「水餅」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「水餅」について
【表記】水餅
【読み方】みずもち
【ローマ字読み】mizumochi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・水餅造る(みずもちつくる:mizumochitsukuru)
–
季節による分類
・「み」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「晩冬」に分類される季語
月ごとの分類
水餅を含む俳句例
水餅や混沌として甕の中/原石鼎
水餅に日月遠き思ひかな/原石鼎
水餅の壷の蓋とる窓明り/高浜虚子
雲の如くに水餅や甕の底/富吉堂山
水餅の大甍蔵の静まれる/赤羽岳王
水餅や壷中の天地晦冥に/高浜虚子
妹のごとく水餅眠りをり/櫂未知子
水餅の混雑しをる壺の中/高浜虚子
水餅の呟を聞く文弱なり/清水冬視
水餅やさつと風入る勝手口/中拓夫
水餅の水替へる朝一番に/粟津福子
水餅の水を上りてすべる箸/重永幽林
水餅や一途に老けし母の鬢/小林康治
朝月夜水餅をなほ眠らせて/村越化石
妻病めり水餅深く沈めゐて/橋本榮治
手さぐりに水餅探し女老ゆ/菖蒲あや
水餅を家に海越ゆ旅に出づ/橋本鶏二
水餅の箸を逃げたる壺暗し/田畑比古
老人の掌が水餅を掴み出す/奥坂まや
たちまちや水に沈みて水餅に/中村汀女
俳句例:21句目~
水餅の水の重り合うてゐし/後藤比奈夫
手を人るる水餅白し納屋の梅/夏目漱石
一つ減りまた水餅の深くなり/山内山彦
水餅を焼く消炭のやわらかさ/萩原麦草
水餅のくるりくるりと良寛忌/増成栗人
水餅のいびつに見ゆる深さかな/外城恒
水餅のひと夜さとなき無明かな/飴山實
水餅のひらひら沈み重なりぬ/小林正夫
水餅の水替ふことを今もして/細見綾子
水餅のやうに氷河の横たはる/高澤良一
水餅の秋夜のごとき露けさや/栗生純夫
水餅にかび浮き昭和遠きかな/福山良子
水餅や中千本によき娘をる/大峯あきら
母老いぬ水餅の甕のぞくとき/鈴木栄子
水餅や母の応へのあるところ/山本洋子
水餅の掬ひし濁りありにけり/関戸靖子
母に似て水餅の水を深くせり/萩原麦草
水餅をやく大寒のゆるみかな/小澤碧童
水餅や不平不満に蓋をして/阿部美恵子
水餅を焼くや声なき雨となり/細見綾子
俳句例:41句目~
水餅を覗き亡き人吃りけり/吉本伊智朗
水餅を飼ふ山姥となる日まで/佐藤鬼房
浄らかに水餅囲ふ貧しからず/有馬籌子
水餅の闇なまぐさく子が叛く/大中祥生
水餅の水深くなるばかりかな/阿波野青畝
水餅に然るべき手を入れにけり/菅家瑞正
水餅の甕出てわれの代も古りし/大野林火
水餅の甕置くほどの暗さあり/加倉井秋を
水餅の角の水より出てをりし/山崎ひさを
水餅の静まりかへりをりにけり/成瀬正俊
水餅やひとつに泛かぶ甲斐の山/鈴木太郎
水餅やひの木の中も月はさす/大峯あきら
くらがりに水餅の壺ふるさとは/江里昭彦
水餅や土あらあらと暮れにけり/桜井博道
つくづくと淋し水餅つかむとき/竹下史郎
水餅や死に関したる書の溜る/田川飛旅子
ど忘れや水餅のひびふやけをり/川村紫陽
母の喪の水餅の水掌にしみぬ/成瀬桜桃子
水餅となりて沈みて音沙汰なし/伊藤通明
水餅をさも深きより掬ひ出す/篠田悌二郎
俳句例:61句目~
水餅にものいふわれの知らぬ妻/鷹羽狩行
水餅を取り出すに灯は要らざりき/岡本眸
水餅に手を浸さむとためらへり/杉山岳陽
水餅を掬はむか遠き日の海戦よ/三橋敏雄
水餅を水よりあげて音はなし/山口波津女
水餅のまはりいつもの音はじまる/桂信子
水餅の消えてなくなる濁りかな/市堀玉宗
水餅の水くぐるとき亡母のこゑ/吉田鴻司
水餅の水たつぷりと替へて寝る/杉浦小冬
産む日待つ水餅しんと眠らせて/中尾杏子
水餅の水の無精はゆるされず/福田松風子
肩出してゐる水餅のふと哀れ/後藤比奈夫
蒼白のキリスト水餅に触りて/小川双々子
角とれてゆく水餅をさびしめり/奈良/葉
水餅や湖あをあをとさめざめと/吉田鴻司
水餅の煮えあがり愚痴洩らしけり/影島智子
水餅のきびしくしみる日のなくて/高木晴子
水餅を焼きて過ぎたることを言ふ/細見綾子
水餅の水いきいきと主婦の日々/柴田白葉女
水餅の尽きたる甕を伏せにけり/徳永山冬子
俳句例:81句目~
水餅を老父へ焼きをり病む身なり/清家春起
水餅や母の世よりのありどころ/今井つる女
水餅やこころそのまま面冷ゆる/赤松ケイ子
水餅や雲ふくよかに日を裹む/鍵和田ゆう子
水餅の厭きたる水を替へにけり/徳永山冬子
水餅をもてあましては独り住む/前田野生子
水餅に主婦のなさけをかけ通す/山口波津女
都はあるか水餅さびしくはないか/櫂未知子
水餅にするほどの餅すでになし/百合山羽公
水餅のすぐふくれたるめでたさよ/深見けん二
水餅の焦げつく春の立てりけり/久保田万太郎
母でなく妻でなく水餅に灯ともして/きくちつねこ