俳句例:101句目~
本を買ふ夫に従ひ遅日なり/宝亀重子
夏痩や枕にいたきものゝ本/正岡子規
夏若し本を買はむと足速く/細谷源二
夏虫の死で落ちけり本の上/子規句集
本を閉づ夜寒の汽笛栞とし/清水衣子
本借りに二人正月少女かな/皆川白陀
夜の秋夫を師とせる謡ひ本/後藤房枝
本読めば本の中より虫の声/富安風生
かの世より届きし本と冬籠り/長谷川櫂
本買へば砂触りある二月の夜/原田種茅
読初や手慣れそめたる筆写本/西村和子
ここ迄と長夜の本の耳を折る/高澤良一
この書院本を堆みたり山涼し/岡井省二
木の葉髪視力が落ちて堅き本/高澤良一
本伏せて眠つて居るや春の草/野村泊月
身ほとりに本うづ高く建国日/榊/澄子
梅雨の雷神田に本の衝動買ひ/関森勝夫
遠い町に本積んでいる働いて/阿部完市
つれづれや青き穂麦が本の上/岩田由美
歳晩一泊遼太郎本ポケツトに/尾村馬人
俳句例:121句目~
金獲たり本の神田の雁高し/松崎鉄之介
本を買い苺の箱と重ねもつ/田川飛旅子
沖繩の本に挟んだまま忘れ/武馬久仁祐
注文の本取りに行く梅雨の街/町田一雄
門燈に夜学子本をひらきすぐ/皆吉爽雨
雁や売るべく本をふところに/小宅容義
雜煮腹本ヲ讀ンデモ猶ヘラズ/正岡子規
ウインドに光悦本と水中花/池上不二子
青年に汐満ちて来し本の中/山崎十死生
春炬燵目から鱗の落ちる本/岡田もりを
黒南風や覆刻本の文字かすれ/石川桂郎
二三冊年をまたぎて本借りぬ/高澤良一
並ぶ本たてよこななめ燕来る/小宅容義
紙なれば本の厚さを生甲斐に/藤田湘子
乗り継いですぐ本開く受験生/中垣紫星
乱丁の本へ逃げ込む赤とんぼ/大西泰世
五月雨や垢重りする獄の本/和田久太郎
借りし本返さで古りぬ一葉忌/西村和子
優曇華や全集本の巻まちまち/石川桂郎
本に本寄りかかりをり年の内/高澤良一
俳句例:141句目~
児の本にふえし漢字や麦の秋/木下夕爾
燈火親し楷の木の本展ぐれば/高澤良一
冬凪の倒れくるもの本その他/永末恵子
父と子と同じ本買う文化の日/星野幸子
牡丹散り終日本を読まざりき/山口青邨
白樺派の本並べある夏炉かな/明隅礼子
初蝶やわが本もまた街に出ぬ/山口青邨
初買を本と定めて書肆覗く/川又百合子
破滅的美少女奈良から本購ひに/金井明
積み上げし本何時崩る震災日/高澤良一
積む本の言の葉の圧/日雷/西尾千佳子
穴まどひ貸出本の期限切れ/藤原詠津子
本の虫われら蓼喰う虫一族/八木三日女
夏休み三島文学本買ひ足す/恩田代美子
経本の耳のささくれ黄砂くる/重田忠雄
本あまた銭とかへたる春夜かな/上村占
大学の眠れる本やほととぎす/中村夕衣
大年の本にも倦めば何とせう/高澤良一
大根の薹を立たせて本の蟲/佐々木六戈
夫の本子の本を読み小春なり/香西照雄
俳句例:161句目~
子に借りる本や白梅夜も散り/原コウ子
子へ贈る本が箪笥に聖夜待つ/大島民郎
綿入に行方不明の本やあーい/高澤良一
本漁ればいつも青春肩さむし/古沢太穂
屑本をめくるは四月馬鹿の風/平畑静塔
山家集の破本かしこき西行忌/河西河柳
花と本買ひしばかりや師走市/中村苑子
花は葉に少し傷んで本戻り/片山由美子
年金の本など読んで目借り時/高澤良一
床の間に積み置く本も年の内/高澤良一
花冷の本屋に本の無かりけり/江良/修
店頭の本に目利きの要る秋ぞ/高澤良一
花南瓜農夫に読まれ本白し/秋元不死男
戻り梅雨箱より本の出でざりき/小島健
手にとる本手にとらぬ本秋隣/高澤良一
本買つて帰るときめき鴎外忌/柳/欣子
本買ふと言ひし妻葱買ひ戻る/国枝隆生
数え日の後引く飴に本を読む/高澤良一
本よりも親しき冬の綿ぼこり/川崎展宏
新涼やはらりと取れし本の帯/長谷川櫂
俳句例:181句目~
煤の日の片づけ本の拾ひ読み/高澤良一
春の暮死んでから読む本探す/藤田湘子
読む本に闇彦いくつ仏法僧/加藤知世子
春塵やふくさかけたる謡本/藤田春梢女
春灯下さげすみつゝも読める本/森田峠
ががんぼの泳いでゐたり本の部屋/中拓夫
くらがりに本の増えゆく旱かな/奥坂まや
蚊の死んで本のあはひに哀れ也/正岡子規
この頃の毛深くなりし秋の本/佐々木六戈
行春の本の表紙になりもして/後藤比奈夫
読みかけの本のほとりに三尺寝/高澤良一
たんぽゝの絮飛んで来し本の上/藤松遊子
ひもときし本の重みや目借時/矢作由紀恵
読みきれぬ本をかかへて掘炬燵/高橋光江
本をまづどうにかせねば煤払/鈴木しげを
紙の蟲彼奴等は本を選ばざる/佐々木六戈
星月夜本をまたいで座にもどる/和田悟朗
紙は知らずや一冊欠けし謡曲本/岩井未知
よみさしの小本ふせたる炬燵哉/永井荷風
わが生れ本の神田や保己一忌/池上不二子