俳句例:201句目~
三月の日記びつしり生きること/中山純子
書かぬ日の日記の上にフリージヤ/神蔵器
三年は生きると信じ日記買ふ/吉村ひさ志
シクラメン少女の日記鍵かかり/岩崎健一
日記書く蚊帳の一と隅吊り残し/田中延幸
吹き降りの海鳴りの町日記買ふ/中まり子
書店訪ふこと久しけれ日記出づ/古上邦雪
アネモネに綴る日記に灯を低く/遠藤梧逸
日記買ふ五十路の未来信じ度く/山田弘子
わが日記月光のほか触れさせず/青野誠子
日記買ふ夜天を焦がす熔鉱炉/秋元不死男
ふと羨し日記買ひ去る少年よ/松本たかし
手探りに日記しるすや蚊帳の中/正岡子規
日記買うこの世の多き未練あり/宮崎光子
立ち向ふものは己や日記買ふ/野中たかし
立読みの女が日記買ひにけり/長谷川和子
句日記に寒の一句をとどめけり/山本蓬郎
朝顔に朝書く癖の日記かな/長谷川かな女
勉めよと日記を買ひて与へけり/高浜虚子
来る年の夢書き入れて日記果つ/高橋悦男
俳句例:221句目~
緑愁の日記は白いままつづく/高橋三樹雄
初場所の端から荒れと日記閉づ/山本松枝
日記買ふ子に伝ふべき何もなし/西村和子
日記積む店や銀座の昼短か/長谷川かな女
ひとり子へ遺さむものに古日記/沢藤紫星
日記買ふ少年の日は母と買ひし/岩崎健一
ねぎの種蒔くと記すや農日記/吉田千鶴子
花野なる日記の余白のごときもの/橋本薫
日記買ふ町の銀座の明るさに/柴田白葉女
日記買ふ自分と語ること好きで/山田弘子
落葉の香病床日記生きて読む/古賀まり子
日記買ふ貨車連結の音の書肆/大岳水一路
日記買ふ銭入れにつく鈴鳴りぬ/宮武寒々
ふところの花屋日記や夕時雨/小原菁々子
表紙絵の馬にひかれて日記買ふ/青山ふじ
見えぬ明日余白を重ね日記果つ/茂木義夫
松過ぎて教師に戻る夜の日記/星野麦丘人
許すは易し憎むも寧し日記果つ/西村和子
すでにして己れあざむく日記買ふ/岡本眸
買ふ人のあるらしき十年日記/後藤比奈夫
俳句例:241句目~
贈らむと選びし日記われも買ふ/斎藤道子
枠はみだす少年の日記大暑なる/田中貞雄
旅に病んで芭蕉忌と書く日記哉/正岡子規
冬こもり日記に夢をかきつくる/正岡子規
兵士達どやと入り来て日記買ふ/遠藤梧逸
迷ひゐて人の手触れし日記買ふ/斎藤節子
戻り梅雨またも日記の日がとんで/角光雄
日記買ひ薔薇挿し彼の日憶ひをり/及川貞
恋畢る二月の日記はたと閉ぢ/稲垣きくの
すぎし刻声あげて来る古日記/金久美智子
何時までの余生と思ひ日記買ふ/杉森干柿
闘病のかくてまた果つ日記かな/荒田蔦雨
日記一行「唐辛子日に簇れり」/中島斌雄
雁の濡るる声音や日記閉づ/阿部みどり女
雑踏の渦くぐり抜け日記買ふ/佐藤美恵子
帰る雁けふの日記にこゑこぼす/清水里美
雨あしの加はる日記始めかな/三田きえ子
雨の日の神田に暮れて日記買ふ/角川春樹
古書持たずされど曝書や子の日記/及川貞
今年わが虹を見ざりし日記了ふ/福永耕二
俳句例:261句目~
日記買ふ頃となりけり彼女いかに/森田峠
星空を仰ぎ日記を買ふことに/加藤あけみ
いくばくもなき宮仕へ日記買ふ/村中聖火
食餌書き薬餌を書きて日記果つ/後藤夜半
あさがほと平仮名に書く夏日記/今泉貞鳳
巷の坂に帆を遠くおく日記買ふ/斉藤夏風
旅日記ここに果てたる大南風/下村ひろし
日記買ふ夢のつづきがまだありて/小西明彦
秘めごとのひとつやふたつ古日記/山田弘子
秘めるものなくて鍵ある日記買ふ/辻三枝子
稲咲くやおのが日記に励まされ/日向野文代
日記買ふ未知の月日にあるごとく/中村秀好
春の灯を低くし日記にうそを書く/菖蒲あや
春休ひそかにつくる日記かな/久保田万太郎
あがなひし日記に仮にさしはさみ/後藤夜半
あるときはハムレツト型日記果つ/石原清美
時雨忌や書架より抜きて曽良日記/山田弘子
更級日記の道や此の世も朧なる/町田しげき
くり返しきかぬこの世や日記買ふ/山本輝明
こころにも風吹く日あり日記買ふ/保坂伸秋
俳句例:281句目~
この年は病むこと少し日記果つ/乙津/喜美
しめぢ食ふ一行のみのわが日記/石田あき子
ちぎられし頁あちこち日記果つ/加藤三七子
ちゝはゝに遺せし梅雨の日記あり/下田実花
よき客によき酔ひ狗日の日記書く/原田孵子
アンネの日記読み継ぎ夏を色白に/中原鈴代
ゲーテの忌梅苑日記尚つづく/阿部みどり女
一事追ひ追うて日記ぞ果てにける/川口重美
三代の紙の更科日記かな/景山筍吉「熱燗」
肌寒の日記や恋を知りゐし子よ/国政十方城
五年日記気持大きく買ひにけり/仲島/四郎
今日きりの日記の頁に悔いもなし/頴原退蔵
偽りの世に気をとり直し日記買ふ/今泉貞鳳
一人の日記今日鷺草のこと記す/北原志満子
茶が咲いて旅の手引の曾良日記/菅野イチ子
茶の花や今日の日記もたゞ一行/米沢吾亦紅
菊さしてふるき日記にしたしみぬ/中尾白雨
十六夜の雨の日記をつけにけり/五所平之助
十年を生きるつもりの日記買ふ/大森三保子
梅雨の夜の日記のすこし長くなる/山田弘子