森を含む俳句例
大風の森の中より寒鴉/石鼎
鶯や翠嵐楼の森の中/上村占
茂りけり乞食が森の下竈/調和
足魂と森魂遊ぶ遠霞/和田悟朗
時雨けり衣手の森洗濯屋/調泉
初茜珊瑚の森に眠り/徳留末雄
駕舁の待たする森の涼かな/梅
風薫る森の木蔭や弓の音/文波
画展出て点描の森落椿/桂信子
池の鴨森の鴉や夕時雨/寺田寅彦
冬眠の森ぱつちりと潦/鷹羽狩行
日盛の蝶飛んでゐる森の中/青邨
森に奥行蛍火が点きはじめ/狩行
沿線の除雪森透く茜濃し/飴山實
万歳や金春を出て烏森/竹村秋竹
森の影ある忘年の葱畑/和知喜八
水神の森を遠くに都鳥/福田寿堂
森奥を照らす一燈稽古笛/桂信子
古書の市糺の森に鰯雲/名和政代
木耳や森の奥まで雨の音/小島健
俳句例:21句目~
聖堂の森の時雨や夕鴉/寺田寅彦
苗しろを見て居る森の烏哉/支考
啓蟄や森の匂ひの芳香剤/橋本紅
切株は森の音盤囀れり/石田厚子
筒鳥の渡りの声を森宿す/松本進
鳶職の勿忘草に森開け/稲畑汀子
夏鹿の森の刻々銀時計/攝津幸彦
夕森は水噴くごとし法師蝉/林翔
竜宮の森を散策大海馬/高澤良一
科学者と鶯睡る森の奥/関口桂史
遁れとぶむく一群や森の月/召波
若水や霜の門井の森漏る陽/句仏
月白の森黒々と発光す/横井理恵
切り株は森の演壇卒業す/皆吉司
風透る森に声かけ鱗雲/大井雅人
初詣ありあけ月の森づたひ/松浜
苔寺の森青蛙雨を呼ぶ/中村富子
森蔭の桑の畑や閑古鳥/会津八一
風景は森を遠くに切山椒/山崎聰
森涼し撒水栓を全開し/山田弘子
俳句例:41句目~
昼蛙恋蛙森は浮くごとし/松本旭
森に近づき雪のある森/尾崎放哉
孵りたる森青蛙湖暗し/栗原政子
森割つて明るき道の走る秋/林翔
秋の蛇療園の森遠長し/石田波郷
神の森梵天揚げる力足/川村久子
神の森天の境に藤を懸く/塙告冬
砂ヶ森袰月龍飛田植寒/黒田杏子
青松が森の稜線冴返る/石田波郷
梟や森の家路の子に遠し/原柯城
白の郭公森を荒しけり/堀口星眠
峰雲や森に秀でて遠欅/中田勘一
捕虫網産土の森一漁り/高澤良一
薬狩糺の森に近づきぬ/藤田湘子
袷着て樗の森も遠からず/安住敦
炎天や森の青々樅梢/東洋城千句
月うつる潦あり森の中/福田蓼汀
月明の森に奥あり虎鶫/愛澤豊嗣
斎場の森に鴬老知らず/中村悌二
森を出て花嫁来るよ月の道/茅舎
俳句例:61句目~
森の中の道ゆく葵祭かな/京極杞陽
春竜胆森の雫の如く咲く/岩本尚子
春虹の頂見んと森を出づ/溝口青男
春蝉や湖が重ねし森の色/相馬遷子
椎の実降る磐井の森の乱語/穴井太
春雨や森の草木のけぶりたつ/蝶夢
黒貂のとぶ朝の月朝の森/依田明倫
おなじしぐれ柞の森や形境/調幸子
黄落や森の奥処の白塑像/石原八束
遠く見し楝の花を森に探す/安住敦
菜の花や風船遠き森の上/会津八一
遁れとぶ椋一群や森の月/黒柳召波
鳩吹の森の中道分れ行く/内藤鳴雪
鳥交る森は筋肉質となり/平吹史子
草原の径は泉の森へ消ゆ/山田弘子
冬枯れて森の堺の柵長し/正岡子規
赤き森黒き湖越ゆ春の雪/対馬康子
光堂かの森にあり銀夕立/山口青邨
虫送る松明森に隠れけり/正岡子規
誘惑の一つの冬の森の中/対馬康子
俳句例:81句目~
託されし森の消息落し文/山田弘子
月に飛ぶ紙切虫や森乾き/斉藤京子
靜かさや月白上る森の上/正岡子規
時鳥鳴くや上野の森の上/正岡子規
二歳児に存分の汗森深し/都筑智子
森の蟇鳴きいで病者何恃む/有働亨
たそがれの森に雪噛む寒鴉/有働亨
見逃さじ渚の森の白き犬/夏石番矢
靄こめて遠森かくす靭草/富安風生
電柱に木耳生えぬ森の中/下村槐太
五六人熊担ひ来る雪の森/子規句集
蟲送る松明森に隱れけり/正岡子規
森の村闘鶏場にしんと人/金子兜太
六月の花嫁に遇ふ森の道/岩崎照子
蝶生る女人高野の森の奥/有馬朗人
雪消えて森や林や田や畠/辻田克巳
雪折れの森囚人達の蝶結び/仁平勝
雪の森研究室に書が眠る/宮坂静生
暖かや森の木の椅子石の席/塙告冬
月明や森の如くに夜の髪/対馬康子