死にを使用した俳句

俳句例:101句目~

大事がる金死にたり枯しのぶ/正岡子規

大薩?界綿虫の死にどころ/加倉井秋を

天の川死につゝ渡る役者かな/攝津幸彦

天蚕蛾机叩いて死にたくなる/宮坂静生

死に神のかの指遺い縷紅草/増田まさみ

夫の死に関りはなし葦の枯/殿村莵絲子

夫一人死にき花火の淡黄色/殿村莵絲子

死に神の遠出してゐる春障子/尾崎隆則

死に神は美男なるべし荻の声/池田澄子

死に近き人を思えば牡丹の芽/岩田由美

死に遅れたる父は父どち遊び/中村苑子

死に遅れたる蟷螂を蔑めり/上田五千石

死に顔まで責任もてぬ青芒/岸本マチ子

死神が時を渡つて来て死にぬ/永田耕衣

母と今死にたしと思ふ髪洗ふ/坂巻純子

寒の雲大き先生の死に遭ひぬ/内藤吐天

寒北斗死にはじめたる後頭部/栗林千津

母の死にはじまる秋の夜道なり/松澤昭

寒鮒の死にてぞ臭く匂ひけり/永田耕衣

寝に落つるきはの死に似て朧闇/内海守

俳句例:121句目~

寸前に雪ふる誰も彼も死に/永田耕一郎

尊厳といふ死に際や鬱金咲く/佐野鬼人

毒のんで死に鶏頭となりて立つ/徳弘純

小鳥死に枯野よく透く籠のこる/飴山實

少しだけ死にたくなりぬ露の玉/齋藤玄

気軽に死に背嚢を重く遺せし/片山桃史

水仙花死に急ぐなと母の声/古賀まり子

父はやく死にしあと母風の盆/古澤太穂

父死にて浮世の海を一人かな/松瀬青々

犬死にか野垂れ死将曼珠沙華/大関靖博

猟鳥の死に切りし眼の葡萄色/右城暮石

玉虫はおのが光の中に死にき/加藤秋邨

生き方も死に方もまた霧の中/東智恵子

幼子の死に雲ふかし落葉降る/飯田蛇笏

広島の夜陰死にたる松立てり/西東三鬼

生き死にの話に及び土筆和え/増田斗志

庭鳥が翔りゆく神の死にたる日/徳弘純

白猫に乗りて死にゆく梅の花/攝津幸彦

砂蒸しの秋は死にたる形かな/平井照敏

禁欲の死に神はじけ鳳仙花/増田まさみ

俳句例:141句目~

秋蜂の五番札所に死にに来し/名和未知

一兎死に孤兎霜月の耳垂るる/川口重美

秋蝉の死にそこねたる形かな/小菅防風

恋ひ狂ひ飢ゑ死にし石秋の虹/野澤節子

悴める手に死に給ふ髪を梳く/都筑智子

我作る菜に死にてあり冬の蜂/杉田久女

竜の髯温和しかりし犬死にき/井上美子

戦死者の妻も死にけり冬干潟/吉田汀史

不慮の死に人垣ゆるむ寒の内/安東次男

総彦は死にき巷に降る木の葉/石塚友二

習作の牡丹傑作となり死にき/山口青邨

腸が泣きどころ釈迦死に給ふ/堀口星眠

花菜漬噛み死に頃といふ齢/池上貴誉子

草蜉蝣死に抗いて灯にすがる/水谷田鶴

人の死につまづくごとし萩芒/古舘曹人

菊白し死にゆく人に血を送る/相馬遷子

人の死にわづかに隣る虹の下/小林康治

人の死に人が集まる夜の辛夷/中嶋秀子

葛の花くらく死にたく死にがたく/白泉

斎場御獄蝶蜂蝉の死にどころ/山田春生

俳句例:161句目~

旅仕度また死に支度山ざくら/木村敏男

蕗の薹死に近づくはほろ苦き/高澤晶子

蝉時雨少しづつ蝉死に替はり/花尻万博

人は死に人に残りし桔梗かな/沼田巴字

赤潮に口張つて鯔死にゐたり/茨木和生

走馬燈人に死に頃などはなし/長峰竹芳

人暑うして死神が死ににけり/永田耕衣

今死にし冬蜂の骸掌にかろき/内藤吐天

今死にし母をゆすりて春の地震/岸田稚

仰ぎ見る宙青かりき蝉の死に/柴田奈美

身に沁みて死にき遺るは謗らるゝ/楸邨

透谷の死に方はうれん草ゆでる/小澤實

野や枯色母枯色に死にゆけり/小寺正三

鈴虫を飼ひて死にゆくことも見る/秀雄

閉ぢし翅しづかにひらき蝶死にき/篠原

障子貼る障子の家に死にたくて/大越晶

倖か死に果てたるも年守るも/石田波郷

傘の下に父生き代り死に代り/中村苑子

雨一日金が浮いて死にさうに/高澤良一

兎死に夜となり牡丹雪が降る/川口重美

俳句例:181句目~

兜虫やすやすと死に遂せしよ/行方克巳

全身で蛇死にゆくや尼寺冷え/和田悟朗

雪崩あと兎真白く死にゐたり/田原玉乃

霜柱壊ゆるごとくに死に給ふ/小林康治

春浅し死にゆく人を笑はせて/一條友子

風と云ふ風が死にゐる大蓮田/高澤良一

冬の蝶水面明りに死にゆける/火村卓造

風の秋人の死に逢ひ生に合ひ/井上哲王

暁闇は死に抱き夕闇殺し抱き/折笠美秋

鱶の死に白一団の海女よぎる/友岡子郷

鳴き急ぎ死に急ぐなよ初蝉よ/中村苑子

月の下死に近づきて歩きけり/星野立子

月光は美し吾は死に侍りぬ/橋本多佳子

月明の岩に凭れて死にはじむ/出口善子

村は新緑戸籍に死にし兵帰る/橋本夢道

半分は死に体にゐて日向ぼこ/松山和子

友の死につどへる樵や閑古鳥/飯田蛇笏

枇杷食べて雀の死にし話する/細見綾子

楽園を死に場所として深山蝶/細見綾子

死にしふりして蟹あはれ土用浪/原石鼎