俳句例:101句目~
秋惜しめいのち惜しめと鉦叩/寺島美園
夕焼雲仰ぐいのちを大切に/古賀まり子
月光といのちの間の濡れ縁よ/齋藤愼爾
秋冷の牛舎いのちという匂い/対馬康子
秋の風いのちを浚ふほど吹かず/齋藤玄
空蝉のいのちを生みし足構へ/根本文子
晴れすぎて翳るいのちの雪螢/福永耕二
穴迷ふ蛇のいのちに日あか~/久米正雄
しじみ汁いのちの限り母の恩/角川春樹
大服や身弱きいのち守りきて/永井寿子
果汁にて保ついのちや松の内/朝倉和江
囀はあふれるいのち運び来る/千田初江
綿虫にいのちの重さありて泛く/神蔵器
益荒男のいのち耀く玉せせり/白水風子
白やいのち震へて溶けさうに/北澤瑞史
愚かにもいのち拾ひし十二月/原田青児
おろそかにいのちを思ふ今年竹/斎藤玄
子規いのち縮める従軍鶏頭花/高澤良一
宝恵駕の紅白の紐いのち綱/橋本美代子
水平線まるし瑞々しきいのち/藤木清子
俳句例:121句目~
文弱のいのちの硯洗ひけり/上田五千石
緑萌ゆ岩にいのちを与へつつ/雨宮抱星
白障子透かして母のいのち見ゆ/石寒太
寒廚蟹がいのちの音を出す/松井鴉城夫
寒星やいのちの果ての北枕/佐藤きみこ
いのち澄む思ひや芒一本活け/村越化石
稲妻やいのち日数に数へられ/須藤省子
空蝉のいのち全く抜けしいろ/木内怜子
いのち減る迅さに秋の水流れ/馬場駿吉
ねんごろに戀のいのちの髪洗ふ/上村占
寒鯉のいのち静かに相寄れる/山内遊糸
糸蜻蛉いのちあるものみな美し/駒崎盤
黒髪がいのちのむかし針供養/太田寛郎
繋ぎ来しいのちの前や今年竹/杉山岳陽
御涅槃のあと追ふのいのちかな/鳳/朗
黄帷子残りしいのち涼しくす/立花豊子
麦粥を食ふやいのちの精一杯/斎藤空華
鶏頭やいのちまたけきものをむ/森澄雄
鳶工の五尺のいのち鳥雲に/福田一六四
鮑とり桶をいのちの熊野浦/鈴鹿野風呂
俳句例:141句目~
枯蟷螂いのちおぼろの影いだく/上村占
いのち透く白に箸ためらひつ/村上光子
頼みあふいのち二つや小豆粥/吉井莫生
空蝉や予後のいのちの軽さとも/早崎明
露ならて何をいのちそ棉の花/正岡子規
電工の身に料峭のいのちづな/林十九楼
雪烈し天へ天へといのちづな/河合凱夫
やはらかきいのち犇く春蚕かな/檜紀代
種袋切つていのちを与へけり/石川文子
雪の墓参他郷にいのち虐げて/木村蕪城
雑煮喰ぶ齢積りしいのちかな/角川春樹
雁の声いのちの上にさしかかる/齋藤玄
夏の月水のいのちを纏ひけり/栗林千津
酷使せしいのち悔なし花は葉に/早崎明
郭公や草の高さの草のいのち/高橋馬相
疾く消える雪もいのちの若なかな/闌更
種蒔いて黒土にいのち弾む日よ/三谷昭
年惜む即ちいのち惜むなり/上林白草居
追憶のいのちを語りあうさくら/隈治人
赤しまろしいのちの初心実萬両/林昌華
俳句例:161句目~
詩人伝一夜いのちの冴えにけり/大串章
被爆忌のいのち素直に髪洗ふ/中尾杏子
初髪に沈む珊瑚の紅きいのち/長谷川秋子
古墳見る膝にいのちを摶ちし虫/桂樟蹊子
叫ぶものに皆いのちある吹雪哉/石井露月
地明かりや静かに蜂のいのち這う/三谷昭
炎ゆる間がいのち/女と唐辛子/三橋鷹女
埋火やいのちの彩の淡きこと/中村まゆみ
夏空の羅馬やいのち惜しみ来し/小池文子
夕顔のひと夜のいのち月に咲く/吉澤卯一
大凧のいのち十指にひびきけり/板垣紫洋
大白鳥いのちさびしむ声出せり/仙田洋子
天地にいのちはひとつ灌佛会/瀬戸内寂聴
いつ死ぬか解らぬいのち古浴衣/尾村馬人
太箸やいのち惜まむ四人子に/沢田弦四朗
いのちありて今年の秋も涙かな/正岡子規
寂光にいのちしづけき穴まどひ/栗生純夫
寂寞といのちあかりに恵方かな/角川春樹
寒鯉のいのち触れ合ふ音に覚む/白澤良子
いのちあるもの皆眠り冬ざるゝ/能美丹詠
俳句例:181句目~
いのちいま荒野野菊と花あそび/花谷和子
屠蘇くめや短くなりしいのちの緒/森澄雄
いのちかな菊は乱れて色増しぬ/林原耒井
山深く山女のいのちいただきぬ/北島大果
折鶴にいのち吹き込む原爆忌/平岡しづこ
捨案山子いのちの棒を横たへて/中村明子
いのちとてわがものならず冷奴/山崎冬華
数の子喰ふ無数のいのち黙殺し/藤岡筑邨
足裏にいのち涌くつぼ夏はじめ/手塚美佐
春雷やいのちあらたに厩の灯/東田ただし
いのちなほともしつづけよ油蝉/松村蒼石
昼寝覚発止といのちうら返る/野見山朱鳥
いのちなりけり元朝の那智の滝/松尾隆信
いのちなり牡丹の奥の奥の渦/殿村莵絲子
いのちなり白萩落花掬ふべき/河野多希女
晩菊のいのち大事とねまるなる/勝又一透
いのちのぶ寒紅梅に島見して/中戸川朝人
殻を脱ぐ蝉のいのちを励ましぬ/吉年虹二
母なくて筋子のいのち灯に透ける/北光星
毛糸玉或る時いのちふつと無し/池田澄子