俳句例:101句目~
父を語り了へて箸とる菊膾/中村若沙
手を握るから熱帯語り出す/高橋浅夫
花槐語り明してみたくなり/西野達子
語り尽てほつほつくたく榾火かな/麦蘿
語り部となりて古墳の虎落笛/田辺レイ
語り部のいつしか薄羽蜉蝣へ/北迫正男
語り部のおほかた女人原爆忌/田川研一
お頂上皆かほよせて語りけり/籾山柑子
語り部の使命いや増す原爆日/久保厚子
語り部の守る曲り屋の大夏炉/山崎羅春
語り部の遠野の話梅雨に入る/土井桂子
語り部の鬼火がゆれる耳の中/木村正光
しぐるるや語り始めし石人像/立木節子
赤い口ひらひら地下の語り継ぎ/穴井太
その人と入れし素語り在芝居/茨木和生
それとなく老後を語り月の道/松尾緑富
追憶のいのちを語りあうさくら/隈治人
邯鄲や貧しさ語り継がれ来し/稲畑汀子
どの柄も亡母の語り部藍浴衣/渡辺恭子
長き夜を長き語りに島歌舞伎/宮津昭彦
俳句例:121句目~
開拓史語り涼しき眸なりけり/山田弘子
雁のこと問はず語りに牧場守/依田秋葭
よべ星と語りし秋を惜み発つ/稲畑汀子
露秋の語りのこせしこと思ふ/大橋敦子
青峰忌語り部のごと招かれぬ/大輪/昌
鷹の性憶ゆるままを語りくれ/京極杞陽
黙々と土と語りて耕せり/阿部みどり女
一音を落とす語りべ雪月夜/伊藤てい子
不図友に山路の雲雀語りかけ/飯田蛇笏
供養とは語り継ぐこと梅白し/杉村凡栽
名月やむかし名妓のもの語り/堀内敬三
吾亦紅語りつくせぬ一夜かな/杵村茂乃
四五日の旅を語りて日焼して/小野白湖
墓参せず身重の妻と語り合ふ/杉山岳陽
夏蚕村秩父一揆を語りつぎ/河野多希女
夜光虫波の言葉を語りけり/徳永山冬子
夜語りや檜山の露の膨らまむ/宮坂静生
大利根の霧深きこと語り合ふ/山口昭義
大食の子規を語りて柿を剥く/岩崎照子
天誅の志士語り継ぐ晩夏の碑/磯野充伯
俳句例:141句目~
夾竹桃語りつくして黙すのみ/小坂誠子
布晒し川を挟んで語りけり/佐々木北涯
帰国子の語り尽せぬ夜長かな/佐藤博重
年酒酌む夜発つ若者らと語り/大野林火
座布団に語り部の居ず四月逝く/神蔵器
後の月きのふの如く虚子語り/山田弘子
戦争を語りし夫の亡き夜長/岡田佐久子
方言かなし菫に語り及ぶとき/寺山修司
春さむく路に漁樵の語りあふ/飯田蛇笏
春昼や庭師石にも語りかけ/富田くにを
春雪の伊勢路を語り曽良語り/山田弘子
更待の寝髪となりて語りけり/福村寿子
本陣の語りぐさにと土用干/阿波野青畝
東風吹くと語りもぞ行く主と従者/太祇
枝豆のあとさき鋏む語りをり/永井龍男
桑の実ふくみ語り下なる我家/喜谷六花
涅槃西風昔語りの母と居り/古賀まり子
温風の樹に添うて女語りゐる/島道素石
蜩もまた語り部の遠野かな/西牧トキ子
炉語りの一夜鉄鍋たぎるかな/坂内佳禰
俳句例:161句目~
熊撃の夜語り雪となりにけり/鈴木野菊
王の悲話語り継がれて湖の秋/稲畑汀子
生き死やがやがや語り墓参り/中山純子
病む母の昔語りや夜の長し/八牧美喜子
白地着て種の絶滅を語りけり/椹木雅代
盆の月しばらく兄と語りけり/黒田杏子
矍鑠と老い狐火を語りぐさ/猪股千代子
秋灯に語り部となる添寝かな/田口許甫
秋風裡死者の語りの巫女老い/河野南畦
綿虫に語りかけたき夕かな/久岡千代子
緑蔭に語りはじめし宇治拾遺/筑紫磐井
羽蟻に寝る語り語りて友三人/金子兜太
聞き伝へ語りつたへて震災忌/星野立子
聴診器ぬくめ語りに火桶あり/川畑火川
菱採の盥よせ合ひ語りつゝ/嵯峨崎呑月
薫風や幼な馴染と語り合ふ/清水八重子
蚊帳たたむ嫂母を語り尽きず/永井龍男
衒いなき木綿豆腐の語りぐさ/猪爪やゐ
語りつぐわれら十年一日の梅/古舘曹人
語りつゝ悲話に鼻かみ十夜僧/河野静雲
俳句例:181句目~
語り出す明治十とせの秋の頃/寺田寅彦
語り合ふ病歴ながし麦湯濃し/目迫秩父
語り婆遠野の虻をつれて来し/小原啄葉
花暮れて吉野語りの尽くるなし/山田弘子
白れむやあしたの霜を語り過ぐ/臼田亞浪
おだまきや亡き人語り山語る/三石千代子
空襲を語りて老ゆる寒夜かな/冨ケ原寛治
春めくを語り見舞に居すごしぬ/荒井正隆
この月に語りかけたる一茶かな/京極杞陽
さりげなく語りゐる座の隙間風/高野彩里
さわやかに死を語りをり苺皿/柴田白葉女
夜語りの膝をつゝみぬ紅葉狩/大橋櫻坡子
語りべにのり出して児や棗食む/小池文子
語りべに市長も出でし夏芝居/松田トシ子
ふるさとを語り掌に載す巴旦杏/伊藤京子
語りべの鬼になるとき稲びかり/佐藤綾子
やゝ寒き飯のうまさを語りけり/尾崎紅葉
語りゆく夜寒の道のめをとかな/松村蒼石
語りゐし望に照らされ兵ねむる/相馬遷子
炉語りを長押の槍を見つゝ聞く/伊藤柏翠