灼くを使用した俳句

俳句例:101句目~

洪水あとの石白く灼け鳥渡る/臼田亞浪

海灼くる四肢もて余す少年に/清水衣子

海照りて鬼の手作り岩を灼く/高澤良一

湖に突き出して木の灼け桟橋/右城暮石

湖を搦め灼くる太古の道一筋/西本一都

マラルメて誰梨は木に灼け響き/竹中宏

灘灼けて無辜の一舟漂はす/下村ひろし

灼かれゐる大絶壁に巨眼空く/仙田洋子

灼くる日に大鉄骨は翼なす/鈴鹿野風呂

灼くる正午索道宙にいこひをり/登四郎

灼くる空へ煙突残し瓦礫の山/原田種茅

仰向けに倒れて灼くる風化仏/佐野農人

没日凍て暗き火口の像を灼く/石原八束

灼けず濡れず真赤な水着肉余る/下田稔

厦灼けぬなにか憤しく灼けぬ/下村槐太

灼けにけり氷柱の先の遠い雲/佐野良太

灼けゴビに長城力尽きゐたり/平野謹三

灼け熔岩にわれを窺ふ鴉の眼/伊東宏晃

向日葵の灼ける頸筋力欲し/田川飛旅子

灼け砂に藻屑を焚きし跡匂ふ/栗原政子

俳句例:121句目~

土灼くる日の続くなり棉の花/原田青児

灼け紅旗へんぽん関羽生誕祭/高澤良一

灼け雲や竜骨海の荒れ呼んで/河野南畦

照りつける鉄砲鼻に葛灼けて/高澤良一

熔岩灼くるしづけさ天に日は駐り/草堂

地獄灼け悪鬼の胸に汗きら~/横山白虹

地獄灼け面もふらず人うごく/横山白虹

爆心の残壁の灼け手に沁ます/中島斌男

牛の貌憶えず灼けて牛後たり/中島斌雄

看板の背骨西日に灼かれゐぬ/羽部洞然

夏灼けし小島を頼み徒人海女/桂樟蹊子

矢鱈赤き看板灼けて物価高/猿橋統流子

石灼けて賽の河原に一穢なし/稲荷島人

砂の上砂吹かれゆく灼け砂丘/松田多朗

砂丘灼け天日あをき灘に照る/伊東宏晃

砂丘灼け巫女出さうな濤の牙/河野南畦

磧灼けバッタは石の色に飛ぶ/草村素子

夾竹桃東京砂漠灼けはじむ/千代田葛彦

縄跳びの灼け跣子と鶏の足/小檜山繁子

花々やかくも灼けたる花圃の土/瀧春一

俳句例:141句目~

宇宙船あばたに灼けて冷房裡/高井北杜

草灼くるにほひみだして鶏つるむ/篠原

莨なし食後の河が灼けてゐる/片山桃史

葛灼けて菅江真澄のゆきし道/高澤良一

蟹さんの型押し遊び灼け砂に/高澤良一

被爆像仰ぎ現し身灼かせをり/中島斌男

貨車灼けて満載されている怒り/森武司

蹠に灼けつく土や粟を蒔く/久保白茅子

巌灼けて真鐵の光り濤摶てり/内藤吐天

逆縁の身を灼く暑き日なりけり/滝青佳

逆髪は姉にてものを灼く陽にて/竹中宏

姑なくて灼けしままなる休み石/影島智子

海路来て灼くる埠頭に旅終る/山口波津女

胸灼く酒雛といふもの我に会ふ/石川桂郎

おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ嶽/加藤楸邨

馭者の鞭灼くる大地を打てりけり/森田峠

鴟尾灼けて顔も尻尾も向ひ合ふ/北野民夫

鶴は病めり街路樹の葉の灼けて垂り/鷹女

こんなにも灼けゐる墓石西林寺/高澤良一

灼ける肌の一部分にて痒がる耳/河合凱夫

俳句例:161句目~

麦穂だつ陽は鉄塔に灼けそめぬ/西島麦南

黄土灼け巨大な影法師と歩く/小檜山繁子

石伐つて壁に垂線百灼けたり/田川飛旅子

灼くる日の陸に積まれて波殺し/白井房夫

はらからと喪服を灼かる炎天下/高澤良一

蟻つよく生きて一茶の山河灼く/宮津昭彦

灼くる嶺よし青年の肩見るごと/大野林火

河口灼けゆうべの夜光虫を見ず/栗生純夫

灼ける鴉砂防より湧く土工の唄/齋藤愼爾

わが灼くる影をちぢめて爆心地/佐野美智

わたつみに楫取り損ね灼け汐木/高澤良一

果てしなき熱砂に両親揃わぬ子/対馬康子

イスラムの墓灼けてゐて貴賎あり/森田峠

エーゲ海睦みて水虫も灼ける/八木三日女

流木や熱砂に消ゆる河なれど/鳥居おさむ

蜘蛛の囲の糸灼けをらん晝つ方/高澤良一

砂丘灼けつひにひとりの影尖る/山口草堂

葭切や灼けたる茎を掴みをる/佐々木六戈

熱砂ゆくなほ白靴を捨てきれず/野澤節子

涼風熱風こもごもいたる白河原/福田蓼汀

俳句例:181句目~

灼けしづむ天に涙のとどかざり/仙田洋子

機翼灼け眼下に都市をあざけるか/皆吉司

灼け土にしづくたりつつトマト食ぶ/篠原

三時草鋪道は灼けてほてりをり/高澤良一

主峰なほ灼けふかみをりわが裡にて/昭彦

砂日傘ひらき頃なる砂の灼け/能村登四郎

休日のシャッター灼ける問屋街/西村和江

原爆屍かつと口開け灼けつく地/中島斌雄

漁夫の葬舟を熱砂に曳き上げて/津田清子

熱砂ゆく捨て猫と化し街に出る/対馬康子

熱砂砂塵こころ庇ふに限りあり/小池文子

熱砂降る砂漠の薔薇と言ふは石/小池文子

地の塩が白を凝らせり灼け砂漠/品川鈴子

熱風や眼灼かれ行くや夫に蹤き/小池文子

地獄灼けガツと鳴り鎖す鐵の扉/横山白虹

地獄灼け天使の翼見ることなし/横山白虹

城灼けて海灼けてここ母のくに/奈良文夫

塩噴いて流沙の川の灼けにけり/下村梅子

灼け砂に踏板埋れ途方なし/長谷川かな女

砂灼けていしを一事として帰る/小宮山遠