俳句例:201句目~
着ぶくれていちばん世相に疎かりし/高星吐
着ぶくれて魅入る細首フラミンゴ/但丸義雄
着ぶくれてある日は神の眼を盗み/長谷川双
着ぶくれし身をつらぬいて足二本/今瀬剛一
着ぶくれし影ぞ裸木の影へ触れぬ/香西照雄
着ぶくれて動く歩道に運ばるる/南/小夜子
着ぶくれし子に発掘のもの並ぶ/浜崎素粒子
着ぶくれて千代女の国を徒歩く/須永かず子
着ぶくれてゐて著こなしの粋な人/高橋幸子
着ぶくれ幼き従弟が切る秣飛ぶ/田川飛旅子
砂浴ぶ鶏と同じ日向に着ぶくれて/野沢節子
絶盤のダミアを探す着ぶくれて/大西やすし
着ぶくれて忘るることに逆らはず/斎藤道子
腹われぬ教師となりて着ぶくれて/宮坂静生
着ぶくれて人の涙を見てをりぬ/大木あまり
計時するマラソン監督着ぶくれて/山前洋子
槇売りの着ぶくれて頸失へる/ながさく清江
木々は脱ぎすて人々は着ぶくれぬ/松井百枝
踏み込んでならぬ言葉や着ぶくれて/畑昌子
着ぶくれて繭の匂ひの織子たち/作田比沙志
俳句例:221句目~
着ぶくれて疑ひぶかくなりしかな/片山由美子
着ぶくれて目白去りたるあとに座す/大石雄鬼
着ぶくれて眼やさしくなりにけり/梅木千鶴子
かまきりの巣と云ふを見る着膨れて/高澤良一
着ぶくれて笑ふは泣くに似たるかな/井上土筆
着ぶくれてをるらしき声受話器より/関口謙太
着ぶくれてどこへも行けぬ万治佛/北見さとる
着ぶくれて見かへる時の富士かしぐ/皆吉爽雨
着ぶくれて誰が眼にもただ僧の妻/赤松ケイ子
着ぶくれて赤きジヤケツや舸子の妻/高浜虚子
なりふりもかまはずなりて着膨れて/高浜虚子
着膨れてただおろおろと老いてゆく/田中湖葉
着膨れてなんだかめんどりの気分/正木ゆう子
着膨れて児に唱合はす三十路はや/木附沢麦青
身の邪鬼の息づまるまで着膨れし/能村登四郎
おささらの白衣の下は着ぶくれて/岸野千鶴子
着ぶくれて出て見渡して茶の木畑/加倉井秋を
お被せする姥も着ぶくれおしらさま/佐野美智
着ぶくれてあれば刻にも追ひこされ/井沢正江
どのやうに着ても若さの着ぶくれず/朝家兆花
俳句例:241句目~
着ぶくれて列車に辞儀をいたしけり/岩田由美
人の世の荷をそれぞれに着ぶくれて/河邊式江
着ぶくれて己れなぐさめゐたりけり/澤村昭代
他人に帰せし薄き血縁着ぶくれ街/平井さち子
着ぶくれの楸邨先生とエレベーター/川崎展宏
仮の世や賽の河原に着ぶくれて/長谷川せつ子
着ぶくれてをりて母恋ふことばかり/塩川雄三
古雛は着ぶくれたまふ佳かりけり/水原秋櫻子
日筋踏んでくる着ぶくれのたまご売/中山純子
生きざまの着ぶくれてゐる影法師/赤尾冨美子
着ぶくれて我が一生も見えにけり/五十嵐播水
着ぶくれの足のはたらくゐざり機/片山由美子
着ぶくれの首を伸ばして物干せり/亀卦川永子
父は鰊場ただ着ぶくれて遊びをり/能村登四郎
父の忌へ着ぶくれし身の重さかな/猿橋統流子
着ぶくれて抱けとばかりに諸手あげ/西村和子
着ぶくれて亡母の貫禄わが継がむ/石田あき子
着ぶくれて捨て上手にはなれませぬ/鈴木華女
着ぶくれて探鳥レンズにとらえらる/甚上澤美
着ぶくれて明日信じていると言えり/寺井谷子
俳句例:261句目~
着ぶくれてゐて愛などと真赤な嘘/伊藤トキノ
着ぶくれて来ても札所のよく冷ゆる/稲畑汀子
港よりヘッドライト着ぶくれてをり/折井紀衣
着ぶくれて命をわづか濃くしたる/小田島亮悦
着ぶくれて浮世の義理に出かけけり/富安風生
着ぶくれて問はず語りの足湯かな/千葉千代子
農の着ぶくれ牛がのべたる頸たたき/加藤楸邨
着ぶくれて炉辺はなやがす埴輪子よ/小林康治
着ぶくれてよいしよといふも独りかな/谷口里美
着ぶくれし無口いよいよ寄り難き/山野邊としを
着ぶくれて禿げたるほかに賞罰なし/亀田虎童子
われを最も軽視する妻も着ぶくれぬ/猿橋統流子
しみじみと一人なりけり着ぶくれて/岩崎寿美子
着ぶくれてよその子どもにぶつかりぬ/黒田杏子
着ぶくれて素直にものの見えはじむ/戸田寿美女
着ぶくれてくらき大河を見てゐたり/伊藤いと子
着ぶくれて逢ひたき人をやりすごす/行廣すみ女
着ぶくれてそこなる夫をかへりみず/赤松ケイ子
着ぶくれてきりまんじゃろにあこがるる/松澤昭
おすわりの出来かけし子の着ぶくれて/稲畑汀子
俳句例:281句目~
をなごらもどてら着ぶくれさみだるゝ/日野草城
着ぶくれて果実酒澄むを守りゐたり/文挟夫佐恵
着膨れてゐてはごたつく句ばかり出来/高澤良一
着ぶくれて我が身の老いを飼いならす/石川清子
着ぶくれのすんなりくぐる縄のれん/小野とみゑ
着ぶくれて悩める河馬になつてゐる/郡山やゑ子
着ぶくれて恐るるもののなかりけり/多賀谷榮一
父が来て母が来て由美子着ぶくれさす/阿部完市
着ぶくれていやしからざるおとな瞽女/西本一都
着ぶくれて俳句に狎れしをとこども/小島千架子
着ぶくれて首なき老人ひとかたまり/松尾佳良子
着ぶくれてなんだかめんどりの気分/正木ゆう子
エプロンの紐のよじれて着ぶくれし/高橋うめ子
着ぶくれの猪首もをかしかりけるが/久保田万太郎
着ぶくれの腕をくみ目を閉ぢしはや/久保田万太郎
つかまり立つ子となりてはや着ぶくれぬ/大熊輝一
文化財中住みて見られて着ぶくれ子/鍵和田ゆう子
着ぶくれのおろかなる影曳くを恥づ/久保田万太郎
ラッシュアワー着ぶくれ姿を置き去りに/小俣由とり
父母もてばふるさとに着ぶくれてゐる冬/栗林一石路