季語/マスクを使った俳句

俳句例:101句目~

純白のマスクを楯として会へり/野見山ひふみ

夜のマスク汽車過ぎし香の鐵路踰ゆ/中島斌男

美しき顔にふたたびマスクかな/玉木/こうじ

マスクしてしろぎぬの喪の夫人かな/飯田蛇笏

大マスクかけて籠りてゐるごとし/井村/経郷

マスクしてとみかうみして畦づたひ/下村槐太

失業をしてゐるマスクかけにけり/吉岡禅寺洞

マスクしてものを言ふ口ありにけり/行方克巳

マスクしてマスクしている人にあう/細井啓司

マスクしてマスクの人に目敏しよ/宮坂やよい

怖れけりマスク/メロンの甘さだに/林原耒井

マスクして世に容れらるる言吐かず/橋本榮治

マスクして人に逢ひ度くなき日かな/稲畑汀子

遠くよりマスクを外す笑みはれやか/富安風生

マスクして人の怒りのおもしろき/上野さち子

マスクして吾をゆるさぬ眼のやさし/行方克巳

マスクして妻に子がなし我にもなし/右城暮石

マスクして寝るほど寒き恐はき夜/池内友次郎

マスクの白さ同僚とは相憎むもの/榎本冬一郎

マスクの目いちいち頷きをりにけり/高澤良一

俳句例:121句目~

皇宮衛士けふマスクして立ちにけり/細川加賀

真夜中の大きなマスクの中のかもめ/攝津幸彦

マスクしてをれど言ひたきことを言ふ/吉年虹二

涅槃図を仰げりマスクかけしまま/長谷川かな女

マスクして蛙めき来ることはおもしろ/高澤良一

マスクしてゐても猫にはわかるらし/北川沙羅詩

マスクかけ目で挨拶をすることも/桔梗きちかう

さゝやけば目がうれしがるマスクかな/倉田春名

逢ふときは目をそらさずにマスクとる/仙田洋子

度外れの遅参のマスクはづしけり/久保田万太郎

受験子にすすめしマスク捨ててあり/塩谷はつ枝

怒りゐることがありありマスクの目/遠山みよ志

口紅のなじみしマスクかくるかな/久保田万太郎

句座の衆マスクご免の「こんにちは」/小出秋光

マスクもるゝ心の吐息きかむすべ/久保田万太郎

マスク新し身に匂ふものこれのみに/能村登四郎

埠頭で海に触れる町の子マスク小さく/宮津昭彦

花冷えのマスクをかけて眉の濃き/久保田万太郎

マスクしてふところ手して何おもふ/久保田万太郎

マスク白しまけず嫌ひの意地ツぱり/久保田万太郎

俳句例:141句目~

マスクしてけふの遠嶺の雪に会ふ/五十崎古郷句集

かがまりてやさしきまなこ寄せくるにマスクをせよと言へばせつなし/竹山広