柏を含む俳句例
物音やさゆる柏の掌/才麿
松柏の嵐の底や返り花/正雄
少年の肩幅広し冬柏/前沢みさ
風や聖や蒼柏順順季節/阿部完市
鴬や柏峠をはなれかね/蕪村遺稿
信玄の国の大ぶり柏餠/木内彰志
松に消え竹柏に現れ藤盛/関圭草
夜は秋や雨音深き楢柏/臼田亜浪
赤彦の家に一樹の冬柏/皆川盤水
武蔵野の雀と親し冬柏/沢木欣一
夏の日や広葉柏に移りそめ/闌更
枯柏青天井の何処か鳴る/高澤良一
柏槇の茂み宿りの雨の鵙/高澤良一
枯柏啄木十五の歌まぶし/太田土男
白雨に呼び出ださるる柏かな/園女
枯柏つひに強情通しけり/高澤良一
寒月やもつとも耐ふる松柏/齋藤玄
寒鯉の桶に大利根柏屋と/田中冬二
柏槙に息ととのふる謡初/林香耀子
巻柏を植ゑた痕ありすしの石/嵐竹
俳句例:21句目~
神木の柏槙の秀に寒鴉/西萩千鶴子
柏槙に粉雪の舞ふ実朝忌/芋川幸子
冬柏むかし郷士の家構/中村与謝男
思へらく大慈大悲や冬柏/瀧澤和治
家ふかく昼の一燭柏餠/中村草田男
枯柏夕暮の子のふしぎかな/小池友子
かざり木にならで年ふる柏かな/一晶
枯柏ざわわざわわわ肉へ串/矢島渚男
悴める掌のかたちして枯柏/高澤良一
柏の香に蚣気遣ふ蚊やりかな/何某母
水うつやはらり~と柏の葉/前田普羅
槙柏の切り口赫し西鶴忌/藤川はるを
柏槙の神垣朝のほととぎす/櫻井春子
偸安や喰べて重ねし柏の葉/皆川白陀
初夢の腰かけごろに柏の木/増山美島
郭公のこゑ槙柏の高みより/平賀扶人
昼の月柏は枯れし葉を鎧ふ/横山房子
晩涼の雨が降るなり柏の木/中村祐子
山頂はこの先とのみ夏の霧/柏井幸子
夜の秋のそこの黄柏の文机/岡井省二
俳句例:41句目~
そのつやの漆皿めく枯柏/塚本美恵子
喰物もありや松尾の柏団栗/広瀬惟然
松柏椿樹くぐり居り天寿感/阿部完市
音ひとつたてず月下の枯柏/前澤宏光
顔寄せて馬が暮れをり枯柏/臼田亞浪
としよりの声の集まる冬柏/水田光雄
冬柏仙人佇ちているごとし/須賀経子
山の枯柏夕日がきて炎やす/和知喜八
冬柏阿武隈山脈ねむりけり/加藤楸邨
冬柏風に鳴りゐる安寿塚/安田千夜子
楢柏からびつくりして霜つよし/蓁樹
好文亭玉芽ゆたかに古柏/本宮銑大郎
柏槙の七〇〇年の小春かな/吉武輝子
冬柏近づきゆけば音をだす/皆川盤水
ももとせの刹那に見しは枯柏/攝津幸彦
柏落葉厭ふべきものに顔ひぬ/草間時彦
水柏つひに軽鳧の子見失ふ/石田あき子
田をめぐり来し朔日の赤柏/宇多喜代子
秋や今朝たつを真袖に三津柏/上島鬼貫
竹柏林幾代神びぞしぐれつつ/下村槐太
俳句例:61句目~
花柏しみじみと茶の甘きかな/石川桂郎
葉のついてゐるのは柏雪の原/高木晴子
隆として柏槙老樹虚子忌かな/高澤良一
離農の護符白く炎えだす凍柏/寺田京子
風つよき夜々の柏の枯葉かな/根岸善雄
ぴんぴんに空張りにけり枯柏/高澤良一
オホーツクの風の饒舌枯柏/青野れい子
枯柏風打ち勝って飛ばしけり/高澤良一
母亡くて閉ざす裏木戸枯柏/詫摩まつ子
いつ涌きていつ降る雪の玉柏/上島鬼貫
ゆく春や松柏かすむ山おもて/飯田蛇笏
サイダーや溜飲下げる泡が好き/柏道子
三つ柏庭の一葉もいただかん/椎本才麿
二タ本の柏の冬に入りにけり/岡井省二
初霜や兒の手柏のふたおもて/正岡子規
十月や信濃の柏なほあをく/望月たかし
夕づく蛾柏大樹をめぐりをり/石田波郷
小鳥鳴く山のなさけの柏の実/成田千空
村ぢゆうに濤音ひびく冬柏/永田耕一郎
松柏の下はんざきを囲ひたる/藤村克明
俳句例:81句目~
柏槇の岬の冬日賜ふ句碑/阿部みどり女
金色となる日を待てる冬柏/高野ムツオ
風あればすぐに音して冬柏/瀧澤伊代次
夏もはや葉広柏のかげつくる/鈴鹿野風呂
ゆふだちに呼いださるる柏かな/斯波園女
あるときのおのれに会ひぬ夏柏/岡井省二
柏の葉生きて雪野を駈けつづく/堀口星眠
竹柏の葉擦れ愛しきものは袋角/中北綾子
柏の葉柚の花水を打ちにけり/岡本癖三酔
植うるもの葉広柏の木の実かな/高浜虚子
熊野路や竹柏にさす月とこしなへ/桂信子
赤芽柏のとみに赤きは鳥も来ず/野沢節子
春愁のひとりしゆけば竹柏幽か/森川暁水
枯れ果つをひとり柏が肯ぜず/篠田悌二郎
柏槇の拱手突つ立つお風入れ/中戸川朝人
春愁にありつつ竹柏の夕を去る/森川暁水
風騒のさくらを抜けて柏槇に/中戸川朝人
継ぐ子なき酒屋の閉ぢる冬柏/斉藤志津子
戞つと落ちし柏古葉や五月闇/島村元句集
弾む歩に赤芽柏が芽をほどく/岡本差知子