俳句例:101句目~
永き日や時計の音は年とらず/今泉貞鳳
二月尽男女異なる時計見て/斉藤四四生
時計師に微塵の秋日身のまはり/桂信子
時計巻く音の庫裡より菊日和/田中英子
優曇華や時報に遅れ鳴る時計/松江素人
時計に近づく花の種なる睡りかな/林桂
時計うれし夜長の永久を刻む音/原石鼎
時計二つ動く新婚の木の芽和/川崎展宏
冬岳に向き一つ家の時計鳴る/村山古郷
残酷に四月の時計廻り出す/土見敬志郎
日脚伸ぶ病人の手のうで時計/橋本鶏二
冬隣灯らぬ部屋の時計鳴る/田中千鶴子
正午なり時計も我も冬蜘蛛も/藤田湘子
時計修理すや雪光のこの炬燵/羽部洞然
春の雪いよよ古りゆく掛時計/今泉貞鳳
公園のからくり時計クロッカス/曷川克
春夕べぽろんと時計鳴り終る/宮坂静生
いそがしく時計の動く師走哉/正岡子規
剪定夫駅に時計を見に来たり/土屋秀穂
夕千鳥拾ひし時計生きてをり/奈良文夫
俳句例:121句目~
臍は冥い時計を静め哄笑うかな/安達昇
春宵の時計のねぢを固く巻く/藤木清子
腕に時計部屋にも時計冬に入る/皆吉司
緑蔭や人の時計をのぞき去る/高浜虚子
紅葉忌遅れがちなる掛時計/海野さくゑ
枯野来て障子の中の時計聞く/櫻井土音
時計二つ音を合はせる夜寒哉/中川宋淵
大試験父の時計を腕に締む/足立のり子
大雪やむかし時計は柱にあり/大高弘達
春暁のからくり時計鳴り忘れ/永滝繁男
天国の時計鳴りゐるきんぽうげ/堀内薫
時計の無い家に太湖の光の針/伊丹公子
春深し花をつけたる草時計/五十嵐播水
去年今年振子時計の大きかり/成川崖花
松過ぎの少し時計を進めけり/田中太朗
春一番からくり時計踊りだす/長谷英夫
こち~と留守の時計や竹の秋/野村泊月
去年今年餅のしめりの時計音/桜井博道
この昼の声なき群衆の時計/鈴木六林男
嫁が君出番深夜の時計鳴る/神保奈美子
俳句例:141句目~
暮れ遅き町の広場の時計鳴る/高木晴子
安らけき時計の振子なづな粥/高橋繁喜
室花にからくり時計唄ひだす/山田弘子
たまさかの電車が時計蜜柑山/世古諏訪
秋霖の奥に振り子の無い時計/丸山嵐人
晩涼の竹藪深く時計鳴る/阿部みどり女
時計鳴る秋の古江の中二階/大峯あきら
寒き夜の畳におきし時計かな/徳川無声
時刻む飼屋の時計蚕のねむり/富安風生
ねぢ巻けば春の近づく掛時計/小島紅雅
古ひなや時計打ち出す真の闇/石橋秀野
花ざくろ北の古町時計鳴る/柴田白葉女
花槐ゲーテの家の時計鳴る/岩淵喜代子
古ぼけし枕時計や去年今年/大場白水郎
茸めし時計とともに柱古り/片山由美子
落丁のごとし暮春の時計鳴る/八田木枯
落葉月夜目ざまし時計不意に鳴る/綾子
はつ冬の遠のみかどの水時計/野崎声山
蔦茂り壁の時計の恐ろしや/池内友次郎
秋澄むや飛鳥を刻む水時計/伊藤とう子
俳句例:161句目~
ぼろ市の急に鳴り出す掛時計/津田昭子
梟時計鳴くこと忘れ星月夜/室生幸太郎
蛇穴を出づるとの報時計見る/鈴木鷹夫
蜥蜴走り去り時計の針となる/有馬朗人
時計見に店を覗く子日脚伸ぶ/毛塚静枝
行く年の時計拭きゐる駐在所/作田幸子
ゆく春の夜のどこかで時計鳴る/山頭火
秋ふかき時計きざめり草の家/室生犀星
春陰に坐して百千の時計守/石田あき子
短夜の時計狂ひてゐるらしく/高木晴子
部屋毎に時計を置いて冬籠/山口波津女
春陰の時計かかはりなく刻む/山口草堂
金の時計は東京経由枯野行き/山内康典
時計鳴り塵労の街夜も暑き/小松崎爽青
強く確か除夜押してゆく時計音/有働亨
父の日や古りし遺愛の銀時計/近藤一鴻
刻み合ふ時計二つや夜業守る/原田青児
長き夜の母を温めて掛時計/服部ますみ
闇凍てて枕時計の夜光浮く/瀬野美和子
ダリの絵の時計脈打つ炎天下/橋本榮治
俳句例:181句目~
時計見て人待つふりの冬の暮/谷口桂子
雪達磨妓楼の時計刻打てり/磯貝碧蹄館
喪の家の時計が刻を違へ打つ/村上文彦
雲海や金の時計が腕にあり/九鬼あきゑ
震災日廃棄と決めし時計鳴る/徳永茂代
青くるみ亡父の時計が抽斗に/寺田京子
青五月明治の時計よく似合ふ/巌谷小波
青葡萄山から村の時計読む/大峯あきら
額ほどの渚に下りて時計巻く/佐藤鬼房
港の鏡時計内蔵の雲すぎゆく/伊丹公子
ボロ市の時計振子を外されて/荒井英子
駅時計の真下にゐたり十二月/北野平八
駅時計光る今年も帰燕の日/山田みづえ
時計持つ木の白昼の芽木の山/和知喜八
春雨の街に時計の正しさよ/波多野爽波
一つしか打たぬ時計や狸汁/小笠原和男
鳩吹く風日付の判る時計買ふ/高澤良一
一日の時計はづせし涼しさよ/中澤茂子
金亀子時計にとまり時計九時/田中冬二
昼つげて寂しき時計花うつぎ/中島登美子