「麦打」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「麦打」について
【表記】麦打
【読み方】むぎうち
【ローマ字読み】mugiuchi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・麦叩(むぎたたき:mugitataki)
・麦つき(むぎつき:mugitsuki)
・麦搗(むぎかち:mugikachi)
・麦の殻竿(むぎのからさお:muginokarasao)
・麦埃(むぎぼこり:mugibokori)
・麦焼き(むぎやき:mugiyaki)
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季節による分類
・「む」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「初夏」に分類される季語
月ごとの分類
麦打を含む俳句例
麦打や夕日を招く竿の影/蝶夢
麦埃赤光の星森を出づ/川端茅舎
麦埃一動乱を起しをり/村山古郷
嚏して犬通りけり麦埃/内藤吐天
極楽も陸続きなる麦埃/桑原三郎
山寺の大炉の蓋や麦埃/西山泊雲
強靭な農婦の腰の麦埃/萩原麦草
此さとの住居いふせし麦埃/蝶夢
極楽も睦続きなる麦埃/桑原三郎
全身に麦埃つけ貧乏性/大熊輝一
麦を打ほこりの先に聟舅/炭太祇
屍室の仏菓の上の麦埃/西岡菩提樹
麦埃遠き飯場に燈の敷布/香西照雄
麦埃鯰は池に伏して笑ひ/永田耕衣
蝉鳴くや麦を打音三ゝゝ/服部嵐雪
机上にも麦扱の音濛々と/飯田龍太
麦埃丘にしづもり昼の月/久米正雄
麦扱のお茶の蓆は別に敷き/上野泰
麦打に三女夫並ぶ栄へかな/炭太祇
柵にぎつしりつまり麦埃/西山泊雲
俳句例:21句目~
麦埃ただよひ沼に日沈む/橋本鶏二
門口に吹出してをり麦埃/久保青令
麦打唄何度胎内にて聴きし/松本旭
軽々と浮き重なりぬ麦埃/高浜虚子
裏山に日がさすときの麦埃/桂信子
垣越しに隣より降る麦埃/西山泊雲
麦埃腑抜けきつたる面晒し/小林康治
麦埃浮べて利根の一支流/水原秋桜子
麦埃島の聖地をおそひけり/朝倉和江
瓢たんの花とおぼえつ麦埃/上島鬼貫
松の風麦扱器械よくまはり/高浜虚子
麦埃かぶり漕ぎ行く車椅子/山田百穂
言葉要らぬ麦扱母子影重ね/西東三鬼
麦埃いとふ白機織りすゝむ/西島麦南
水といふ水にありけり麦埃/高浜虚子
麦扱といふ生産の埃かな/猪俣千代子
麦埃こぼれつゞけり渚まで/西山泊雲
麦扱の音分校にひびきけり/棚山波朗
麦扱機憩へり鳩が歩み寄り/小池双葉
麦殻の柱並み立て今も小作/西東三鬼
俳句例:41句目~
麦殻焼く甲斐なかぞらの黒煙/中拓夫
麦焼の煙の切れて母がゐる/森田清司
麦打の遠くの音の眠たけれ/松本たかし
納屋の前に乾ける足跡や麦埃/西山泊雲
麦埃あふひに副ふて上りけり/松藤夏山
麦埃うすうすながれ伊賀の山/橋本鶏二
麦埃かぶる童子の眠りかな/芥川龍之介
麦埃旅の時間は生きてゐる/中村草田男
横たはる麦打棒をまたぎ行く/堤俳一佳
火の國の火の山裾に打てる麦/中島斌男
鶏小屋も麦打つ埃舞ふあたり/松林尚志
麦打つや老いの唐竿低けれど/緒方句狂
麦打の人のかはりて音かはり/金光紫川
麦扱の麦天日に噴きつづけ/伊達利根男
麦打の打ちそろひつゝ向きかはる/篠原
麦打の遠くの家に見ゆるなり/松藤夏山
麦殻を焚くや遠くの農夫耀り/萩原麦草
麦殻を焼く火消ゆれば螢かな/福田蓼汀
麦打の音に近づきゆきにけり/星野立子
僧の頭に麦扱きの音絶間なし/飯田龍太
俳句例:61句目~
麦打や風呂たきつけてマ一ト息/西山泊雲
ぎくりはつたんと麦を打つ音よ/小杉余子
いたはりて病後の妻と麦を打つ/清田松琴
傅て無きか云ふ他所行く娘麦埃/内田百間
麦打や開けある我戸気にしつゝ/西山泊雲
麦扱きの満月となりし家そと/中塚一碧樓
麦扱きを距てをぐらく昼を臥す/今枝蝶人
ふるさとの麦埃墓地をも汚し/榎本冬一郎
麦埃かぶせ掃きかぶせ畑の火に/西山泊雲
麦扱の三日ばしかで済めばよし/石口光子
麦埃かぶりし供華を切りにけり/松藤夏山
麦扱機しづまり月の夜がひらく/久保皓嗣
麦打の掃き浄めたる一ところ/軽部烏頭子
麦殻を焚く火か否か伊豆に入る/加藤楸邨
麦埃に乗りて亡父母遊ぶらむ/河原枇杷男
麦打ちのまた向きかへて鼻低し/細谷源二
麦を打つ頃あり母はなつかしき/高野素十
麦焼の阿修羅の如く火をくぐり/山口青邨
末の世のかなしき麦を打ちにけり/中川宗淵
麦扱機折り折り軋みつゝ無事に/古賀三春女
俳句例:81句目~
麦打の仏壇の灯のことを言へり/米沢吾亦紅
麦殻を焼く火の闇のなほはろか/長谷川素逝
麦扱きのこの日漁家たる状もなし/佐野まもる
柿の木の影の来そめし麦を打つ/五十崎古郷句集
麦を打つ麦を打つ日の傾きもなく/安斎櫻カイ子
けふをかけて麦扱の二三日の家かげ/中塚一碧樓