季語/虫干(むしぼし)を使った俳句

俳句例:201句目~

書を曝し文を裂く天の青きこと/渡邊水巴

虫干しや人の下り来る賤ケ岳/大峯あきら

書を曝す征きて還らぬ人のもの/高本時子

土用干もみ裏古れどおん形見/荻阪伊せ女

虫干や縞ばかりなる祖母のもの/草間時彦

京学の医書今反古や土用干/菅原師竹句集

虫干しに耐へぬ古さとなる遺稿/稲畑汀子

虫干やかつぎ出されし大般若/池上浩山人

虫干しの山家の牛に鳴かれけり/臼田亜浪

裏愛宕とはこのあたり土用干/大峯あきら

曝したる一書残して夜を読まむ/皆吉爽雨

曝しつつわれと戦を避けたる書/皆吉爽雨

父の忌の曝書にまじる亡母の文/吉野義子

曝す書の唐詩もなべて忘れけり/細川加賀

百千の指紋の躍る書を曝す/竹下しづの女

風入れの絵図の地獄の責め道具/高澤良一

風入れや父が彫りたる蔵書印/下村ひろし

虫干の蔵にかすかに滝音あり/平井久美子

曝す書の朱線は父のつけしもの/今瀬剛一

色鯉も曝書もしづか午後一時/大峯あきら

俳句例:221句目~

芭蕉葉のひるがへるあり曝書楼/田村了咲

若きころ捨てたる芸の書も曝す/出口巴郎

わが好む色褪せやすき土用干/渡邊千枝子

見おぼえの父の印ある書を曝す/佐藤信子

曝書して太平洋を明日越えん/大峯あきら

青春はあまりに暗く書を曝す/新谷ひろし

鶏頭のめぐる曝書のむしろ敷く/皆吉爽雨

母の刀自この世にありて土用干/長谷川櫂

書を曝す父に教へ子多きかな/ふけとしこ

お風入れ涅槃図ごわと畳まるる/高澤良一

虫干の用意の網の抜げ出され/波多野爽波

ぐぐぐいと引ける渇筆お風入れ/高澤良一

古書持たずされど曝書や子の日記/及川貞

虫干の中にまぶしく数珠置かれ/岸本尚毅

曝書なほおのれに今日の忙事あり/飯田蛇笏

風入のはづれに兄のハーモニカ/鳥居美智子

嫁ぎ来て紋はかたばみ土用干/長谷川ふみ子

海女が住む埴生の小屋も土用干/高橋淡路女

書を曝しわが生涯をかへり見る/深川正一郎

書を曝し寂莫の一日終へむとす/軽部烏頭子

俳句例:241句目~

子なきもの我ればかりかは土用干/臼田亜浪

虫干の木偶たはむれに泣かせけり/西村梛子

書を曝す母若き日のバイブルも/肥田埜勝美

曝書して丸き師の文字たどりけり/伊藤京子

虫干やひらひら時間舞ひあがり/小檜山繁子

ひとたびは水をかぶりし書も曝す/鈴木玉斗

松風のこよなき日なり書を曝す/大峯あきら

ひと日夫の看護休みし書を曝す/石田あき子

清貧という語うべなひ書を曝す/浅井青陽子

父在さば訊きたき一事書を曝す/藤崎美枝子

虫干の衣の乏しさこれにてよし/山口波津女

虫干しや亡母のたたみし袖を解き/今泉貞鳳

曝書して心の飢ゑてきたりけり/秋元不死男

バイブルとわが呼ぶ俳書曝しけり/阿部慧月

虚子のもの二日に分けて土用干/波多野二美

読むこともなきものばかり土用干/大塚正路

虫干しの一間故人のものばかり/大場美夜子

お風入れ墨に佳き香のもどりしと/大石悦子

朱線みなわれを育てし書を曝す/神野青鬼灯

曝書にほふ性に眼覚めし頃のにほひ/山口誓子

俳句例:261句目~

なつかしく遺書の曝書に参りけり/河東碧梧桐

曝書して祖父なつかしく父こはし/後藤比奈夫

わがいのち惜しみつづけし書を曝す/木村蕪城

をんなとていささかの書を曝しけり/大石悦子

お虫干し有情無情の絵図掛けて/中井/ユキ子

虫干すやいのちのしみの衣ばかり/塩谷はつ枝

身のほとりそろそろ軽く土用干/長谷川富佐子

我が生母となりし一書を曝しけり/加藤三七子

お風入れ慧可のぎょろ目に立ちすくむ/高澤良一

我が虫干の白いものならぬは鈍びたる/喜谷六花

曝す書となりたる『されど我らが日々』/片山由美子

虫干家に子供なくて打たれざる太鼓も/安斎櫻カイ子

虫干と吹かれて鳴やきり~す/一茶/文化十一年甲戊