俳句例:101句目~
この椅子の三日の涼に生き延びし/林火
椅子四つ空いて居るなり蜆汁/柏木/博
天上の椅子降りてくる雪の朝/あざ蓉子
椅子固しながき八月はじまりぬ/本村蠻
天皇の日の晴天の椅子に在り/本橋如峰
椅子席を足して茶粥の盆施行/三島和子
椎の月鼎座の椅子を向けなほす/瀧春一
そぞろ寒懺悔の椅子の油いろ/木村公子
楸邨を待ちつづく椅子緑蔭に/熊谷愛子
水中花病室の椅子足らざる日/朝倉和江
水鳥や椅子にある人みな睡り/依光陽子
洋人や椅子に舁かれて夏の山/正岡子規
涼風やよき隔りの椅子二脚/志方ヒ口枝
深秋といへば書斎に父の椅子/角川春樹
漂流記読む椅子暮れぬ月見草/福田蓼汀
灰となる椅子の残像異動期過ぐ/穴井太
父の日や椅子にゆるびし膝頭/寺田/耕
またもとの椅子にもどりて草苺/下田稔
父の椅子少しはなれて夏の月/前田秀子
狩猟小屋銃窓に向き椅子二つ/笹原紀子
俳句例:121句目~
寝入る息しづかに椅子に洗髪/下村槐太
猫柳あそびごころの白き椅子/渡部純子
理髪椅子くるりと廻り冬うらら/井上雪
理髪椅子神父をのせて敬老日/朝倉和江
白き椅子ひとつは倒れ桜桃忌/畑中博孝
白椅子に胃の検査待つ漱石忌/伍賀稚子
石の原緋の一脚の椅子もなし/大井恒行
秋冷や座り馴れたる駅の椅子/松尾踏青
秋夕焼一徹ゆらぐ現場椅子/米沢吾亦紅
秋晴やランチの上の椅子一つ/野村泊月
秋深し背中合せの駅の椅子/永見はる女
幻燈会林間の学舎椅子を貸す/山口誓子
バス停の椅子に梅干す檜原村/荒川優子
節分の小鬼坐れる患者椅子/山田ゆう子
バロックの椅子より寧し春の芝/岡本伸
パイプ椅子鉄の灰皿棕梠の花/木下夕爾
納涼映画小学校の椅子出され/池田秀水
庭椅子の白が寒さを呼ぶ頃に/山田弘子
フレームに机椅子あり農学部/大橋純子
素朴なる司祭の椅子に山の蟻/小西藤満
俳句例:141句目~
緑蔭に椅子あり小樽運河あり/鈴木鷹夫
縁側に椅子ありて雷かすかなり/原田喬
待春の肱付き椅子の深さかな/高澤良一
恋猫の昼は寝ている椅子の上/大木正子
ミシン椅子秋夜の妻の臀剰り/草間時彦
老鴬や湖畔に白き卓と椅子/岩渕けゑ子
花の昼いつもの椅子に老二人/中村衣江
花の雨看取りの椅子を窓に寄す/高山檀
花冷えの医院の椅子に漫画本/八幡桂子
亡き夫の椅子の木目や春灯/小野はつゑ
外来の椅子に病雁一羽をり/田川飛旅子
花冷えや聖堂固き椅子軋み/冨田みのる
花楓新婚のふたり椅子に揺れ/山口誓子
若竹や髪刈らしむる庭の椅子/正岡子規
人もなし木陰の椅子の散松葉/正岡子規
葉桜や湖のしめりの陶の椅子/伊藤京子
手袋を置く満席の椅子ひとつ/池田潤治
蔦紅らむ野外音楽堂椅子一目/宮津昭彦
藪の中北窓が開き相逢ふ椅子/中村苑子
誰のため椅子出してある夏柳/長谷川櫂
俳句例:161句目~
人日や温もり残る椅子に掛く/徳丸峻二
賭けごとの椅子は腰高夜の桜/星野紗一
足なへの椅子に座りて霊迎へ/川村千英
農婦来て濡らす跪坐椅子初嵐/斎藤節子
隠微なる秋暑匂へり懺悔椅子/中尾杏子
青饅や波郷ゆかりの隅の椅子/角川春樹
革椅子に汗冷えて見る火消壷/松村蒼石
風涼し池のほとりの丸太椅子/清水悦子
風邪癒ゆる上り框が理髪椅子/石川桂郎
傍らに逢ふ人の椅子ビアホール/中林勉
鬱の日の椅子数多ある美術館/田中亜美
兄に逢ふ降誕祭の浅き椅子/蓬田紀枝子
入学処女微笑む四人掛けの椅子/楠節子
鰓ほしき夕暮の椅子折りたたむ/橋間石
六月の画廊に赤き椅子一つ/池田琴線女
鰯雲父のくぼみの椅子遺る/高橋真佐子
冬の蜂浮きて安らう猫の椅子/上原勝子
鳥渡る陶の椅子にて記すこと/柚木紀子
鳰の着水光るよ椅子へ出勤す/香西照雄
黙祷の後しはぶきと椅子の音/鈴木鷹夫
俳句例:181句目~
日脚伸ぶ亡夫の椅子に甥が居て/岡本眸
冬帽子脱ぎて無念の椅子叩く/浅井惇介
映画会病者ら寒く椅子余す/肥田埜勝美
春暁の山にもつとも近き椅子/福田蓼汀
春深き月光触るる椅子にあり/中島斌雄
春陰の椅子ゆくりなく美術館/後藤夜半
曼珠沙華身は柔椅子に加速せる/渋谷道
木曽川の音の中なり籐の椅子/長谷川櫂
木枯や黙りこけたる椅子ひとつ/妹尾健
前任者そのままの椅子送り梅雨/執木龍
松過や個展の椅子に深坐り/八木林之助
林間学校椅子の傾斜に石噛ませ/寺松健
梅雨寒や椅子に正座の一人旅/岡本春水
梟をゴブラン織の椅子に聞く/水口楠子
森に降る雪を憶ひつ革の椅子/長谷川櫂
君ら寮へ春天を載せ椅子運び/友岡子郷
噴水の影ある白き椅子ひとつ/木下夕爾
椅子ごとに置く聖歌集金木犀/宮脇白夜
夏痩や奏でんとして椅子による/角田竹冷
長老に椅子ゆずりゐる落葉焚/太木昌一郎