俳句例:201句目~
謡本開けしも閉ざす秋思かな/浜田みずき
メーデーの日の空席に本置かれ/森田智子
万緑にレーニンの禿本を読む/大木あまり
購ひし本忘れまた購ふ十二月/上野さち子
元日に読む本買ひぬみそさざい/小川軽舟
紙這いし浄瑠璃本の裏絵かな/卯坂久仁子
身ほとりに聖書経本露けしや/古賀まり子
出し渋る本こそよけれ長き夜に/高澤良一
函強く振つてとり出す梅雨の本/高澤良一
木の葉髪妻居てけふも本を読む/高澤良一
十二月こちらの本をあちらへ積み/桂信子
本購わな二月無慚な道路を越え/寺井谷子
和綴本の折目うすれし竹の春/木下ふみ子
在五忌や母が手擦れの和綴本/大江加代子
素足吹く風あり本を読み継げり/高澤良一
夕顔や本をかさねて重かりき/猪俣千代子
子規筆記幾何学の本のどけしや/高澤良一
寝る前に本すこし読む良夜かな/辻田克巳
読みきれぬ本を抱きて睦月過ぐ/立岩利夫
錘のごと本提げ揺らし夕桜/鍵和田ゆう子
俳句例:221句目~
床頭台につみかさねた本の歳月/住宅顕信
書棚の本入れ替えてみる桜桃忌/高澤良一
障子古り妻の書架にも本ふえて/田村了咲
数え日の小遣いはたき買へる本/高澤良一
雛の日や古紫なる本の出来/長谷川かな女
秋の昼着たきりすずめ本を読む/高澤良一
本を積み重ね星飛び窓を閉め/池内友次郎
雪の嶺々つひに求めし本を抱き/宮坂静生
色鳥はわが読む本にひるがへり/山口青邨
雷の夜の乏しき本をいとしめり/細谷源二
本伏せて蟻のゐさうな庭に出づ/高澤良一
秋は夜を物のあはれをものゝ本/角田竹冷
青木の実譜本に褪せし姉の文字/中里房子
緑陰にヘツセの本をかかへ来ぬ/仙田洋子
本を出て遠くゆきけりあはれ紙/山口青邨
春灯下絵本散らばりそこら赤/今井千鶴子
鳥の恋本の名を決めかねてゐる/田中裕明
本売つて燕くるまで食ひつなぐ/岩田昌寿
点字本なる喜寿艶やお風入れ/波出石品女
本をよむ水夫に低き日覆かな/楠目橙黄子
俳句例:241句目~
本臥せていつも眼とあふ木守柿/福田蓼汀
膝に読む本のぬくもり目借どき/作田文子
蝶うてば本に淋しき箔のあと/室積波那女
本借りに行きて出されし砂糖水/上南定昭
本などは紅葉の谷に投げ棄てむ/鳥羽三郎
本だなの抜きあと深く雪催い/川崎ふゆき
煤掃了へ不服と云へば本の位置/高澤良一
花更へて本積みかへて夜寒なる/前田普羅
蘆の芽や覗いて見たき人の本/加藤知世子
虫くひの系図の本も干されけり/正岡子規
本売りにゆく白日のつばくらめ/太田鴻村
利休忌や茶の本の手に軽うして/相生垣瓜人
こほろぎの本のかげよりおなじ顔/山口青邨
枯るゝ夜を飛行機野郎の本を読む/高澤良一
ふところに吉原本や扇うり/岩翁「伊遠衣」
ほうこんな本が出たかとメモ始め/高澤良一
蒲団すぐ本にかこまる職無くて/田川飛旅子
毒の本はびこり良書黴びにけり/那須ゆう子
梅雨の本ブックエンドに挟まれて/高澤良一
紙食うてこゝろもとなき和綴本/片岡片々子
俳句例:261句目~
本一冊持つてそこらへ花見かな/山口都茂女
籐椅子の人みな本を得てしづか/波多野爽波
冬夜親しく読む本を父に覗かれる/大橋裸木
老いて読むつもりの本や春の塵/北見さとる
吾子の本皆片づけて夜寒かな/阿部みどり女
三ケ日も書斎派と決む本買ひ込み/鈴木栄子
山荘の障子開ければ本ばかり/長谷川智弥子
山頭火の本の中から遠くわっこう/高澤良一
死のごとき不毛の部屋に本を積む/高柳重信
指もて切るアンカット本みどりさす/有働亨
本の囲ひ生涯解かず夜なべかな/池上奈々子
春はあけぼの復刊本もセピア色/渡邊かづ子
書架の本ひとり傾く日のさかり/篠田悌二郎
書評子に読んで価値ある本もなし/筑紫磐井
机ならべて本新らしき遅日かな/大谷碧雲居
長き夜の本を持ち替へ持ち替へて/高澤良一
煤払ひどうにもならぬ本そのまま/高澤良一
灯火親し親しからざる本も積み/鍵和田ゆう子
すいつちよの我が持つ本にとまりけり/佐藤行
本くるゝ叔母今日も来ず春の風/長谷川零餘子
俳句例:281句目~
本あけしほどのまぶしさ花八つ手/波多野爽波
本開けしほどのまぶしさ花八つ手/波多野爽波
ゆらぐまで本積みあげて年逝かす/上野さち子
本の背でスイッチを押し春ともす/正木ゆう子
我鬼忌とて本を読まざる日なりけり/多田英治
鈴虫へ夜な夜な読めぬ本溜めて/長谷川かな女
灯下親し手振りして読む手話の本/小松世史子
新しい本買ってきてさむい夜ただいま/三好草一
本ばかり読んでゐる子の夏畢る/安住敦「古暦」
本の名は『河馬に噛まれる』霜月夜/大木あまり
本を読む子にランプより炉火明り/阿部みどり女
この辺の何処かにサザナミヤッコの本/高澤良一
もつ本の寒さはおなじ電車かな/飛鳥田れい無公
八重くちなし書くために読む本の嵩/鍵和田ゆう子
経本一巻りんだう絶ゆることなき部屋/長谷川秋子
本屋に本をよみにきてガスの夜は異國です/吉岡禅寺洞
やけのこつた本がすこしそれもうり松虫の夜/吉岡禅寺洞
丸善に本探しをり夕爾の忌/安住敦「柿の木坂雑唱以後」
キラリと紙がにげたうれのこりの和本のなげき/吉岡禅寺洞