俳句例:101句目~
獣園に篠懸花の散る空襲裡/宮武寒々
獣園の土に根を張り桜の木/森田智子
獣園の梅くれなゐに牡丹雪/石原舟月
獣屋を午前十時とす冬日輪/飯田蛇笏
獣捌く刃物もありぬ農具市/大谷正子
獣罠目にも止らず弾きけり/長谷川櫂
罠かけて獣のごとく立去りし/後藤夜半
はんざきの眠りや獣咆哮す/水鳥ますみ
ふくよかに獣眠らす遠い祭/小泉八重子
花合歓や雲へとつづく獣みち/渡辺恭子
みちのくの乾鮭獣の如く吊り/山口青邨
檻の鳥、獣、足にて寒に耐ゆ/右城暮石
少年に獣の如く野火打たれ/野見山朱鳥
ゆく年や獣のごとく車寝て/河原崎蓉子
吹雪く夜は獣めくかに耳聰き/山田弘子
サーカスの去りし凍土獣臭す/加藤征子
梅雨深き山をまよへば吾も獣/福田蓼汀
夏の夜の獣めく手を洗いおり/青木栄子
焼山を嗅ぐ父祖のごと獣のごと/大串章
花あしびビー玉めきし獣の目/吉原文音
俳句例:121句目~
檻の獣みな温和しき冬至かな/原田青児
見せものゝ獣吠ゆるや年の市/石井露月
獣皮干しあがり水口祭かな/吉本伊智朗
蝋梅やならびて蒼き神獣鏡/加賀奈津子
緑なす都市や獣の匂ひせる/長谷川照子
園の日がにごりて獣疲れゐる/横山房子
松明投げて獣追ひやる枯野かな/泉鏡花
獣苑に鳴きて短かき雉子の声/右城暮石
蝗くはへて獣の如き蟷螂かな/西山泊雲
獣罠ばね張りつめてゐて氷る/長谷川櫂
占かたは獣にあらで水鶏かな/五車反古
落葉被て被爆石獣病む如し/下村ひろし
獣の匂ひして白兎やはらかし/木塚眞人
秋日沁む獣の骨のちりぢりに/沢木欣一
短日の煮蓋をのぞく獣かな/藤田あけ烏
草原に人獣すなおに爆撃され/阪口涯子
芋の林を瀬たてゝ逃げし獣哉/西山泊雲
初氷遥けきものへ啼く獣/鍵和田ゆう子
駆け出して獣のこころ夏の月/花尻万博
人獣の舌の天麩羅花ぐもり/磯貝碧蹄館
俳句例:141句目~
人獣の相摶つ露の壁画かな/佐々木有風
人獣となくうすかすむ聖母祭/飯田蛇笏
愛する時獣皮のような苔の埴輪/赤尾兜子
ヒヤシンス獣のやうに夜は届き/櫂未知子
憩なし獣皮の椅子の背の灼けて/後藤綾子
涅槃図の獣のなげき子にうつる/佐野良太
毛更りの獣に卯の花曇りかな/山田ひとみ
山火事泊芙藍を経ておこる獣姦/加藤郁乎
石獣のひたすら座せる大暑とも/高澤良一
寝釈迦には見ゆる獣の泪かな/後藤比奈夫
祈らねば獣語を放つかも知れず/大西泰世
寒林に入ればポルシェの獣めき/鯉沼桂子
筍の獣衣脱ぐことたけなはに/赤松ケイ子
緑蔭へ獣語あふれてきて解ける/大西泰世
獣の体に草の実大きい静けさが/谷/佳紀
罠獣皮飾りて山のレストラン/吉良比呂武
胸にラッセル逃亡の一獣群写り/阪口涯子
獣園のホモ/サピエンス秋深む/高澤晶子
花野にて獣のごとく傷つく日/田川飛旅子
走る野火獣の如く打たれをり/石井とし夫
俳句例:161句目~
樹々すきて旭さす獣園山つばき/飯田蛇笏
すぐそこに獣の穴や注連作り/吉本伊智朗
柿若葉素手にて触るる神獣鏡/図師みずき
獣の毛うかべし水や霜くすべ/吉本伊智朗
雷獣もその獣性に駈らるらし/相生垣瓜人
霜柱ぐわらぐわらくづし獣追ふ/前田普羅
冬夕焼見つめることを獣らも/正木ゆう子
火事を見るわが獣心は火を怖れ/古舘曹人
まつさきに獣の鳴きて明易し/大空知可子
もてなしの獣炭でありにけり/佐々木六戈
やぶじらみ獣も過ぎず冬となる/高橋馬相
エビネランー角獣をさしまねき/中島斌雄
冬苺見つけて獣めきにけり/さかいくみこ
血の色のすももをたべて獣めく/荏原やえ子
トマトもぐ巨獣の如き機械かな/吉良比呂武
シャワー浴ぶ体も濡れて獣めき/能村登四郎
石獣の口あけしまま陽炎ひぬ/鍵和田ゆう子
立つて待ち肉食獣の懈るさくる/鈴木六林男
花野にて見えぬ獣を連れてゐる/田川飛旅子
引廻されて草食獣の眼と似通う/林田紀音夫
俳句例:181句目~
獣追ふごとく飛びたる冬帽追ふ/猪俣千代子
沈む日に鳴き立つ冬の獣かな/長谷川かな女
同じ歩幅に来ては鼻うつ檻の獣/八木三日女
虎落笛子をとられたる獣のこゑ/山口波津女
待つといふ身の獣めく彼岸過ぎ/鳥居美智子
獣皮累々と日を享け不意のひとり/林田紀音夫
野分け吹く獣のひげを剃り落とし/津沢マサ子
獣屍の蛆如何に如何にと口を挙ぐ/中村草田男
偶蹄獣のやさしき足あと萌ゆる北/平井さち子
セーター脱ぐとき淋しい獣うずくまる/山崎光子
夜寒寝る前静かに座せばわれ獣/冬の土宮林菫哉
石獣の口よりつづく蟻の道/山崎冨美子「足音」
三角縁神獣鏡/樹液がたぎる音をうつし/山本格子
三伏の石のくぼみに眠る獣/岡田史乃「ぽっぺん」
悪銭汚職半人半獣詐欺殺人つぎの停留所遠し/橋本夢道
獣死の蛆如何に如何にと口を挙ぐ/中村草田男「母郷行」
獣を三ツ集て発句せよといへるに/猪の狸寐入やしかの戀/蕪村遺稿
立ちあがり立ちあがりして歩みゆく獣を見たり山の夜明けに/石井利明
寒夜には子を抱きすくめ寝ぬるわれ森の獣のいづれかなしき/筏井嘉一