俳句例:201句目~
寒き日をやたら電話に立つ事ぞ/羅蘇山人
極月の電話明るく切りてさて/稲垣きくの
死後の景電話ボックス雪に点る/奥坂まや
春愁の電話止むまで鳴らせおき/朝倉和江
鈴蘭や電話待つ夜のしらじらと/脇坂啓子
水見舞電話の遥かなる師より/山内傾一路
春遅々と寺へ電話をする用事/蓬田紀枝子
長き夜や電報めきし子の電話/井田すみ子
時の日の四十路半ばの子の電話/石田小坡
雪降りつもる電話魔は寝ている/辻貨物船
突然とうれしき電話露の朝/ミュラー初子
九月はじまる無礼なる電話より/伊藤白潮
モネの絵に電話が鳴つて春の雪/鈴木鷹夫
電話かけさうになりしが露の人/川崎展宏
電話とは死も知らせくる春の月/嶋田一歩
電話なき霜夜の部屋の広さかな/谷口桂子
電話また仕事追ひ来ぬ花曇り/米沢吾亦紅
白梅に電話のベルのやがて止む/川崎展宏
月光の差し込んでゐる電話かな/石田郷子
十六夜や間違ひ電話の声に惚れ/内田美紗
俳句例:221句目~
眠る沼呼出し電話は背中に鳴る/寺田京子
初夢を聞かせてくれし電話かな/山田弘子
夜の秋や駅の電話に疵あまた/松倉ゆずる
日曜の子に電話鳴る新樹かな/大谷碧雲居
神有の出雲より来し夜の電話/金久美智子
木々は芽に電話ボックス話し中/山本歩禅
かたばみや隣家の電話鳴りつづく/谷和子
電話来て退屈の去る夜長かな/嶋田摩耶子
電話繋がりりんごの弘前観光課/高澤良一
メモにとりうれしきことの初電話/富安風生
初電話いたはり合ひておない年/今井つる女
初電話いま在るいのち賛へあふ/石橋あき子
十六夜の出先へかゝる電話かな/鈴木真砂女
初電話伊豆の下田へつなぎけり/稲垣きくの
初電話兄出て子が出てやつと母/徳富喜代子
初電話声もうららに癒えたまふ/古賀まり子
電話越し孫たどたどし初夏の風/米田タヅ子
初電話梨のつぶての息子より/田中丸とし子
喪に触れぬ言葉をえらび初電話/柴田慧美子
電話鳴るや雷雨過ぎたる窓の空/大谷碧雲居
俳句例:241句目~
待つてゐし初電話今ひびき鳴る/今井千鶴子
揺り椅子の揺れをのこして初電話/田中/菊
遠き電話切れて一人の虫しぐれ/青木/愛子
電話鳴る顔見合せて炉辺立たず/佐野喜代子
佐渡よりの電話のあとのちちろ虫/細川加賀
風邪ときゝ流しもならず電話する/高濱年尾
仕事始め社長電話を置く暇なし/笠原ひろむ
子の電話待ちつゝ母の日の暮るゝ/吉本信子
卯波うつくし透明の電話ボックス/対馬康子
雛の部屋に朝の電話の鳴つてをり/鈴木鷹夫
廟事務所に鳴れる電話や竹の秋/楠目橙黄子
妻の初髪電話に鳴られどほしなり/樋本詩葉
新社員電話づかれにひと日了ふ/落合伊津夫
切ってすぐ電話が鳴るも星合ふ日/白水風子
鳴つている電話放置や五月病む/大木美代子
途切れがちなるパリからの初電話/黛まどか
真夜に鳴る電話は不吉蚊帳を出る/細川葉風
待つとなき電話母の日暮れにけり/黒坂綾子
秋の夜の妻の電話のささやくごと/芦沢一醒
秋暁の電話たしかに訃を耳朶に/柴田白葉女
俳句例:261句目~
アネモネや恋育てゐる子の電話/深澤/厚子
四面雨滴の電話ボックス/ごころ/庄野民枝
ひとの恋の電話とりつぐクリスマス/金子潮
春の海のかなたにつなぐ電話かな/中村汀女
春の炉のそばより電話くどくどと/岸本尚毅
色鳥の尾羽のきらめき来ぬ電話/恩田侑布子
雲の峰留守の電話が鳴りつづく/吉田ひで女
恵方より電話の祖母や癒えはじめ/橋本榮治
合格電話ぼた餅の手に汚したる/松倉ゆずる
こんな夜は雪女こんな夜に電話/藤本草四郎
電話ボックス占めて水着の漢かな/西村和子
ぎっくり腰遅日の電話鳴らせおく/高澤良一
釣瓶落し子はそれぞれに電話持ち/岡田菫也
薔薇園の小屋の中なる電話鳴り/深見けん二
初電話にて受く添削の礼ねんごろ/田川飛旅子
初電話巴里よりと聞き椅子を立つ/水原秋櫻子
寒暴れの門司の海越え来し電話/竹下しづの女
子らとまる電話かかりし二日かな/五十嵐播水
嫁ぎての電話トマトも植ゑしと言ふ/菅田静歩
アンドロメダ忌空屋の電話鳴りにけり/関悦史
俳句例:281句目~
春の夜のだれかに電話かけたくて/犬島とし子
ふひに切れる電話のむかうそぞろ寒/谷口桂子
かたばみを捨てて電話に出でにけり/高澤良一
師の電話わづかにぬくし喪の正月/山本つぼみ
間違ひ電話声なつかしや夏夕/戸田いぬふぐり
風邪の旅電話いきもの何処でも鳴る/寺田京子
風邪声の電話に風邪をうつさるる/岩切恵美子
さよならはそっと手を挙げテレビ電話/伊藤梢
吾子の電話へ愛猫涼しく鳴き込める/奈良文夫
きりぎりす電話のベルに鳴きやみぬ/藤本朋子
萩寺より根分けの知らせ電話にて/能村登四郎
梅雨の電話来るなと云ひて待ちてをり/毛塚静枝
ごきぶりを目に追ひ電話つづけをり/長屋せい子
どこか違う電話の向こうにある枯野/早乙女文子
嫁ぐ娘へのちやんづけ電話あたたかし/瀬野美和子
嫁ぎし子の声はづませて初電話/上原瑞子/『燈台草』
谷を越して電話鳴りけりサンマータイム/長谷川かな女
電話のダイヤルどこを廻しても平和でいい/雑賀茄子王
さみだれや船がおくるる電話など/中村汀女「汀女句集」
「誰だって淋しいさ」/深夜電話の彼へ/いう/島田一葉子