俳句例:101句目～
癒えし夫太箸しかと使ひけり/増井智子
春浅く病癒えずば妻子飢う/野見山朱鳥
癒えたりし胸の奥より秋の声/長谷川櫂
癒えし子が年の豆撒く豆の音/石塚友二
癒えし子に太陽の香の桃葉湯/田中英子
松過ぎの玉露に癒えし舌の荒/久米正雄
枯芭蕉天に疵なくわれも癒え/下村槐太
梅雨溢る埠頭の端や妻癒えず/小林康治
癒えゆくや蠍座の方青葉木菟/金子兜太
母癒えよ声ふりしぼる油蝉/成瀬桜桃子
水仙の一壺凍らせ癒えずあり/小林康治
流星や癒えて訪ひたき一周忌/山田弘子
烏瓜の赤きが嬉し癒えにけり/諸橋廣子
西瓜食ふ音の最中に母癒えたり/大串章
雪蛍徐々に癒えゆく心地して/中岡毅雄
風邪癒えて論客の貌よみがへる/堀政尋
蓮如忌や癒えたる母と共にあり/村中聖火
葉牡丹や癒え難きもの胸にあり/角川春樹
萩咲けり癒えてすぐする拭き掃除/及川貞
菖蒲湯に共につかりて母癒えよ/岡本庚子
俳句例:121句目～
父癒えぬ日向いづこも虻散らし/野澤節子
ことごとく桃は袋被ぬ母癒えむ/石田波郷
やゝ癒えて降り立つ庭の桜かな/坪内逍遥
胃痛癒えて林檎の来る嬉しさよ/正岡子規
胃痛癒えて林檎の來る嬉しさよ/正岡子規
肩こりの癒えし思ひや目張剥ぐ/近衛節子
稲妻や腑抜けては又癒えがたく/小林康治
七草粥忘られしころ癒えてゐむ/村越化石
監察官マラリヤ癒えて躑躅さく/宮武寒々
牡蠣啜りしわ～笑ひ癒え難き/八木三日女
傷心癒えじ雪崩の創は雪癒やす/福田蓼汀
優曇華や癒えて杖なほ手放さず/今村泗水
刈る母に癒える青空にがいげんげ/隈治人
病癒えて力無き手や薔薇を折る/正岡子規
妻癒えぬ朝むらさきに寒しじみ/綾部仁喜
泰山木葉隠れに咲き師よ癒えよ/館岡沙緻
憤り生れきて風邪の癒えをりぬ/鈴木貞雄
春炬燵癒えて少女のごとくなり/石原舟月
父癒えて花アカシアの旅に出づ/寺岡捷子
薺打つすととんとんと母癒えよ/渡辺恭子
俳句例:141句目～
好晴に癒えてさびしくわが匂ふ/藤木清子
癒え近し紅薔薇鏡中にもあふれ/西村梛子
西瓜の匙苺の匙や癒えそむる/石田あき子
日本の風邪も癒えたる帰国の日/山田弘子
赤まんまことに茂れり妻癒えよ/谷山桃村
遠くより癒えよの便り居待月/小林紀代子
白南風の帆となれ母の癒えし杖/清水良子
掃く方の秋嶺さやに夫癒えぬ/神尾久美子
癒えそめて夫は眩しや金鳳華/石田あき子
露打つて匂ひたつ萩癒えたまへ/石川桂郎
風船軽く天井を打つ癒えたきか/成田千空
手の届く蟻つぶし病癒えんとす/原田種茅
松虫草一束呉れて癒えよとて/八橋ひろゑ
松虫草癒えてわが立つ影淡し/古賀まり子
鯖雲の夜も広ごれり父癒えよ/天田牽牛子
癒えたれば白地図一枚の涼しさ/友岡子郷
癒えし身の軽き八十八夜かな/中込ことえ
癒えよ癒えよ夫に新米噴き上る/松村多美
セーターをあれこれ鏡に夫癒ゆる/乾澄江
癒えし子に髪の艶出て花まつり/田村愛子
俳句例:161句目～
人夫癒ゆ路地に日の唄露の唄/古賀まり子
冬隣癒ゆるめどなき姉看取る/阿部美恵子
古草を踏みたしかめて今を癒ゆ/岩田幸子
癒えよとの言葉ひとつに麦青む/橋本榮治
地皮剥がれ癒ゆるがごとし春隣/香西照雄
大き手の母の手死して胼癒ゆる/黒木夜雨
春の風邪癒える心地に試着室/立崎ゆき子
富札の当たり病の癒ゆるごと/石田香枝子
我癒えて今春草を踏み得たり/松本たかし
癒えし手の吾が十指もて髪洗ふ/室田和月
妻癒えて湯浴みしてをり月涼し/藤原宇城
木の実など拾ひて癒ゆる恙かな/尾崎迷堂
栗むくをそばから食うべ夫は癒ゆ/及川貞
癒えたさの剃刀あつる寒の眉/稲垣きくの
病むは癒ゆ秋刀の秋の到りけり/石川桂郎
影もなく雪虫が来るもう癒えよ/小林康治
吾子癒えゆく夜は銀河の下に寝て/長田等
友ら癒えよまこと金銀に春の露/古沢太穂
癒ゆべしや剪り添へられし青芒/中村汀女
白菊に癒えざるものを糧とせよ/平井照敏
俳句例:181句目～
癒ゆるなし軍病院の落花以後/肥田埜勝美
癒ゆるべし夏書の写経賜はりし/加藤岳雄
癒ゆる日のために見ておく夏大空/齋藤玄
岩風呂に癒えし躬沈め夜の長き/伊東宏晃
癒え告ぐるごとく北窓開きけり/佐藤博美
癒え近き冬しののめの珊瑚いろ/成田千空
癒えたさの納豆糸引く切に引く/楠本憲吉
春暖炉わが患者らは癒えゆくも/相馬遷子
母癒えよ消えては生れる春水輪/渡辺恭子
諦めは癒ゆるを待たず春を待つ/朝倉和江
遠ひぐらし妻の郷愁いま癒ゆる/香西照雄
金燃ゆ粥煮こぼして風邪癒ゆる/河野南畦
青蚊帳の一部はづされ波郷癒ゆ/岸風三樓
押花の蘭出づ癒えしたよりなり/三嶋隆英
雪嶺は月掲げたり友癒えよ/鍵和田ゆう子
万両や癒えむためより生きむため/石田波郷
佗助の下向き咲くも癒えず死なず/松本万作
親あるうち癒えむとおもふ暦果つ/木村蕪城
諸葛菜地を踏むまでに夫癒えよ/石田あき子
傷つきつ紡ぎつ癒えゆく十指の胼/井上順子
