読み】nazuna
子季語・関連季語・傍題・類語など
・薺摘む(なずなつむ:nazunatsumu)
・薺粥(なずながゆ:nazunagayu)
・初薺(はつなずな:hatsunazuna)
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季節による分類
・「な」で始まる新年の季語
・「新年の植物」を表す季語
・「新年」に分類される季語
月ごとの分類
薺を含む俳句例
俎板に寒し薺の青雫/此筋
薺の國響郡の爼村/高澤良一
古畑や薺摘行く男ども/芭蕉
うす塩の鴨に薺の雫かな/浪化
雑炊の色も雪間の薺かな/几董
山陰に多少の家の薺かな/青々
俎に薺のあとの匂ひかな/鳴雪
叩くにも君を忘れぬ薺哉/紅爾
夕波の船に聞ゆる薺かな/孤屋
宵の月西に薺のきこゆ也/如行
七種の薺神饌田に摘む/皆川東水
薺摘むうしろしきりに塀雫/泊雲
下京やさざめき通る薺うり/蝶夢
薺咲く満蔵院は隣寺/八木林之介
薺摘む安曇平の日溜りに/石昌子
ならべ置膳に薺の響きかな/我峯
御飛脚の堀河出てなづな哉/召波
京縞の頭巾で出たり薺売り/暁台
芹薺踏みよごしたる雪の泥/惟然
塔百萬造りて並べ芹薺/和田悟朗
俳句例:21句目~
俎に薺用意や六日の夜/大谷句仏
総角が手に手に籠や薺つみ/野坡
白箸に色かぐはしき薺かな/秋皎
替る世や薺にあらて鐘の音/乙由
雑炊の名もはやされて薺哉/支考
板の間の夜の音そふ薺哉/松瀬青々
永遠が戦いでいるか枝の先/薺次郎
薬園の静さに咲く薺かな/高田蝶衣
昨日より薺摘みゐる寺男/白方昭女
へたへたと笑て下手な薺かな/壷角
無条件降服薺咲いてをり/萩原麦草
薺売り鮒の釣場ををしへけり/白雄
数々は女一房のせわの薺かな/風睡
夜起きて揚屋の薺はやしけり/几董
薺生ふ朝日将軍墓所御前/高澤良一
東京の薺摘みくふなつかしく/楸邨
薺はやす浅草川の家居哉/角田竹冷
初なづな鰹のたゝき納豆まで/素堂
少年に小遣ふやすせりなづな/原裕
春近し石段下りて薺あり/高野素十
俳句例:41句目~
沢蟹の鋏もうごくなづなかな/蓼太
大利根の霜をかきわけ薺つむ/知世子
濡椽や薺こぼるゝ土ながら/服部嵐雪
夫待ちてはやす薺の一握/塩谷はつ枝
老の腰摘にもたゝく薺かな/横井也有
とばしるも顔に匂へる薺哉/榎本其角
浮草に薺こぼるる野川かな/会津八一
ぬれ縁や薺こぼるる土ながら/嵐/雪
薺咲き翼のごとく海霧通ふ/小林康治
まつしろに薺咲く田へ柩出る/飴山實
薺つむ野や枯萩もおもひ草/松岡青蘿
短夜やかくも咲きゐし若薺/渡辺水巴
焼け残る塀の日向の薺かな/臼田亞浪
まん中に巫女ゐて薺囃かな/生田嘉子
薺つむ帷子雪のふまれけり/飯田蛇笏
昼過ぎにたゝきて見たる薺かな/不玉
歩くこと愉しからずや薺咲き/和地清
一籠の薺にまじる御形かな/吉田冬葉
薺唄母もうたはずなりにけり/斎藤玄
井のもとも菫薺のはる辺哉/松岡青蘿
俳句例:61句目~
薺売石薬師より御所に入る/中川四明
薺売鮒の釣場をおしへけり/加舎白雄
元日の山見に出づる薺かな/室生犀星
芹薺御形はこべら犬の糞/佐々木六戈
薺摘む頬にしたがへる雪の阿蘇/汀女
別れ来て浅き薺の径かな/佐藤惣之助
賤が子は薺見る目のかしこさよ/杉風
隠國のいづこで摘まむ初薺/安東次男
洪水や嬰児の声が遥かにあり/薺次郎
君知るや三味線草は薺なり/正岡子規
雨あとの水に立ちつつ咲く薺/上村占
俎をこぼるゝ薺すゞ白も/藤岡うた代
うち離し馬も嘶へよ薺の夜/加舎白雄
薺咲く道は土橋を渡りけり/平井照敏
薺咲き足音ひそめざるを得ず/岸田稚
遠い日のなづなつむ野の霜柱/所富江
千枚田より摘みきたる薺なる/斎藤梅子
咲きいでゝ月光ほてる薺かな/渡邊水巴
大浪の先のちぎれる薺の日/大峯あきら
我顔に薺とばしるうれしさよ/松瀬青々
俳句例:81句目~
酪農の娘にうす雪やなづな摘/飯田蛇笏
明け方に降りたる雪の薺摘む/田村木国
旅淋し薺咲く田の涯しらず/阿波野青畝
胞衣塚に産毛のごとく薺生ふ/辻田克巳
草の戸や門辺に御形薺など/高橋淡路女
薺うり我子になれよ銭くれん/松岡青蘿
薺咲いて足音ひそめざるを得ず/岸田稚
雨降つてやさしき遊び薺の日/山本洋子
せりなづな御形といひて声の止む/展宏
一歩をば痛感したり芹なづな/永田耕衣
薺咲きキリシタン村牛飼へり/田村了咲
古畑やなづな摘みゆく男ども/松尾芭蕉
薺咲く天女降りしといふ辺り/柿本多映
うぶすなに尽く畦道に薺摘む/吉田以登
一とせに一度摘まるる薺かな/松尾芭蕉
病間へもとどけとなづな囃す音/塩崎緑
世を遠く来る思ひや薺摘み/市村究一郎
薺けふ六葉七葉にもさかへけり/松岡青蘿
石は石はけふ白川のなづなかな/浜田酒堂
芹なづな海より暮るゝ国ざかひ/石橋秀野